ハロウィン後夜祭(とは名ばかりの前夜祭裏話)
『実は前夜祭の裏でこんなお話が……』
『盗賊が勇者たちを魔王城に帰したとき、この人はその場に取り残されておりました……』
「なんであたしだけぇ!?」
『そのまま盗賊と騎Cは暴走していきました……』
「勝手にやってろあたしを巻き込むなぁ!!」ひそひそ
「“死霊術”」遠くで盗賊が
屍兵ぞろぞろ
「うぎゃぁ!! なにこれ!? 気持ち悪!!」
スナイパー、一目散に逃げ出す。
「もうなんでよ! いつもこんな! 最悪ぅぅぅううう!!」
『気が付けば、誰もいない墓地で迷子』
「え? ここ何処?」
『……墓地でボッチ……w』
「くだらんこと言ってんなナレーター!!」
『さーせんw』
「まったく」
「ひっく、ぐずっ、しくしくしく……」
「ん?」
『女の子ですかね? 泣き声が聞こえます。あ、あそこに人影はっけーん』
「……これ絶対話しかけちゃダメなやつじゃない。ホラーにありがちの……」
『でしょうね? どうします?』
「もちろんスルーで」
「無視するの? お姉ちゃん……」
いつの間にか近づいていた人影が、顔を伏せたまま、スナイパーの服の裾をつかむ。
「……」
『あ、これ、まずいパター……』
「言わなくていいし!」
「無視しないでよぉ。なんでみんなあたしを無視するのぉ……?」
顔をあげると、焼けただれて、腐った顔が!
「ヒっ!」
『逃げましょうスナイパー!』
「言われなくてもぉ!!」
小銃を取り出して、一発くらわせて投げ飛ばして走り出す。
「痛い! 痛いよ痛いよ痛いよ痛いよ痛いよ!!」
「こわ!!」
「何するのおねぇぢゃぁぁん……!!」
「ダッシュよナレーター!!」
『あったりまえですったら!!』
スナイパーは女の子から逃げ切った!
「はぁはぁ……」
『疲れましたね……」
「ナレーター、疲れたとかあるの……?」
『ありませんねっ♪』
「……」イラァ
『おっと前方に人影が!』
「またぁ!?」
「何してんだ? スナイパー?」
「勇者!?」
なんか霧が出てきて、影しか見えないが、声が勇者。
「なんで勇者がここにいるの? ありえない」
『これもまたありがちな……』
「てことで逃げ」
「逃げるなんて酷くないか? せめて理由を……」
「顔がぐちゃぐちゃの女の子がいたんで、それの仲間だと思いますから、逃げる。以上」
「へぇ、それは……」
スナイパーの手が掴まれる。
『はっ! これは王道の!?』
「こんな顔の女の子かなぁ?」
顔が焼けただれ腐った勇者もどき。
『キタ――――!!』
「ナレーターうるさい!!」バンバンっ!!
「痛い! 痛いじゃないかスナイパー!!」
「う、うるさいわよ! ばけものぉ!!」パァンッ
「私を化け物というのか!?」
「少なくとも勇者じゃないし!! あたしに何発も打たれて平気なほど強くないし!! スライムにさえやられる勇者レベル三だし!! いい加減放しなさいよ!!」パンパンっ
「ヤメテイタイヤメテヤメテヤメテ……」
「ほんといいかげんに……!!」
ヒュッ
ドスドスドスっ
「え?」
「こっち!」
「わぁ!? ちょ、ちょっと!?」
『謎の人スリーに手を引かれ、連れていかれるスナイパー』
「ちょっと! 放してよ!!」
手を振り払う。
「……助けてあげたのに、それはないんじゃない?」
金髪の天然パーマ。琥珀の右目。左目は包帯で隠されている。薄汚れた服。ポメラニアンみたいな少年。
「あんたもあいつらのお仲間なんじゃないの?」
『この数十分でずいぶんたくましくなりましたね、スナイパー……お化けの仲間かもしれない人に普通に質問してますよ……しかもふてぶてしい態度です!』
「黙れナレーター」
『きゃっこわーい』
「……」
「別にそうかもね? 信じる信じないはどっちでもいいけど、道わかんないんでしょ? だったらついてきたら?」
「……」
「まあ、このまま亡霊にまかれて死にたいんなら好きにしたらいいけど?」
「……それは困るわね。いいわ、ついていくから案内してちょうだい」
「それが人にものを頼む態度?」
「うっ、……お、お願いします」
「いいよ。ついておいで」
「くそぅ……」
「何か言った?」
「別にぃ~?」
「……ま、いいか」
てくてくてくてく
『しばらく歩くこと数分~』
「……」
「……」
「……ねぇ」
「何?」
「なんであんたこんなところにいたの? お化けじゃないんだったらおかしいでしょ」
「んー、だったら君たちもなんであんなとこいたの?」
「肝試しだって」
「……え、子供?」
「知らないわよ! あたしが企画したんじゃないし! いきなり連れて来られてそんなこと言われて!!」
「……それは災難だったね」
「そうよ!!」
「……」
「……」
『てくてくてくと、十数分』
「ぎゃぁぁあ!!」
地面から突き出た骸骨の手がスナイパーの足をつかむ。
「女の子でしょう? もっとかわいらしい悲鳴とか……」
「そんな暇ないぃぃぃいいい!!」
「あっそ」
「助けないの!?」ばんばんばんっ
「いや、だって、必要ある?」
「ないけど!」ぼきっ
『てくてくてく』
「どぅわぁぁあああ!?」
「だから、女の子らしい……」
「だから、そんな暇……!!」
怨念集合体、的な? ドロドロの顔がたくさんの塊。
「きしょいぃぃぃぃいいいいい!!」
『てててててっ!!』
「ほらお姉さん、もっと速く走んないと追いつかれるよ?」
「あんたはなんでそんな冷静なのよぉおおおお!!」
「いや、慣れてるし」
「なんだとおぉぉおおおお!?」
「口じゃなくて足動かせば?」
「なんなのぉぉおおおお!?」
『てく、てく、て……』
「ぜぇぜぇ……」
「ついたよ」
いわゆるゴシック的な門。
「あ、ホントだー! ありがと!!」
「じゃあね。もう迷子にならないでよね?」少し手前で止まり
「え、あんたは行かないの?」
「まだ用事がね」
「そう? じゃあ、ホントありがと! あ、これあげる!!」
ピンクの渦巻きロリポップ
「……どこから出したの?」
「知らなーい☆ ありがとねっ! って、うわぁ!?」
後ろからゾンビ的な奴らぞろぞろ
「早く逃げたほうがいいわよ! またねぇー!!」ダッシュ
「え、また……?」
「そうまた! また会ったら、その時は明るいとこでおしゃべりでもしようねー!!」手を振りながら豆粒大になっていく
「また……か……」
『こうして無事に魔王城に帰り着くことができたスナイパーでした。もちろん、先に戻っていた盗賊を、思いっきり罵倒したスナイパーでしたとさ』
『あ、ちなんじゃいますとね? 墓場では夜でも、魔王城にかえるとちょうど日暮れでした。墓地は永遠の夜だそうですよ?』
「ねぇ、なんであのお姉ちゃん帰しちゃったの?」焼けただれ女の子
「もっと遊びたかったのになぁ」焼けただれ勇者もどき
「……その姿やめなよ。結構グロいよ?」
「それもそうだねぇ」ポンっ
「でもこの服気にいったのに……」ぽむんっ
「服も一緒にしか変身できないってだめだめじゃん」
「あたしは変身うまいでしょう?」へへん
「ああ、あの顔、んで、それ見た驚きよう、もう最っ高♪」
「でしょう♪」
「えぇー? 私は?」
「お前はもっと鍛えろ」
「ちぃっ」
「だからさー、なんでお姉ちゃん逃がしちゃったの?」
「もっともっといたずらしようと思ってネタ考えてたのに」
「最後の最後であの門閉じて、後ろからゾンビで、え、なんで? っていう追い詰められた絶望の顔見たかったのに!!」
「ダメだよ。だって、お菓子もらっちゃったもん。僕らハロウィンの幽霊は、約束があるんだから」
「えぇーずるい!」
「ずるいずるい!」
「トリックオアトリート。お菓子くれたなら、悪戯しちゃだめだよね」
ロリポップ取り出し。
「それに、またねって言った。……うん、またね。ハロウィンになったらまた遊ぼうね、お姉さん」
ぺろっ
「おいし♪」




