魔王様とビィさんの魔法講座(勇者のステータスに変化が!?)
魔王城執務室。
ばんっ!
「魔王聞いてくれ!!」
「勇者、盗賊よりゃましだが、いつになく扉に優しくないな? どうした?」
「聞いてくれって!!」
「なんだよ? モーブ、茶」
「かしこまりました!!」
「書類片づけておきますね」
「助かる、ビィ。んで、勇者はこっち来い。休憩にするし。お前もケーキ食うだろ?」
「それはうれしい。……じゃなくてだな! 聞いてくれって!!」
「分かった分かった」
ティータイム。
「で、なんだ?」
「見てくれ!!」
勇者、レベル三。魔力、一……
「一ぃ!? 魔力ゼロの勇者が一ぃ!?」
「だろだろ!?」
「何があった!!」
「それがだな!!」
『聞いてくださいよ!! この人、夢の中で妖精さんにあったとかで!』
「そしたら、願いを叶えてやろう(しわ声)と言われてだなぁ!!」
『朝起きたら魔力一とかありえなくないですかぁ!?』
「寝る前までゼロだったのにぃ!!」
「よかったと言うべきか、キャラが薄くなったというべきか……」
「薄くなったのか!?」
「薄くなっただろう? 魔力ゼロの勇者が魔力もち、ってえ? みたいになるだろ?」
「そんなにか!?」
「……」
「そこで無言にならないでくれないか!?」
「あんま騒ぐなよ勇者ぁ! 魔王様徹夜明けなんだからなぁ!」
「す、すまない……」
「紅茶いれました。今日は栗のケーキです。庭の実がいい感じでしたのでぇ!」
「おお、うまそうだな。いつもサンキュな」
「……!!」
(魔王様に喜んでいただけて俺は、俺は、幸せ者すぎるぜぇぇえええええええ!!)
「……。よし。でも、一か。微妙だな。それで、なんで俺のとこに来たんだ?」
「一の魔力でなんかできないか!?」
「……それは盗賊にでも聞けよ」
「魔族の長だろ、お前!? 魔法とかに精通しているだろう!?」
「そりゃそうだけどな? ……一じゃ、あんまり……」
「そうか……」
「落ち込むのは早いかと」
「ビィ?」
「なんだ、何かあるのか!?」
「……クリームが口の端に……」
「お、ありがとう」
「子供かよ……」
「悪いか?」
「別に?」
「それで、何かあるなら教えてほしい!!」
「……こうも熱心に来られますと、教えたくなくなるのはなぜなのでしょうか?」
「頼む!!」
「ビィ、あんまりいじめるなよ? 盗賊が怖いぞ?」
「あいつはいつのまにか私のこと調べて報復しているらしいからな。……それもどうにかできる方法を知っているなら教えてくれないか?」
「さすがにそれは……」
「だよな。うむ、すまない」
「いえ」
「……」
「……」
「……お、教えて、くれない、か?」じぃ~
「……これが……、なんとなくわかりました」ふむふむ
「なんのことだ?」
「いえ、盗賊が、変なことを言ってまして……」
「変なこと?」
「……さて、魔法の話でしたか?」
「さりげなく話を逸らさないでくれないか?」
「知りたくないのですか?」
「うっ……」
「……」
「……お、お願いします」
「いいですよ。モブCがご迷惑おかけしたみたいですし」
「だったら最初からそう言ってくれないか!?」
「……」
「な、なんだ?」
「いえ、なんとなく」
「なんだ!?」
「……」ふーむ
「!?」魔王に助けを求める。
「えーと、ビィ? 盗賊に何ふきこまれたんだ?」
「いえ、あまりお気になさらず」
「するぞ! すごくするぞ!?」
「知らない方がよろしいことがこの世にはいろいろあるということです」
「なんなんだ!?」
「一の魔力でもできること」
「いきなり話を進めないでくれないか!?」
「聞きませんか? ではこれで失礼を……」
「聞く! 聞くから続けてくれ!!」
「だったら初めからおとなしく聞いていればよろしいのですよ」
「……ビィ、いつになく冷たくないか?」ひそひそ
「先輩、なにが……」
「やっぱ盗賊が悪いのか……」
「またあいつですかぁ!!」
「バッ! 声デカっ!!」
「うるさいですよ。ああ、でしたら魔王様もお教えになられては?」
「え?」
「モーブはあまりこういうことに向いていないでしょうが、魔王様はいい勉強にもなるのでは? 人にものを教える」
「えぇー」
「魔王、教えてくれるか!?」
「……わかった」
「助かる!」
『これでやっと魔法講座開始です。前振りが長い長い……』
「バッとわけますと、魔法には定型魔法と自由魔法があります」
「……国語の時間か? 詩の授業にそんなような……」
「止めますか?」
「止めないでください!」
「では……、定型魔法は書物や先達たちに教わる魔法です。私の使っている凍結魔法と氷結魔法はこれにはいります。家に伝わるものでした。まあ、この辺は今のあなたには必要なさそうなのでカットしますね」
「え、あ、はい……」
「そして自由魔法。魔王様はこちらが得意ですね」
「ああ。こういうのな」
魔王、手のひらに炎点し。
「魔王様は魔力保有量が半端じゃありませんので、無詠唱でもできる魔法が多いですね?」
「あ、ああ……」
「多いはずですよね?」
「も、もちろんだぜ?」
「……」
「……ごめんなさい、最近修行サボってます」
「後で先生に告げ口しておきますね」
「告げ口とか言っちゃうの!?」
「いいますよ。危機感を持っていただきたいので」
「……」しょぼーん
「無詠唱は魔力が高く、想像力が豊かな人でないとできません。詠唱はイメージの具現化を簡単にできるキーワードで、これで固定すると楽になります。詠唱自体は定型も自由も関係ありませんが、無詠唱の自由魔法を作れると、賢者とか何とか言われて敬われるようになりますよ」
「……そこまでのスペックは求めていないのだが……」
「そうですか。ちなみに自由魔法を使えるのは作った人自身ですね。教えてもらい、使うと、定型魔法になります。まあ、この辺もカットですね。……あなたにお勧めするのは、自由魔法の詠唱です。魔方陣でもいいですが、それは大掛かりなものになりますので、魔力一じゃ足りないと思われます」
「自由魔法、は、えっと?」
「自分で作る魔法です。創造魔法などがそうですかね。これは魔法自体を作るとか関係ないので」
ビィ、テーブルに魔方陣を描き、つぶやく。
「ん? んん!?」
魔方陣の中に書類。
「はっ! ビィ、そ、それ……」
「そういえば、この前書類をなくされましたよね? モーブのせいで。なので、新しく作ってみました」
「そ、そういうのはだな、ちゃんと正確な新しいものを……」
「正確ですよ。一度見た書類は一月は確実に覚えておりますので」
「……」さぁ……っ
「では、よろしくお願いしますね」どん
「……」しゅんっ
「このように、イメージがしっかりしていれば、何でも作り出すことが可能です。どういうものだか、決まった言葉でなくとも、言っていくとやりやすくなりますか」
「“火茨の捕縛術”って、あれな。適当にいったやつ。俺は炎系が得意だから、植物の力も借りて無理やりにでも炎系にしたらああなった。あそこは植物の力が強かったからな」
「なんで炎系に無理やり?」
「自分と一番相性のいい属性にすると魔力量は減ります」
「なるほど?」
「まあ、そんな具合で。あとは頑張ってくださいね」
「も、もうおしまいか!?」
「ああ、創造魔法はお勧めしません。質量や大きさによって魔力が大きく変わりますし、ものによっても変わります。一じゃ難しいと思いますよ」
「他には!?」
「属性は、そうですね、あなたには風が懐いている気がします。風系なら、何ができるでしょうか?」
「何故そこで疑問!?」
「専門外ですので。高位の魔法しか習いませんでしたので……」
「嫌味か、嫌味なのか!?」
「そんなつもりは……」
「じゃあ、なんだ!?(泣き」
「えぇっと、ああ、では風の刃を自己流にしてみては?」
「風の刃?」
「簡単に言いますと、鎌鼬のようなものでしょうか?」
「鎌鼬?」
「風も鋭くなります。研いで、切り刻む風魔法の初歩です。魔力五ぐらいが妥当ですが、それを手本に自分の魔法を完成させれば一でも何とかなる可能性大です」
「そ、そうか!!」
「勇者、俺は炎系で、専門外もいいとこすぎるが、要は気合いだ。気合いで何とかなるのが魔法だ。だから頑張れよ。俺練習相手にしてくれもいいからな!」
「だめですよ。今から仕事でしょう?」
「うっ」
「書類も増えましたし」
「うぅ……」
「あ、ありがとな、魔王。気持ちだけもらっておくよ……」
「勇者ー、ビィがいじめる」
「いじめではありませんよ。正当な仕事です」
「あーーーーーーー」
「徹夜明けは本当なんだな。壊れかけてる……」
「魔王様、おいたわしや!!」
「さあ、行きますよ」
「やーだー」
「子供みたいなこと言わないでください」
「いーやー」ずるずる
「……ドンマイ魔王……」
『後日談。勇者は翌日、魔力ゼロに元通り☆』
「何故だぁ!!」
『よぉく、妖精さんの言葉を思い出してください』
「……いつもお前は頑張っておるからのお。ご褒美としてお前の願いを一つ叶えてやろうな。……一日だけぇ!?」
『そうです。……これでオチましたかね?』
「こんなオチはいらーんっっっ!!」
『キャー勇者がこわーい!! ってな感じで、逃げます。アッデュー!!』
「待て逃げるなナレー……っ」ぶつっ




