モーブの大冒険(笑)
『盗賊から連絡をもらい、魔王がピンチだということを知ったモーブ。いてもたってもいられずに飛び出した後のお話です』
「魔王様ぁぁぁぁぁああああああ!!」
『迷いの森まで迷わず一直線に進んでいきます。……なぜ?』
「俺は狼だかんな! 鼻はいいんだぜ!!」
『さいですか。ってか、もう迷いの森ですよ? 迷っちゃいますよ?』
「俺に不可能はなぁい!! なんてったって魔王様のためだからなぁぁあ!!」
『……さいですか』
『前方に崖発見です!』
「ま、魔王様!!」
『まさか本当に見つけてしまうなんて!!』
「魔王様ぁ! くそっ! なんであんなに盗賊と密着してやがるんだぁ!!」
『そりゃぁ仕方ないでしょう?』
「うわぉぉぉぉん!!」
『そうして、モーブは崖の対岸にいたのですがそのまま飛び越えようとしてしまいました。ですが……』
「ぎゃんっ!?」どごっ
『いきなり現れた大木に思い切り突っ込んでしまいました』
「ぅう……」
『あらあら、おでこが真っ赤ですよ? 大丈夫ですか? すごい音しましたけど?』
「な、なんでいきなり……」
『お忘れですか? ここは迷いの森ですよ? ピース変化の時間だったようですね』
「なんだと!? 魔王様は!?」
『どこかにいるはずですよ? ピースは混ざるだけで、それそのものが変化はしないそうですから、きっとまだ崖のピースにいますね』
「は、早く探して差し上げないと!!」
『森が活発になっています。踏み出した先が崖で、魔王の上におっこちる、なんてこともあり得ますのでご注意を』
「わ、分かった……」
しゅんっ
「って、言ってるそばから!?」
『ここは、崖の下あたりでしょうか?』
「あ、魔王様のにおいがする!!」
上に人影。
「魔王様ぁぁぁ!!」
ひゅるるるるるっ
「ん? なんか落ちて……」
がんっ
「いってぇ!!」
『なんですか? 大丈夫ですか?』
「いてぇよ! ってか、これ、魔王様の携帯!?」
『やっぱりあれ魔王ですね。なんか取りに襲われてるみたいです?』
「魔王様、今助太刀に!!」
崖をよじ登ろうとするモーブ。
『ちょ、危ないですよ!!』
「魔王様のためなら!!」
『あ、そこ崩れますっ』
「ハ? エェ!?」
ずるっ、がらがらがらっ
「うわぁぁぁ!?」
ひゅぅばさっ、ばさばさばさばさ……
「いてててて……」
『よかったですね。落ちた先が樹の上で。崖の上からだったらさすがに危なかったですよ?』
「そんなことより魔王様!」
『また離れてしまったようですね……』
「だったらまたさがさねぇと!!」
『こうしてモーブの冒険は進みました……』
「ウォンっ!?」ばしゃんっ
『ある時は川に落ち……』
「グルルルルっ!!」
グルルルルルルルルッ
『ある時は自分より大きな狼に出合い……』
「どりゃっ!!」ぷにょんっ
『そしてある時は、攻撃を跳ね返す、スライム・大に会って弾き飛ばされましたとさ……』
「く、くそぅ……いつになったら魔王様に会えるんだよ!?」
『日が沈みましたね……』
「ぐるるるる」
『唸っても始まりませんよ?』
「そうなんだが……」
『ここで一つ朗報です』
「なんだ!?」
『魔王は、もう救出されました……』
「ハぁ!?」
『まあ、色々ありまして、ね?』
「もっと早く言いやがれ!!」
『すみません! って言いますか、あなたが話聞こうとしなかったのがいけないんでしょう!?』
「う、そりゃ、すまねぇ……」
『じゃ、帰りましょうか』
「……」
『どうしました?』
「みち、わかん、ねぇ……」
『……迷子ですか?』
「違うぜ!! さ、最初は、魔王様が目印で! でも、今はどこをどう歩いたか……だって移動しやがるし!!」
『それを迷子と言わず何と呼びます?』
「くぅ……」
『では、助言を一つ。魔王の携帯で連絡を取っては?』
「……!!」
『暗証番号は……』
「なんで知ってんだよ!」
『盗賊に教えてもらいました』
「あいつ!!」
『いいから連絡なさいな!!』
「お、おう……」
「はい、もしもし? こちら魔王城ですが」
「先輩? あ、あの……」
「モーブですか? いつまでどこをほっつき歩いているので? 夕食の支度はとっくに終わってしまいましたよ? あなたの仕事がね」
「そ、それはすみません……」
「分かったら早く帰ってきなさい。あなたにかまっている時間はありません」
ぶつっ
「ちょ、待てよ先輩!!」
つーつーつー
「あんにゃろ!!」
「もしもし?」
「先輩! 人の話も聞かえぇできるってなぁどういう了見だ!!」
「それが先輩への口調ですか?」
「うっ」
「それに、そんな態度をとられても仕方ないと思いますが? 魔王様への食事の支度をほっぽりだし、自分の仕事も満足にできないようなザコのせいで、私たちにまで被害が出ているのですよ? それを……」
「そ、それはすまねぇと思ってる。それから、その件でお願いが……」
「ほう? それが人にものを頼む態度ですか? そんな尊大な口調で?」
「す、すみません先輩。どうかお願いを聞いていただけないでしょうか?」
「まあ良いでしょう。何がありました?」
「迷いの森でかくかくしかじか……」
「なるほど、迷子ですか……」
「迷子じゃねぇって!!」
「それを迷子と言わず何と呼ぶのです?」
「なんかデジャヴ!!」
「ハ?」
「なんでもねぇ!」
「言葉づかい」
「はーい……」
「返事は伸ばさない」
「はいはい」
「返事は一回」
「はい」
『おかんですか!?』
「……」
「……」
『無視がきついです!!』
「分かりました。ですが、無理でしょう」
「なんでだよ!?」
「迷いの森など特殊も特殊です。簡単に入っていけるようなところではありませんし、出て来れません。ですから……あ、ちょっと?」
「なんだよ!?」
「もしもし? モーブ君? 俺、盗賊さんだぜ」
「あんだよ盗賊! ってか、もともとこうなったのもお前のせいなんだからな!!」
「何、いきなり? 八つ当たり?」
「正当な当たりじゃボケェ!!」
「なんでよ?」
「お前が魔王様を危険な目に合わせなきゃ!!」
「……ふーん? だから?」
「だから、だと!?」
「お前がそうなったのは自分が勝手に事情も聞かずに飛び出したからだろ? 俺のせいにすんな」
「なんだと!!」
「きゃんきゃん吠えんなよ。負け犬の遠吠え?」
「帰ったら殺す!!」
「そう? じゃあ助けてやーんね」
「!?」
「お前がさ、俺のこと無視して、魔王の心配だけして、そのせいで俺は結構傷ついたんだぜ? そう、きずつ……うっ、うぇ~んっ!!」
「わっ、盗賊?」魔王が後ろでなんか言ってる系
「!?!?」
「ぼく、ぼくだって、いたのに! なのに、むししてぇ!! ぼ、ぼくもいたんだよぉ!? い、いた、いたのにぃぃぃぃ!!」盗賊幼児化
「な、泣くなよいきなり!!」
「いたんだよ? いたんだよ! なのに、なのにさ? ぼくのことはむし、してぇ! ぼ、ぼくも、ぼくもぉぉっ、いたっ、うっ、えぐっぅ、えぇぇぇん!!」
「な、泣くな泣くな!!」
「うえぇぇぇぇぇん」
「あ、あとでチョコケーキやるから! だから泣くな!!」
「そ、そんなことじゃ僕のハートは治らないもーん……」
「ロイヤルミルクティーもつけてやるから!」
「……ほんと?」
「それでつられんのかよ!?」
「うぇ……」
「わかった、分かったから!! 悪かったって!!」
「手作りケーキ?」
「ああ、そうだよ!!」
「ぼくのことちゃんとわかる? わすれてない?」
「覚えてるって、忘れねぇって!!」
「だいたい、お前みたいなキャラ濃いやつ忘れらんねぇ……」魔王ボソッとボイス
「でも、あんなにむしされてぇぇぇ!!」
「ほんと悪かったって!!」
「ぼくちゃんとここにいるよ? いるよねぇ? なのに、なのにぃぃぃ」
「泣きやめー!!」
「うぐっ」
「ほらほら、盗賊は強い子だろ? いつまでも簡単に泣いてたりしねぇよな?」魔王、よしよし
「ぼく、つよいこ?」
「そうだろ?」
「うん。ぼくつよいこ! がまん、するっ」
「おー、えらいえらい……」よしよし
「魔王様、ありがとうございます……」
(また魔王様に迷惑をかけちまったぁぁぁ!! これじゃ側近失格だぁぁぁ!!)
「ぼく、えらいこ、ちゃんと、するもん……」
「盗賊、へるぷみー」
「行ってやれ」
「いく。……ぐすっ」
『そうしてなんだかんだで、モーブはちゃんと救出されましたよ? もちろん、その後に盗賊にケーキと紅茶で、お礼をし、また混沌としたのは言うまでもないですよね……』
「おま……」
「ケーキっケーキ♪」
「……楽しんでねぇ?」
「そんな、でもないもん。甘いので癒されてる途中だもん……」
「ほんとかよ……」
「疑うのぉ……?」ぐずっ
「う、疑わねぇから!! ほら、紅茶おかわりいるか?」
「いるっ♪」
「あー、もう、口にチョコついてるぞ?」
「ほんと?」
「動くなよ?」ふきふき
「えへへっ♪」
「子供かよ……」
「モーブちゃんはいいお父さんになるね♪」
「な、なんだよそれ!」
「その前にいい彼氏になるねっ。カッコかわいいもん♪」
「かっこいいはいいとして、かわいいってなんだよ!」
「かわいいのっ♪」
「かわいくねぇし! かっこいいだけでいいだろ!」
「だーめっ、かわいいもないとモーブちゃんじゃないの♪」
「ってか、なんでちゃん付け?」
「マイブーム♪」
「あ、そ……」
『言うまでもなかったですよね……? さ、ほのぼの締めまーす。お疲れ様でしたー』
「モーブちゃんおかわりっ♪」
「はいはい……」




