表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔国の日常  作者: 盗賊
3/130

勇者のターン……!

『勇者の朝は早め。それは、秘密の特訓があるからだ……』

 勇者起床。半袖の動きやすいシャツとズボンに着替える。

『勇者は支度をすると、基礎体力向上のために走り込みをする。その最中に近所のおばさんに話しかけられた』

「あら、勇者さん、今日も早いのねぇ」

「おはようございます。ええ、決戦が近いので」

「あら、そうなの? 頑張ってねぇ」

「ありがとうございます。では失礼します」

『走り込みを終えた勇者は郊外にある自分の家に戻り、裏の庭で素振りを開始する。そう、ラケットを持って……?』

「って、なんでバドのラケットもってんだぁぁぁ!!」

 家の表の方から出てきた盗賊。ポニテールに白のアオザイ姿。……男姿。

「盗賊!? ふ、不法侵入だぞ!?」

「不法侵入がなんじゃい!! こちとら盗賊スキルに“忍び込み”ってのがあるんじゃい!!」

「おまっ……それ犯罪!!」

「黙らっしゃい!! 今は呼んでも出てこないから、庭にいるのはわかってたからこっちに回っただけじゃいっ!! んで、なんで剣の稽古じゃなくてバドミントンの素振りなんだぁぁ!!」

「もうすぐ町内大会なんだよ!!」

「なんのだよ!!」

「地元で入ってるバドミントン部だよ!!」

「勇者業に専念しろや一レベぇぇぇぇ!!」

『勇者、現在レベル一(笑)』

「ナレーター黙れぇ!!」

『勇者はバド力が三上がった』

「よっしゃ!」

「それで喜んでんじゃねぇ!! レベル上げろや!!」

「簡単にあがんねぇから困ってるんだろー」

「諦めモードに入ってんじゃなーい!!」

『そうして数日後、勇者は無事町内大会で勝利を収めたのであった』


「ゆーしゃー? いてるー?」

『ある日、勇者の家に盗賊が遊びに来た』

「ゆーしゃー? いないのー?」

『そして盗賊はスキル“索敵”を使った。ちなみにこのスキル、何種類かあるのだが、今使ったのは魔法使いスキル。かなりの範囲が調べられるが、MPもかなりかかるので使うのに注意が必要のはずだったが、盗賊はケロッとしている』

「あるぇー? いないなぁー」

『なぜ盗賊が魔法使いスキルを持っているのかは謎』

「またバド部にいんのか? あいつ……仕方ない、一人で行くか」

『盗賊は猛ダッシュで走り去った』

『その頃勇者は……』

「おばさーん、ここに置いとくよ?」

「あら、ありがとうね」

『人助けをしていた』

「勇者! 頼みがあるんだ!!」

「どうしたんですかおじさん?」

「昨日家内とけんかしちまってなぁ……一緒に謝りに行ってくれないか?」

「……なんで私が」

「家内は勇者のファンで! 一緒にいてくれたら家内も機嫌を和らげてくれてんじゃねぇかなぁと……」

「要するにご機嫌取りですか? 嫌ですよ……」

「そこを何とかぁ!!」

「……はぁ、仕方ありませんね……」

「ほんとか!? 助かった!! 恩に着るよ!!」

「まったくです……」

『訂正。パシられていた……』

「誰がパシリだっての!!」

「勇者、いつも悪いねえ」

「いいんですよ、これも人助け。勇者として当然です」

「本当にありがとうねぇ」

「勇者ー!! こっちも頼むー!!」

「はーい!!」

『今日は町内、イベント大会の後片づけ。勇者はそれを手伝っていた。……ちなみにここは人間界、トアル国である』

「勇者、これ、頼んだものと違うぞ?」

 コーヒーを買いに行かせた大工の棟梁が言う。

「えぇ!?」

「俺が頼んだのは微糖のコーヒーだ。これ美糖じゃないか!!」

「え、えぇ!? 美糖!? なんですかそれ!?」

「ほらここに」

「本当だ! でも意味わかんないですよ!!」

「なんか、肌がきれいになるとかそういうのじゃないのか……?」

「……なんかわけわかんないもの買ってきてしまってすみません」

「本当だ。気を付けてくれ」

「……」

『思わぬ失敗に落ち込む勇者。頼んだ人はそれ以上何も言わずに立ち去っていく』

「あーあ、私勇者向いてないのかな……レベルだって一だし……」

『自信を喪失してしまった勇者』

「そこにぼーっとされると邪魔だ!」

「すみません」

『散々な勇者に、近づく人影ひとつ』

「えーっと、勇者かの?」

「はい、なんでしょう?」

「ひとつ、頼みごとをしたいのじゃが……」

『魔法使いらしい服装の老人が頼む』

「ええ、いいですよ」

「店番を頼まれてくれぬかの?」

「店番、ですか? でも、きっと私にできることなんてありませんよ?」

「いいんじゃいいんじゃ。どうせ客なんて一人も来ない来ない!」

『かっかっかっ、と明るく笑う老人に、それでいいのかっ!! と心の中で突っ込む勇者であった』

「そこの薬屋でな。どうせ道楽で始めたもんじゃし、閑古鳥が常に鳴いておってなぁ……ああ、ま、あの子は定期的に来てくれるがのぅ。変人じゃ」

「はぁ……」

「ま、普通の客はも来るときは来るんじゃが、大体が突発的に何かあったやつらでの、怪我とかだったらラベル見て適当に処方してくれればそれでいい」

「え、それ……」

「ああ、市販薬があるからそれ渡してやっとくれぃ」

「はぁ……」

「じゃ、そういうことで、頼んだぞ」

「あの、何処へか聞いても?」

「薬の材料を取りにの。さっき言った変人にけったいな仕事押しつけられてのー。まったく、爺使いが荒いぞい」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃ! まだまだ現役じゃぞい!!」

『さっきと言ってることが矛盾しているような……?』

「しっ! ナレーター静かに!」

「ん? なんか言ったかの?」

「いえいえ、何でも! それより、お気をつけて!!」

「はいはい。では後よろしく頼むの!!」

『こうして薬屋の店番を頼まれた勇者でありました……』

「……仕事ないって言ってなかったかぁ!?」

 けが人わらわら。

『そういえば、今日は片付けの日。怪我が多いのも必然か……』

「勇者! 痛い! もっと優しくしてくれよ!!」

「黙れ! けがなどするお前が悪い!!」

「それけが人に対する態度!?」

「あー。痛いの痛いのとんでけー(棒読み」

「心! 心こめて!?」

『そうして後片付けが一段落するころ……』

「あー、疲れたー」

『勇者も一段落ついていました』

「休憩休憩」

 近くにあった長椅子に倒れ込む。

 ドアが開く音。

「誰だよ……」

 起き上がる気が全くしない勇者。

「おじさーん? いないのー?」

「……盗賊!?」

「え、勇者!?」

「なんでお前がここに?」

「なんで? はこっちのセリフ。家に行ってもいないし、探したんだよ?」

『実はさっさと諦めてここに向かいましたよね?』

「なれーさんシャラップ」

「そうなのか」

「んで、勇者はなんで?」

「店番頼まれた」

「やっぱまたパシられてたのか……」

「パシリ違う!」

「って、ことはおじさんいないのか……もうすぐできる的なこと言ってたのに」

「薬の注文か?」

「んー? ま、そんなとこ」

「……けったいな仕事?」

「わお、おじさんっぽい言い方!」

「なるほど、理解した」

『つまり、おじさんは盗賊のために材料を取りに行って今いないんですね』

「あー、そういうこと。こっちも理解。……ユシャちゃん、すっごい疲れた顔してるけど大丈夫?」

「仕事……」

「あー、よしよし。おじさんに押し付けられたの?」

「そういうわけじゃないんだが……」

「よし。このお優しい俺様が、勇者様の肩をもんでやろうじゃないか」

「おー、頼む」

 ほのぼの

「お客さん、こってますねー」

「最近疲れがたまって……」

「よいしょっと」

「あー、そこー」

「おっさん化してませんか、勇者?」

「気のせいだ」

『その時……』

 ガラガラガラッ!! キャー!!!!

「何事!?」

「勇者!?」

 二人は急いで外に出る。

 たくさんの木材が倒れて、その上あたりに小さな蝙蝠型の魔物が数匹。

「敵襲か!!」

 勇者は剣を、盗賊はナイフを構えた。

『グダグダっとしていますが、一応この二人、勇者とその仲間です。レベル一でも、普通の人と比べたら余裕で強いです。名のある格闘家よりも強いです。一応』

「一応多いな!」

『事実でしょう? ついでに、ザコ中のザコなら余裕で倒せます。一応』

「もういい! 盗賊は町民の避難を!」

「了解!! みなさん、こっちへ!!」

 勇者は魔物に向かって走り出す。

『魔物が空からの攻撃!! けれどそこを勇者は、おぉっと!? これは!?』

 ぶんっ

『バドミントンです! バドミントンのラケットのように剣を自在に操っています!! まさかのここでバド力が発揮されたぁぁぁ!!』

「敵、殲滅完了」

『きゃー、ゆーしゃさまかっこいー』

「黙、れ……!?」

『材木の下に、何か……?』

「これ……っ!?」

血溜まりを発見。

勇者、急ぎ木材を退かす。

腕にけがをした小さな少女。

「大丈夫か!?」

「う、うぅん……」

「おいっ!?」

『みたところ、致命傷はありませんが、腕の傷は早くなんとかしないと……』

「なんとか!?」

『血が流れすぎで、失血死するかもしれません!!』

「そんな! どうしたら⁉」

『とりあえず止血を……』

「こっち来なさい勇者!!」

「盗賊!!」

「あそこの薬借りるわよ!!」

「なっ……お前……」

「あたし、薬師やってたこともあるから、大丈夫よ!!」

「なんでもありか、謎の人!!」

『とにかくいまは治療が第一です!!』

『その後、盗賊の活躍により少女は無事意識を取り戻しました』

「娘がお世話になりました……」

少女の母親が勇者にお辞儀する。

「いえ、私はなにも……お礼なら盗賊に」

「あたしこそ、なにもしてませんよ。町の皆を魔物から助けたのも勇者ですし彼女を見つけたのも勇者です」

「いや、最後、私は何もできなかった……」

「……」

後ろ向きな勇者に、盗賊は呆れた。

「ゆーしゃさま」

「どうしたの?」

少女の目線に合わせ、しゃがむ勇者。

「たすけてくれて、ありがとうごさいます」

「いや、本当に私は……」

「ありがとう」

ぎゅっ

「おっ!?」

「うんうん。その子の方がわかってるぅ」

「何をだ?」

「勇者が勇者ってことをさ」

「わからん」

「わかんなくていーよ」

『こうして、いわゆるファンタジーのお話のように幕を下ろし……』

「おぉ、銀髪ちゃんじゃないかのぉ?」

「んげ!? おじさん!?」

「まったく、面倒なこと押し付けおってからに」

「そっちこそ! 今までどこいたんだ!! こっちは大変で……」

「お前さんが欲しがっておった薬草を見つけてきたんじゃぞ!? なのにその反応……わしは悲しいぞ!!」

「あ、ありがと⁉ でもね、今その話は……」

「なんじゃと!? せっかくとってきてやったというのに……!!」

「いるからね⁉ 意地悪して捨てたりしないでよ!?」

「わかっておるわい」

勇者、呆れつつも興味を引かれる。

「その薬草とは?」

「おお! 聞いて驚くが良いぞ!! これはな……」

「わーわー!! ストップ!!」

「何じゃ騒々しい」

「だめだよ! なに言おうとしてんのさ!! せっかくこの物語最初で最後かもされない、いい感じで終わろうとしてたのにさ!?」

「いい感じで終われなくなるのか……一体なに頼んだんだ?」

「それがのぅ……」

「ダメだったらぁぁ!!」

ヒソヒソ

「……は? 動物になる薬? それが、どうした?」

「なんでも、金髪のミントン好きとピンク頭のギャグキャラに、一泡吹かせてやりたいそうだ」

「ほぅ……?」

「おや。そういえば。金髪の方の特徴が勇者と似ているような……?」

「盗賊? どういうことか、教えてもらおう?」

「や、ややや、やだなぁ! 勇者のことじゃありませんよ!? そう、きっと他人の空似……!!」

「じゃ、それは誰だ? 可愛い仲間のためだ。私も協力してやろう」

「あわわわわわわわ」

「わかりやすくキョドってくれてありがとう。さて、そろそろ説明してもらおうか?」

「あ、あれー、勇者さん……笑顔が怖いよ〜? なんでそんな指バキバキ鳴らしてんの〜? ど、どこ触って……ぎゃぁぁぁあああ!!」

『こうして、この話は幕を閉じていくのでありました……』

いーやーーーー!!

『まさかの、盗賊自業自得エンドなんて、ね……。勇者の回でしたのにねぇ……』

「ちょ、ナレーター!! 幕閉めないで助けて!!」

「残念だな。ここは私の回だぞ? ここで活躍しないとな」

「いや、魔物退治で活躍したじゃん!! しかも盗賊いじめで活躍しないで!?」

「あんな数行……活躍に入らん。それに、盗賊いじめではなく、盗賊に躾だ」

「誰か助けてー!!」

『え、えー……まぁ、盗賊、ご愁傷様ということで……ここで本当に締めさせていただきます。それでは皆様また会う日まで、ごきげんよう!!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ