スナイパーの受難
『引き続き勇者出張中です。風の国で園児ときゃっきゃ笑笑やってるそうです。盗賊さんは行方不明です』
魔王城執務室
「ねぇ、魔王」ピンクツインテ
「……」
「魔王ってば」
「……」
「マオニャン?」
「……」
魔王見向きもせずに肘鉄。
「ゲフッ!!」
「あ、わり。つい……」
「つい、でやるなぁ!!」
「あ? 俺が悪いのか? なぁ、スナイパー?」
「……あたしが悪いです」
「よろしい(ビィ風)」
「それはやってんの?」
「知るか」
「あ、そ……」
「で、何の用だよ……」
「その厄介事が来た……みたいな顔やめてくれない?」
「……」
「真顔もやめてほしいかなー?」
「注文多い」
「こわいんだもの!」
「用件」
「分かってるわよ! ……裏の話、なんか変な薬が出回ってるみたいよ?」
「変な薬?」
「麻薬みたいなのらしいわ。よくわからないんだけど、必要があるなら調べるわよ? ビィさんじゃ、裏の情報網までは持ってないでしょ?」
スナイパー、これでも暗殺者。裏稼業の人間。
「そうだな、頼めるか?」
「もちろん。その代り……」
「給料上げろってか?」
スナイパー無言でキラキラ光線。手を組んで、上目使い。瞬き多め。
「無理だな」
「エェ!?」
「お前、今まで仕事してなかっただろうが! 首切られないようにしてやってただけでもありがたく思え! そしてその恩に報いやがれ!!」
「えー!!」
「この話は以上だ」
「ぶーぶー!!」
「クビにすんぞ? あぁん?」
「それは困る! 住み込みで三食ちゃんとした食事つきの、しかも時々宮廷パティシエのおやつ付なんて好物件なんてそうそうないもの!!」
「だったらきりきり働けただ飯ぐらい!!」
「今から仕事するんでしょ!! ってか、あたしは暗殺者であって情報屋じゃないわよ!!」
「調べるっつったのはてめぇだろうが! いいからさっさと仕事しやがれ!! “火炎魔法・炎蛇”!!」
巨大な炎の蛇が出現。
「わっ!! 狭い部屋で炎の魔法使うとかありえなーいっ!!」
スナイパー脱兎のごとく逃げ出す。
『ツインテがウサ耳のようで、まさに脱兎!!』
「黙れナレーター!!」
『さっさと仕事するべきでしたね。魔王様怒らせちゃって、あーあ、後が怖いですぅ』
「黙れって言ったの、聞こえなかった?」
『スナイパーは魔王様ほど怖くないので。あ、マオニャンはいろいろ禁句だと思いまーす』
「……」
スナイパー何処からか魔法銃を取り出す。
『あ、やっぱメンド……』
「“雷炎銃・モエビリ弾”!!」ばんっ
『羽妖精さんとどっこいどっこいのネーミングです!! いや、羽妖精の方がかわいげがあったような……』
「コロス」
『きゃっ、こわ~い』
「いい加減にくたばれナレーター!!」
『そんなこと言っちゃいけませ~ん。教育上いけませんよ。めっ!』
「なにが、めっ! よ!!」
『その後スナイパーは暴走し、ビィさんにこってり絞られましたとさ。その時に壊した城の修繕費はきっちりひかれたそうですよ?』
「!?」
『というわけで、もう、まとめてお送りしました~』
「もう終わりそうに言うなよ……」
『終わりませんよぉ~。……スナイパーの暴走から十日ほどでしょうか? またまた魔王城執務室~』
「すっごく雑にまとめられた気がするんだけど……」
「いつものことだろ?」
「え……」
「気にすんな☆」
「……」
『魔王、スナイパー相手だと、はっちゃけますよね……』
「気にすんな」真顔
『おぉ、こわ……』
「それで、報告。簡潔に」
「んー、流れてたのは《エンジェマッシュ》ってキノコの類らしいわ? 液体と粉末にしたのが主で、液体の方は威力低めで、依存性は低め? あ、でも、性能は高いみたい? 粉は逆? タバコみたいに吸うんだって? 粉の方は入手したけど、調べてみたほうが早いかも? とりあえず使用者は天国に上る心地? 快楽にのまれる? とかって噂」
小瓶に入った白っぽい、虹色にきらめく粉少量。
「ふーん? 疑問形が多いが、まあ、いいだろう」
「やった! あ、必要経費!」
「……いくらだ?」
「えっと、粉がだいたい給料三か月分?」
「どこの婚約指輪だコノヤロー!」
「あたしにキレられても!」
「うるせー!」
「また徹夜なの!?」
「違わい! 通常運転!」
「……あ、あと、情報買うのにもいくらか使ったから、全部で給料五か月分?」
「スルーかよ! いいけどな! ……お前の安月給じゃたかが知れてるけどな?」
「一般的な給料! ってか、最近給料下げたでしょ!? 元に戻してよ!」
「誰が戻すか! 仕事してないやつに払う金はありません!」
「今仕事の報告してるとこじゃない!」
「これは今までの分の取り返しだろうが!」
「な、なんですってぇ!?」
「大げさにショックを受けるな!!」
「くっ! 昨日かわいいゴスロリ見つけて、これで買えると思ったのに!!」
「仕事中に何見つけてやがる!!」
「仕方ないじゃない! 目に入ったんだもの!!」
「はいこれで給料このままけって―」
「な、なんですってぇ!?」
「二回目だぞ! つまんねえよ!!」
「チッ!」
「上司に舌打ちたぁ、いい度胸だな、あ?」
「魔力を集めるなぁ! 室温が上がる!」
『説明しましょう! 魔力集めると、その人の属性効果が魔力量によって、魔法を使っていないのに現れるというそんな感じの効果があります!!』
「いらん説明すんな!!」
「灼熱地獄に叩き落してやろうか? ん?」
「や、マオニャンこわーい……」ぶりっ子
「……」
『あ、無言で何か魔力練ってますね。あ、魔力を練るというのは魔法を使う前段階的な? ……厨二乙ー!!』
「一言余計!!」
『無詠唱の時はこれしっかりやるといいそうですよ?』
「つまり?」
「こういうことか?」
魔王を中心に、炎の円が五個ほど。
「ま、魔王……」
「とりあえず、一回死んでこーい!!」
「ぎゃー!!」
『もっと女の子らし……』
「そんな場合じゃないでしょー!!」
「待ちやがれ! 逃げんじゃねぇ!!」
「誰がまつかぁ!! 殺されるー!!」
『あーあ、だから魔王様怒らせると後が怖いって言ったでしょう?』
「うるさいナレーター!!」
『マオニャンは禁句だってのも言ったのに……』
「だーまーれぇー!!」
『スナちゃんなんて怖くないわよん。盗賊談』
「あいつ今いないし!!」
『スパちゃんなんてロリッロリだからよしよししちゃえばいーんだからぁん♪』
「あいつ帰ってきたらコロス」
『あなたにできるでしょうかねぇ? ロリッロリのスパちゃん?』
「ナレーターもぶっころぉす!!」
『ま、頑張ってください。以上終了。それじゃあ皆様』
「まった今度」
「あ、ちょっ!」
「ま、その時にスナイパーいるかわかんねぇけど……」
『ばいばーい!!』
「あたし次までにどうなってるのー!?」ぶつっ
……ちゃんと必要経費は払われた。スナイパーのポケットマネーで賄われる危険は去った……。




