魔王城裏話・其の二 華がない
魔王城執務室
「この城華がねぇよな。この城ってか、話の中のこの城?」
『いきなりどうしました、魔王様?』
「いやさぁ、この城、男ばっかじゃねぇか?」
『そうですか?』
「だって、モーブもビィも騎Cも男だし。なんか、華がたりねぇ!!」
『いやぁ、スナイパーがいるじゃないですか。一応この城の住人ですよね?』
「あいつは論外ジャン」
『……えぇーと、勇者も時々来ますから……』
「あいつはなんかもう、男ジャン。立ち位置男ジャン?」
『……とうぞ……』
「論外もいいとこじゃん?」
『……勇者とスナイパーに謝りましょう? さすがに散々じゃないですか?』
「軽く盗賊抜かしたな?」
『仕方ありません。性別不明な人なんですから』
「……案外お前もヒデェよな」
『貴方に言われたくはありませんが』
「……」
『……』
「魔王様、書類お持ちしました」
「魔王様ぁ! 紅茶お持ちいたしましたぁ!!」
「おお、入れ。いや、ビィは入るな。書類ごと帰れ」
「それは無理です」がちゃっ
「いやぁぁあああ」
『また徹夜ですか?』
「うぅ……」
『お疲れ様です……』
「休憩でいいですから、後で頑張ってくださればいいですから……」
「ビィがやさしい……」
「それだけ頑張りすぎってことですよぉ!! もっとご自愛してください!!」
「……悪いな」
「まったくです」
「ナレーターもわかったら帰れよぉ!! 魔王様はお忙しいんだ! 邪魔するなぁ!!」
『そんなこと言われましても……』
「なんの話をしていたのです?」
『この話に華がないなぁと』
「華?」
「この城男ばっかだよなって」
『そういえば、いきなりどうしたんですか?』
「癒しがぁ……」
『なるほど。そういうことに興味なさそうでしたのに』
「実際問題興味ねぇけど! ねぇけど、俺だって男なんだよ! 目の保養!!」
『びっくりするほど徹夜明けなんですねぇ!? 魔王様が壊れてます!! こんなこと言う人だったとは驚きです!!』
「うるせぇ!!」
「華、つまり女性ですよね? 魔王様はあまりお会いにならないかもしれませんが、存在はしていますよ?」
「そりゃそうだろうけどな? ここ城だし? 侍女の一人や二人、いるんだろうけど? 会わなきゃ意味ねぇぇぇ!!」
「……」
「魔王様、おいたわしや!!」
「……誰か呼んできましょうか?」
「!?」
「いつも魔王様の部屋を掃除しているモブDでも?」
「見たい!!」
『というわけでモブDさんです』
「初めまして。モブDと申します」
「おおっ!!」
黒に近い椿の葉のような深緑髮、前髪はパッツン。明るい新緑の瞳。もちろんメイド服。色白、可愛い系。
「そこそこかわいいな」
「目の保養ですか?」
『ビィさん興味なさそうですものね』
「先輩、むしろ女嫌いという噂が……」
『ほぅほぅ?』
「そこ、うるさいですよ」
「ああ、魔王様にお会いできるなんて、死ぬほどうれしいですわぁ」
にっこり笑ったその姿、目がタレ目になって、小動物のような、守ってあげたくなる系の可愛さが出てくる。
「そうか? なんかわからんが嫌じゃないな。笑うと可愛さ倍増だし……」
「もう、ほんと、嬉しすぎて死にたくなりますぅ」
「……え? 今なんて?」
「嗚呼! 魔王様の前でなんてこと!? 申し訳ありません! なんでもないのですわぁ!!」
「え、あ、ああ、そう?」
「ええ! もちろんですともぉ!!」
「……一瞬騎Cと同じ雰囲気が……」
「俺も感じたんですけど……」
「ちょっとよくお話聞かせてもらいましょうか?」
「……掃除やってくれてるんだって? ありがとうな」
「いえ、そんなぁ!! お仕事ですから!! それに、魔王様のためですもの。たとえ毒が仕掛けてあろうと、剣が飛び出てこようときちんとお掃除して見せますわぁ!!」
「ん? 毒? 剣?」
「ええ。時々ありますの。枕の中に麻の葉(麻薬成分過多)が入っていたり、ソファーの中に毒針が、気づかれない程度に突き出していたり、あまり使わないドアのノブに、魔法をかけて、ひねると上から剣が落ちてきたり……」
「そうなのか!? 大変なんだな……ありがとう」
「いえ!! こんなこと、魔王様に比べたら大変などおこがましいのですわ!! それに、楽しいですし」
「楽しい?」
「ええ。こんなことでも魔王様のお役にたっているかと思うと、嬉しいのですわ。だから、毒でずきずきするのも、くらくらするのも、傷ついて、ひくひくするのも、びりびりするのも、気持ちいのですわ」ふふふっ
「……」
「魔王様のためでしたら、もっともっと、傷ついて痛い思いして、死ぬほどの激痛にも、私は感激するのですわぁ」ふわぁ
「……ヤバいな」
「ヤバいですね」
「ヤバすぎません!?」
『なんでこう、モブのキャラ濃いんですか? この城は』
「俺が知るか」
「私も詳しくは」
「侍女は俺ら知らないからな! 管轄外‼︎」
『さいですか。……しかも、魔王信奉者多すぎないです?』
「そりゃぁ、魔王様だかんな!!」
「ですよね!!」
『そこ二人―、気合わないでくださーい』
「はぁ、ともかく、魔王様に危害加えるつもりは全くありませんし、実際、使える侍女だと報告が来ていますので、やめさせるのはもったいないと思います。魔王様はどうですか?」
「あ、ああ。いつも体張って頑張ってくれてるみたいだしな。このままでいい」
「ありがとうございますぅ!! 魔王様にお褒めの言葉をいただいてしまいましたわぁぁああああああ‼︎」
『あ、今度はモーブの雰囲気が……でも、なんか、騎Cの雰囲気が消えない……』
「でもま、ほんとなんか、知らないうちに助かってるぜ。あんがとな」
「……っ!!」感激のあまり声が出ない
「あれだったな、騎Cと同じだけど真逆みたいな?」ひそひそ
『そうですね。こっちは受けで、あっちは完全攻めですものね』
「攻め……まあそうだろうけどな? ……盗賊、受け?」
『受けないでしょう。その前にぶち殺す!! って言いそうですよ?』
「そうだな。って、俺らは何の話をしてるんだ?」
『……さぁ?』
『と、いうわけで、特別出演、モブDさんでしたぁ!!』
「どうもでしたわ~」
『一緒に締めましょう? せーのっ』
「『さよなら~』ですわ~」
ちゃんちゃん




