在りし日の……
『モーブとビィさんが出会ったばかりの頃……』
「オジサマ!」
「オジサマはやめていただけませんか? 私はまだそこまで老いてはいませんよ」
「おい……?」
「歳とってないということです」
「ちちよりもながいきなのでしょう!?」
「……それは否定しませんが」
「でしたらやっぱりオジサマです!」
「……もう好きにしてください」
「はいっ!」
「それで? 何故私の部屋にいるのですか? 鍵をかけておいたはずなのですが?」
「カンタンにあきましたよ?」
「……簡単に、無理やりにあけたんですね?」
「……わかんないです! いきおいよくあけたらあきました!」
「……」
「オジサマ! あそびましょう!?」
「お断りします」
「!?」
「これから仕事ですので」
「いやです! あそびましょうよー!!」
「だめです」
「ゼッタイですか!?」
「はい。我がまま言わないでください」
「やですー!! あそびたいですー!!」
「……出ていきませんか?」
「はいっ!」
「では、“凍結魔法・氷人形”」
「!?」
そのままの形で凍りつくモーブ。
首根っこつかんでモーブの父の下へ。
「これが私の部屋に侵入していたので、お返しします」
「お、あ、ああ、すまないね?」
「別に」
翌日。
「オジサマ!」
「……またですか?」
「あそびましょ!!」
「お断りです。仕事が……」
「あそびましょうよ!!」
足にしがみつく。
「……離れてください」
「いやです! あそんでくれるまではなれませんから!」
「最後の忠告です。離れてください」
「やです!!」
「……」ぶん
「わぉん!?」
ベットに蹴り投げられる。
「おじさ……!?」
「“氷結魔法・水晶柱”」
「っ!!」
水晶のような氷柱に閉じ込められるモーブ。
そしてまた
「これ、お返しします」
「すまない……」
「別に」
さらに翌日。
「グゥルるるっ!!」
「……」
「はっ!? オジサマ!?」
大事な手作り特大ウサギぬいぐるみ(編みぐるみ)が無残な姿に……
「モーブ……?」
「こ、これはですね!? いつもあそんでくれないから、すこしいたずたしてやろうとか、すこしのつもりがむちゅうになってあそんでいたとかそういうわけじゃないんですよ!?」
「……ほぉ?」
「あ!? え、いや、あの、え……」
「モーブ」にこぉ
ビィの背後に吹雪が吹き荒れる。
「あわわ……」さぁ……
「いい加減に反省なさい!! “氷華”!!」
氷の花がビィの頭上に。
「オジサマ! ごめんなさい!!」
「“氷針”」
花が散って、花弁が鋭く針状に。その数、数百?
「もうしませんからぁあああああああ!!」
「……言いましたね?」
ぱりんっ、さらさらさら……
「え?」
「次やったら、この針があなたの体中に突き刺さることを覚悟しなさい」きぃんっ
「は、はいぃ!!」
「ハリネズミにならないように注意なさいね? うっかり狼の本能が……なんて言っても通じませんからね?」
「わ、わかりましたぁ!!」
「よろしい」
「……」ぐずっ
「……今日は少し余裕があるんですよ。ケーキでも食べますか?」多少の罪悪感
「!!」ぱぁ!
「現金なものですね……」
「なにケーキですか!?」
「クルミ入りのケーキです」
「やった!!」
「好みのようでよかったです。お茶は?」
「牛乳と砂糖たっぷりで!!」
「わかりました。少し待っていてください。……くれぐれも、」
「おにんぎょうにはさわりません!!」
「よろしい」
かちゃかちゃかちゃ
「おいしいですか?」
「おいしいです!! てづくりですか? やさしいかんじがします!!」
「……そうですか」ぽぅ
「はぅ!? おかおがあかいですよ!? かぜでもひきましたか!?」
「大丈夫です。気にしないでください」
「でも!」
「気にしないでください」きっぱり
「は、はい……」
「クリームついてますよ」
「あ!」
「そっちじゃなくてこっちです」ひょい
「アリガトです!」
「……あまいですね」ぺろっ
「あまいはきらいですか?」
「あまり好きではないかもしれませんね」
「だったら、こんどあまくないおかし、おかえししにきますね!」
「……楽しみにしてます」ひそっ
『なんか、最後聞かないと、……なんて鬼畜! 子供に向かって魔法使いまくり!』
「うるさいですよナレーター」
『よくめげませんでしたよね、モーブ』
「ええ。さすがに怒って針出したときは、もう泣いて近づかないだろうと思いましたけど……」
『健気! かわいっ!!』
「……あの後、お返しとやらはくれませんでしたよ。その前に帰ってしまいました」
『それから、モーブが帰った後……』
「……」
静かになった部屋に寂しさ。
「……はぁ」
修復したツギハギウサギを見て溜息。
「まったく、ホント、次やったら承知しないんですから……」しんみり
『とか言いつつ許してしまうのがビィさんクオリティーって?』
「……」
『魔王城自室にある自分の部屋の修復した人形見て、またそのころを懐かしむんですね?』
「……ぁ」ぼそっ
『え?』
「“氷華”“氷針”“凍える針鼠”!!」
『わっ! ちょ、待ってくださいよ!! すみませんでしたってば!! キャー!!』
ぶつっっっ
つーつーつー




