チルドレン・パニック
「モーブ」
「なんすか先輩!!」
「……」
「……なんですか、先輩」
「よろしい。今日から私少し出かけますね」
「仕事ですか?」
「そうです。先日の貴族の件で少し」
「そうですか」
「それで、ですね。仕事を代わっていただきたいのです」
「そりゃいいですけど」
「よかった。明日の午前中のうちに私の部屋の薬を、魔法薬学部に持って行ってもらいたいのです。城下の学校なのですが」
「ああ、国立の?」
「ええ、そうです。それも先日の薬です」
「子供になる?」
「まあ、私が手を加えてしまったので多少効果が異なるかもしれませんが、危険物には違いませんので、治し方もよくわかっていませんので、専門家にお任せしようと思います」
「それで持って行け、と。了解です」
「よろしくお願いしますね。午前中ならいつでもいいそうですので」
「わかりました」
「ああ、くれぐれも、持ったら直行してくださいね? 危険物なので、魔王様に被害が出たりしたら困りますからね?」
「もちろんわかっていますともぉ!!」
「では、これで」
「いってらっしゃいっ!!」
『きっとモーブがやらかすんでしょうねぇ』
「縁起でもねぇこと言ってんなよ!!」
『どうでしょうね?』
「オイ!」
『とばして翌日午前中です。現在、モーブが薬を運び中』
「……」
ちりんちりん
『おや、魔王様のお呼びですけれど? どうします?』
「ま、魔王様のお呼び出しを断るわけには……」
『でも、持ったら直行しろって言われましたよねぇ? 魔王に被害が出たら困るって?』
「うっ、そ、そうだな……」
ちりちりりんっ!!
『めっちゃ呼ばれて……』
「ダメだ! 魔王様のお呼び出しを拒否できない!!」
『そうして薬を持って魔王の下へ急ぐモーブ』
こんこん
「魔王様お呼びでしょうか!?」
「モーブ!! ヘルプ!!」
「な、何が!?」
ガチャ
書類の山に埋もれる魔王。
「魔王様!!」
掘り出し発掘。薬は危なくないように棚の上に。
「助かった!」
「何が……」
「色々あってだなぁ……」
ばんっ
「魔王いるか?」
「マオちゃんアソボ♪」
「ま……」
「うわぁお前らぁ!!」
書類雪崩。
「あぁ!?」
書類がドミノ倒し、棚揺らし、薬落ちる。
ぱりんっ
ぽんっ
白い煙もくもく
「けほけほっ、何これぇ!!」
「体が痛い!?」
「勇者、大丈夫か!?」
「げほげほげほげほ!!」
「魔王様!?」
モーブ換気のために窓を開ける。
「魔王様……って、エェ!?」
子供姿、勇者魔王盗賊スナイパー。
『スナイパー、いたんですね……』
「問題はそこじゃねぇだろ!! 魔王様!! 大丈夫ですか!?」
「……」ぽけー
「魔王様!?」
「もーぶくん、これ、どゆこと?」
「盗賊?」
『この前とは違い、色変化はしてませんね。ああ、みなさんの姿はミニキャラ風ってことで』
「お前は普通だな?」
「いや、そこまででもないかも。した、たらないかんじ?」
「ハ?」
「もじでいったらひらがなひょうきなきがする」
「ああ、そういう……」
「これ、まえのくすりのへんかばーじょんだよね?」
「ああ」
「なんでこんなあぶないものをそこらへんにおいておくかなぁ!!」
「それはいろいろ……」
「いいわけはむようだよ! とりあえず、ふくはちぢめたし、しょうげきからかえればべつにふつうだとはおもうけど、いつもどんの?」
「それはわかんねぇけど、普通なんだな!?」
「……いや、たいかはしないってだけ」
「どういうことだ?」
「えーと、ようじかはしてるとおもうな」
「幼児化?」
「うん。……ほら」
「う、う、うえ~ん!!」
スナイパーが泣き始める。
「わ、どうした!?」
「うるさいぞ!」
魔王がスナイパーをつつく。
「やめてよやめてよぉ~!!」
「うるさいんだよ!」
「うえー!!」
「ま、魔王様、女の子いじめちゃだめですよ?」
「こいつがうるさいのがいけないんだぞ!!」
「うるさくないもん!」
「うるさい!」
「う、うるさくなんか……うえーん!!」
「また!!」
「ま、魔王様! ダメですって!」
ひょいっ
「なんだなんだ! おまえなんてもーぶのくせにぃ!」
「うえーん!」
「っ、っ」おろおろ
「ほらね、ようじか」
「何とかしてくれたのむからぁ!!」
「わたしにいわれてもむりだよ。ぼくだってようじかしてるんだから、いつまでこうしてはなしてられるかもびみょうだしね」
「な!?」
「うちだって、こどもだから、いつ……って、あれ? ゆうしゃは!?」
「ハ? いない!」
「ちっちゃなゆうしゃなんてかっこうのえさじゃないか!!」
「お前ら、隣の部屋に行けるか? ここだと目立つからな!?」
「ぼくがんばるよ。だからはやくゆうしゃさがして! ておくれだったとかいったら、もとにもどったときころすからな!!」
「うるせぇな!!」
『勇者を探しに行くモーブ』
「勇者!? どこだ!?」
くんくん
「こっちか!」
前方に勇者発見。
てくてく
「捕獲! まったく、手間かけさせやがって……」
「はなせ!」
「ふざけんな! 面倒なことするな!」
「わたしはゆうしゃなのだぞ! わるいまぞくなんててきじゃなぁい!!」
おもちゃの剣振り回し。
「あぶねえだろ!」
とりあげ。
「あっ! わたしのけん!!」
「危険なことはいけません!!」
「……」じわっ
「な、なんだよ……」
「……」ぽろっ
「な!? 泣くな泣くな!!」
「な、ないてなんかないぞ……」ぼろぼろ
「とか言って泣いてんじゃねぇかよ!!」
「な、ないてなんかぁ……うっぅう」
「わかった、返すから! だから泣きやめ!!」
「ぐすぐす」ごしごし
「振り回すなよ? 危ないからな?」
「う」こく
「とりあえず、一緒に来い」
「しらないひとについていくなとははさまにいわれたぞ」
「知ってるから。俺ら知り合いだから!」
「わたしはおまえをしらないぞ」
「知ってんの! 少し忘れてるだけだから!」
「それはあらてのさぎだな」
「違うから! なんで新手とか詐欺とか難しい言葉知ってんだよ!!」
「ははさまがいってたぞ」
「そうかよ! でも、いいからついて来い!」がしっ
「なにをする! はなせろりこん」
「誰がロリコンだ!!」
「きゃー、えっちへんたいろりこんへんしつしゃ!!」
「どこでそんな言葉覚えた!?」
『こうして幼女を誘拐……』
「人聞き悪いこと言ってんじゃねぇ!!」
『……もとい、ミニ勇者をつれて盗賊に言いつけた部屋に……』
「おお!」
魔王と盗賊がキャッキャとあそんで、スナイパーが部屋の隅っこで大きなウサギの人形を抱いておとなしくしている。
「そこそこうまくいっている?」
「あ、もーぶ! どう? こどもでもこれくらいできるのよ!」
「よくやった盗賊!」
「もっとほめなさい!!」
「調子にのんなよ盗賊?」
「うっ……」ぐすっ
「泣くな泣くな!! なんでこう子供はすぐに泣くんだ!!」
「それがこどものとっけんだからじゃない?」けろり
「そうか……」
「うえぇーん!!」
「今度はなんだ!?」
「あたしのうさぎー!!」
魔王がスナイパーからウサギ人形取り合げ。
「うるせぇよ!! これはおれのもんだ!!」
「あたしのだもーん!!」
「いまからおれのなんだよ!!」
「かえしてよー!!」
「おまえのものはおれのもの。おれのものはおれのもの。おちてるのもおれのもんだ!!」
「どこのガキ大将ですかあなたは!!」
「おとしてないもーん!! かえしてよー!!」
「おれのものだからすきにしていいんだよ!!」
「やだー!!」
「ま、魔王様、やめましょうよ、ね?」
「なんでだよ!!」
「元々持っていたのは彼女ですし、ね?」
「さっきからおれがもってる!!」
「だめですよ、モノ取り上げるのは。だからかえ……」
「ヤダ!!」
「魔王様、いけないことなんですよ?」
「ヤダ!!」
「かえしてよー!!」
「やだっつってんだろ!」
「えーん!!」
「魔王様ぁ……」おろおろ
「もーぶ、だめだよ、そういうふうにいってもさ。まおちゃん」
「なんだよ!」
「あー、あれなんだろう!?」
「え?」
「すっごいきらきらしてるー♪ きれいだねぇ♪」
「どれだ?」
人形ぽいっ
「ほら、これ、ケーキだぁおいしそうだね♪」
「わぁ!!」
「とまあ、こんなぐあいに……」
「盗賊、あとでケーキ奢ってやる。……はっ! べ、べつに感謝とかじゃ……」
「まじで!? やったね♪」聞いてない
「……スナイパー、飴やるから泣きやめ、な?」
「うん」
ピンクのロリポップ
「……どこからだしたの?」
「このポケットは四次げ……」
「うん、ちょっとあうと」
「そうか? ともかく、だ……あれ? 勇者?」
勇者、背の届かないドアノブに苦戦。
「うぅ!!」
「こらこらこら! どこ行く気だ!?」
「たんけんいくー!!」
「ダメだっての!!」
「わたしはゆうしゃだぞ! むかうとこてきなしだ!!」
「そんなわけあるか!」
「うっ」
「泣くなよ!?」
「ないてなんかないぞ……」
「あーーーーーー!!」
『あ、とうとうモーブ壊れましたね』
『その後、いち早く元に戻った盗賊に、魔法の力技で、元に戻して事なきを得たのでしたっと』
「だ、大丈夫? モーブ?」
「つ、つかれた……」
「乙様でーす♪」
「あ?」
「ごめんごめん。魔王様、記憶なかったね。よかったのか悪かったのか……」
「ああ、でも、書類整理が進まずに……先輩にばれたら殺される!!」さぁっ
「大丈夫、僕も手伝うし、学部の方にはうまく言っといたから。安心しといて♪」
「まじか、あんがとな」
「……モーブ君が素直にお礼……!?」
「ああ、マジ助かった……」
「コワッ!! 逆に怖い!! モーブ、できる限り仕事代わってあげるから休みなさいな!!」
「ハ? 大丈夫だよ。ってか、仕事お前にやらないからな!」
「すっごい疲れてるよ! ヤバいよ! 休んでよ!」
「なんでだよ!?」
「それダメなやつやから!!」
わーわーぎゃーぎゃー
『こうして、終わっていく今日この頃……』
『その日から、モーブは子供を見ると表情が引きつるようになったとかならなかったとか……』
「終わりです♪」
「またな!!」
『あれ? それ私の仕ご……』ぶつっ




