モブCの暴走
「やぁっと俺の出番?」
『そのようですね。……ん? 暴走?』
「してもいーってことかな? んじゃ、ご期待どーりに……」
『何も期待してませんから! だから暴走やめてぇ‼︎』
魔王城、訓練棟。
「魔王城にこんなところがあったのか……」
『勇者? あなた、確か……』
「何も、言わないでくれないか?」
『魔王の執務室に向かっていたはずでは?』
「だから言うなと言ったのに‼︎」
勇者、現在迷子なう
「説明にまでバカにされてる⁉︎」
『そんな、被害妄想ですよ。……それにしても、勇者が迷子属性を持っているなんて……』
「誰が迷子属性だっ!」
『んじゃ、天然ですか?』
「違う! これはたまたま、道がわからなくなってだなぁ‼︎」
『勇者、早く認めて、楽になりましょうよ……』
「それなんか違うだろナレーター‼︎」
『とまぁ、こんな具合で、勇者に新たな属性追加です』
「おいっ!」
「あれぇ? 勇者? こんなとこでなにしてんのー?」
『さ、お待ちかね、ちゃんとした紹介ですよ、モブC!』
砂色の短髪に、赤銅色の瞳。黒地に赤の縫い取りの騎士服。長剣装備。
モブC:レベル⁇ 性別、男。職業、騎士隊長
「くぅー、これこれ! 二回もスルーされたから、もう諦めかけてたんだよなぁ〜」
『それはよかった』
「よかったら、騎Cさんとでも呼んでくれ」
「『……』」
「無言が痛いぜぇ〜」
『それよりも、レベル不明ですか? 謎な盗賊でもレベルは正確でしたよ?』
「それは、これから明かされる、的な〜?」
『見た目は好青年。でも、話すとわかる胡散臭さ。いつも笑顔。その裏には一体何が?』
「何にもないぜぇ? 疑わないでくれよぉ〜」
「……」
『勇者が無言で考え込んでおります‼︎』
「ひでぇよなぁ〜」
『まぁ、ともかくです。勇者、お茶の時間に間に合わなくなりますよ?』
「あ、あぁ、そうだったな。では、これで……」
「待ってくれよ勇者」
「なんだ?」
「一戦相手してもらえない? “勇者”と一回戦ってみたかったんだよなぁ〜」
「……私は弱いぞ? 何てたってレベル三だからなっ‼︎」
『はい開き直り入りまーすっ‼︎ もうここまで来たら開き直りですか、勇者?』
「いいし! もう知らねーし‼︎」
『キャラまで⁉︎』
「そんなん謙遜だろ? 楽しませてくれたら、お礼してあげるから」
「全く謙遜ではないのだが、それでいいならいいぞ?」
「そうこなくっちゃ♪」
『二人とも、剣を抜き、構えます』
『おおっと⁉︎ 先にしかけてきたのはモブC‼︎ 速いです‼︎ 様子見とかの間もありません‼︎』
『対する勇者! なんとかしのいでいます! それでも完全なる劣勢‼︎ 防戦一方とはまさにこのこと‼︎ 反撃なんて夢のまた夢‼︎』
「ナレーター黙れ‼︎」
「うーん、本当に謙遜でもなんでもないんだな?」
「最初に言っただろう‼︎」
「うーん、なんか期待はずれ。もう、いいや。つまんない」
モブCが勇者の剣を軽く弾き飛ばし、転ばす。
「いらないや。消えて?」殺気&ニコッ
『ちょっ⁉︎』
「くっ……」目瞑り
そのまま大振りに振り下ろし……
ぎぃぃんっっ
「俺の大事なユシャちゃんに、なにしてんの?」
盗賊が、大ぶりのナイフを逆手に持って、剣を受け止め。
「……」
モブC、さらに力を込める。
「そんな簡単に受けられると傷つく、なぁ‼︎」
盗賊、足を振り上げ、モブCさがる。
「なにしてんのって、聞いてんの」殺気
「あははっ、いーねぇー、その顔‼︎ そっちのは、期待はずれもいいとこだったけど、君なら楽しませてくれそぉ」少し真剣
「ふざけるなよ? 俺のユシャちゃんに、傷つけて、楽しませてくれそう? ……魔王の部下だかなんかしんないけどさ、殺すよ?」
「と、盗賊? 私は大丈夫だからな? 傷もついてないぞ? だから落ち着け? それに、私はお前のじゃないぞ?」
「ユシャちゃん、少し離れてて? すぐにそいつぶちのめして、紅くて綺麗なお花咲かせるからさぁ‼︎」
「盗賊落ち着け‼︎」
「勇者、邪魔しちゃダメだよ。じゃないと先に殺すよ? 盗賊さんとは、後でたっぷり楽しもうかな?」
「俺無視して、ユシャちゃんに手ェ出させると思ってんのか?」
「いいぜ、いいぜ! その顔! ゾクゾクしちゃうぜ‼︎ 楽しもゥぜ? 生きるか死ぬか?」
「上等だ。まぁ、お前にゃ、死ぬかの選択肢しか存在しないけどなぁ⁉︎」
「っ、最高だぜ‼︎」
「そこまでだ‼︎」
「‼︎」
「マオちゃん……」
「魔王……助かった」ぼそっ
「へーか! なんで邪魔するんです⁉︎ 今からイイトコだったのに‼︎」
「黙れモブC‼︎ なに初めて紹介された分際でここまで騒ぎ起こしてやがんだ‼︎」
「えぇー、でもぉー」
「でももヘチマもあるか‼︎ まったく……盗賊、お前もだぞ!」
「へっ、僕ぅ⁉︎」
「当たり前だろ! なんで勇者探しにあった奴が、戦闘してんだよ!」
「いろいろあったんだよぉ‼︎」
「喧嘩両成敗‼︎」
「ケンカとか、そんな優しいものだったか?」
「ともかく、モブCは、一週間罰掃除な」
「はいー……」
「盗賊、今日のおやつは抜きですからね‼︎」
「やめてよお母さん‼︎」
「誰が母さんじゃ‼︎ ちゃんとツッコめし‼︎」
「さーせんwww」
「んじゃ解散‼︎ 勇者、いこーぜ」
「お、おう!」
「まってよ二人とも〜」
「盗賊」
「なにか?」
「君は俺と同じ匂いがする」
「は?」
「人と殺しあうの、好きだろ? 特に強いやつ」
「……」
「あははっ、図星?」
「さあね?」
「ふーん、そっか。ま、気が向いたらいつでも相手してくれよな。あんま相手いなくて、この城じゃビィさんくらいなんだけどさぁ、あの人相手してくれないし……」
モブC、レベル五十越え。
「……ねーよ、いろいろねーよ!」
「盗賊ー?」勇者
「はーい、いーまいっくよ〜♪」
ぱたぱたぱた
「ほんと、暇だったら相手してくれよぉ〜?」
『ほぼ初登場のくせにやらかしましたね……』
「あははー、そーかなぁー?」
『そうですよ、まったく……』
「そっか。……んじゃ、ナレーさん、俺は魔王様にいわれた罰掃除してくるから、じゃーねぇ〜」
『はいはい、さよならさよなら』
『……なんで、なんでモブのくせにキャラ濃いやつが多いんだぁぁああああああ‼︎』フェードアウト




