ミニモーブ、再来!!
『スナイパーの受難後、なんだかんだでその日は終わり、翌日の話~』
「で、えっと、この粉を大学に届ければいいのよね?」
スナイパー。仕事着、カーキ色のトレンチコート。同色のキャスケットの上にサングラス。下の方で二つ結びのピンク髪。
「そのくらいできるよな?」
「できるわよ! どんだけ子ども扱いしてるの!?」
「終わったらまっすぐ仕事行けよ?」
「わかってる……って、あたしの仕事は本当は暗殺なのよ!? 情報屋じゃないんだから!」
「暗殺する用事なんて今んとこもこれからもねぇよ!」
「じゃあなんで雇ったぁ!?」
「ん? クビにしてやろうか? 今すぐ?」
「行ってきます!!」
バタンッ!!
「ドアには優しく!!」
「あ、裏道行くなら銃の整備も一緒に頼んじゃおー」
『おや、まさかの一瞬で寄り道決定です……』
「うるさいわね。こういうのはバレなきゃいいのよバレなきゃ……」
『悪の道へ足を踏みはず……って、あ、元から悪い人でした』
「それもそれでなんか違う気がするんだけど!?」
『あ、ほら、ちゃんと前見なさい!』
「え、あ、ピっ!?」
「うおっ!?」
……ぱりんっ
ぱんっ
もくもくもく……
「けほけほけほ! なにこれ!?」
『いや、分かりませんけど! これ、《エンジェマッシュ》の粉舞ってません!?』
「ギャッ! っ……」
粉を吸わないように息を止めたスナイパー。
懐から小銃を取り出して、薄翠の弾をセットして撃つ。
ぱんぱんっ
『風の魔法弾ですね。小さな竜巻が発生して粉を吹き飛ばしました! ……言い換えますと、給料三か月分を跡形もなく吹っ飛ばしました!!』
「言わないでよ! 考えないようにしてたのに!」
『てか、誰にぶつかったんです? 相手の方は無事ですか?』
「あ、忘れてた!!」
その方に目を向けると……
「……」
『……』
「……え」
『服しかないのですが……』
「消えた!?」
『いや、よく見てください! あれは……!!』
ドタドタドタ!!
「魔王!! ヤバい!!」ドガッ!!
「盗賊並にドアに優しくないってなぁどういうことだぁ!?」
「ちょ、モーブが縮んだぁ!!」
「ハぁ!?」
「これみてぇっ!!」
シャツがワンピースのようになっているいつかのミニモーブ。気を失っているようだ。
「え、またっ!?」
「なんか、ビンがぱりんってなって、ぱんっ、からのぼっふわぁってなって!!」
「いや、わかんねぇし!」
「……んぅ」ぴくり
「モーブ? とりあえず服!! 俺の子供の時の服とかあったかな!?」
『あ、ちなみに魔王城執務室は魔王私室の隣の隣にあります。移動がめんどいとか何とかでこんなに近くなっております。魔王の性格のせいですね』
「一言以上余計だな?」
『あ、すんませーん』
「……」
『魔王なんだから魔法使えないんです? 服魔法で出すとか?』
「あー、俺そういうの無理系。ってことで探してくらぁ!」
「あ、あたしここで待ってるから!」
「お前はここに至るまでの経緯をまとめとけ!」
「うへー」
「なんか文句でも? あ?」
「ありません!」
「そこの白紙使っていいからな!」
『まあ、なんだかんだで、こうなりました』
「まおうさま、おひさしぶりです?」
「おお、うん、ま、そうだな……?」
「……ぅ?」こてん
「かわいっ!」
『服は少しだぼついていますが、まあ、合ってるかな、という具合です。いいとこ坊ちゃん風です。……魔王にもこんな時代があったんですね……』
「うるせぇな。俺だって最初からこんなんじゃねぇよ……」
「まおうさま?」
「なんでもねぇ。それにしても、あのキノコとやらはただの麻薬じゃねぇのか?」
「知らない! これはホントに知らないわよ!?」
「そこは疑ってねぇけどよ……偽物つかまされたとかじゃねぇ、よな?」
「えー!? だったら裏切りよ!? 殺してやらないと!!」
「まだ決まったわけじゃねぇんだから物騒なこと言うな! 小さい子の前で!!」
「ぅ?」こてん
「わっ、ごめん!!」
「??」
「でも、粉もないし、手がかりもないんじゃあ、どうしようもないな……」
「うっ、ほんとごめん……」
「お前、これ手に入れたとこにもっと探りいれてこい。効果も聞いて来い。モーブがこのままはいろいろまずい」
「そうよね、なんかきな臭いし……」
「あいつのおいしいケーキが食えなくなるなんて耐えられない!!」
「そっち!? そっちなの!?」
「本日のおやつだけが今の俺の楽しみなんだよ! わりぃかよ!!」
「誰も悪いなんて言ってないでしょ! わかったわよ! とりあえず行ってくる!!」
「おう! さくっと行って来い!」
「簡単に言うなぁ!!」ばんっ
「……」
「まおうさま、あのピンクのひとはだれですか?」
「ん? あれは……気にしなくていいぞ」
「え、ですが……」
「気にしなくていいぞ」きっぱり
「……はい、わかりました」
「だいぶビィにしつけられてるんだな……」ぼそっ
「なんですか?」
「いや、なんでもねぇ。……うー、これからどうするか……」
「あの」
「なんだ?」
「オジサマはいらっしゃらないのですか?」
「ビィか? ……今、仕事が立て込んでるからな、今日中に帰ってくるかわかんねぇぞ?」
「もし、よろしければ、オジサマをまたせてはもら、もらえ……もらえないでしょうか……?」
「いいけど……ビィ来るまでここで待ってるか?」
「えと、あの……」
「ああ、ビィの部屋で待ちたいのか?」
「はいっ」
「でもなー、あいつ部屋にかえんねぇかもしれないぞ?」
「……」しょぼん
「……わかった。じゃあ、案内してやるから、ちょっと待ってろ」
「はいっ!」
『待つこと何時間。ミニモーブはずっと待ち続けました。それはもう、主人を待つ子犬のように……』
「イヌじゃない、オオカミだ!」
『そうして夜……』スルー
「ふぅ……」がちゃっ
疲れた様子で入ってくるビィ。
「なんでしょう? 魔王様、急に仕事の量を減らしたりして……私は何かミスでもしましたか……?」
「すぅすぅ……」
「? ……っ!?」
ミニモーブがこの前ずたずたにしたぬいぐるみを抱いてビィのベッドで眠っている。
「も、モーブ!?」
「っんぅ……すぅ……」
「……」
『起こすべきか、寝ているのだから起こさないべきか……』
「……ナレーター、説明願えますか?」
『かくかくしかじか』
「なるほど……」
『どうします?』
「起こしませんよ……起こせないじゃないですか……待っててくれていたなんて……」
『朝~』
「んっ、うぅ~」
『おはようございます、ミニモーブ』
「ミニっていう、くぁ~、なぁ~」
『くぁーいっ! じゃなくて、モーブ、下をご覧くださ~い』
「へ? あっ!!」
ベッドに寄り掛かるようにして、方胡坐で眠っているビィ。
「あ、え、お、オジサマ!?」
「んっ、んー?」
うすら目を開けるビィ。
「あ、おはようございます……」
「お、おはようございます?」
「……」ぽけ~
「お、オジサマ、寝ぼけてます?」
「寝ぼけてませんよ……ええ、寝ぼけていませんとも……」こくっこくっ
「オジサマ?」
「……おや? モーブ、まだ小さいんですね?」にこっ
「オジサマ!?」
「……すみません、シャワー浴びてきます……」ふらぁ
『昨日もお疲れでしたからね……』
「だ、だいじょぶでしょうか……?」
『そうしてちゃんと目覚めたビィさん』
「先ほどは失礼しました」
「え、あ、はい……」
「それで、まあ、事情は聞いています。今度はいつ戻るかもわからないそうですね」
「そうなんですか?」
「そのように聞いています」
「そうですか……」
「戻りたいですか?」
「わかりません」
「正直なのはいいことですね。……大人モーブは全く素直ではありませんから……」ぼそっ
「なんですか?」
「いえ、なんでもありません」
「そうですか?」
「そうです。とりあえず、朝食もらいに行きましょうか」
「はいっ! おなかぺこぺこです!」
「……夜までずっと待っていてくれたんですって?」
「はい」
「魔王様に帰ってこないといわれませんでした?」
「それでも、まちたかったんです!!」きらきら
「……っ」
「オジサマ!? ねつですか!? つかれがたまってるんですか!? 顔が赤いですよ!?」
「気のせいです」
「でもっ!」
「気にしないでください」
「は、はい……」
『魔王城は王族用とは別に食堂が開放されていますので、そこで食事する人が多いですが、部屋が近い人は、自分の部屋に持って帰って食べる人もいます。ビィさんは部屋食派です』
「何にしましょうか?」
「ホットケーキたべたいです!」
「……それはおやつです」
「ぶぅ」
「……デザートに何か甘いものを頼みましょうか?」
「はいっ」
『モーブの着替えは、ビィさんの創造魔法によって作られました。でもいいとこの坊ちゃん……』
「うるさいですよ。帰ってもらえませんか?」
『んじゃ、ちょっと失礼しましょうかね……』ぶつっ
「……」
「……ぅ?」こてん
「……とりあえず、あなたはこの辺で待っていていただけますか?」
「はい、わかりました! ……早く戻ってきてくださいね?」
「できるだけ早くに……」
……
「ひまだ……」
モーブ廊下に出てみる。
「ん? あれ? ミニモーブ?」
「あ、えと、害悪さん?」
「ひっどいなぁーなにそれ?」
騎C登場。ミニモーブと目線を合わせるようにしゃがむ。
「何? ビィさんの入れ知恵?」
「オジサマをわるくいうのはやめてください!」
「ん、くぁいいなー」よしよし
「や、やめてください!!」
「それより、昨日からモーブが小さくなったって聞いて、探したのに見つからないんだもんなぁー。会いたかったのに。どこにいたの?」
「オジサマのへやです」
「ビィさんの? え、ずっと?」
「はい」
「……あ、そうか」
片手を握って、もう片方ののばした掌に叩き付ける。
ぽん
「ビィさん、ホモじゃなくて、しょたこ……げふぅっ!!」
ビィが跳びあがりながら登場。そのまま騎Cに跳び蹴りを入れる。
『もちろん、その後、一回転しながらの着地!! わぉ! カッコイー!! 騎Cは五メートル以上もぶっ飛ばされましたとさ』
「帰ったんじゃないんですかナレーター?」
『絶対零度の微笑! きゃっ、こわーい!!』
「え、あ、お、オジサマぁ!?」
「それよりも、シー!! 何変なこと言ってんですか!!」
「び、ビィさん、いい蹴りだけど、首はやめようね? 俺じゃなかったら死んでるよ?」
「そのつもりだったんですけど、案外しぶといですね」
「そりゃだてに隊長やってませんよぉ!」
「……!!」あわあわ
「モーブ」
「は、ハイなんですか!?」
「あれは害虫ですから近づかないようにと言いましたでしょう?」目線合わせ
「あ、ひっでぇー」
「え、あ、えと、あの……」
「とりあえず、」
『今日はこの辺できりまーす』
「へ?」
『お疲れ様でしたー!!』
「え、あの、こんなところでですか!?」
『仕方ないです。疲れました……』
「なんてご都合主義な……」
『てへっ☆』
「なにがてへっ☆だよぉ、いい加減にしないと殺っちゃうよぉ―?」
『うわっ! 何か命の危険を感じました! 私は逃げます! さよーなら―!!』
ぶちっ
つーつーつー……
つ・づ・く!!




