盗賊さんの不幸を呼ぶお願い
「こにゃにゃちはー」
魔王執務室。
「うん。いきなりそれで入ってくんのやめような? ついでに真顔もやめような? 真顔でそれは怖いぞ?」
盗賊、白銀のゆるふわウェーブ。黒いシャツに黒のロングスカート。黒のストール付。女バージョン。
魔王、いつもの魔王的微妙に豪華黒服。
『絹ではありません。綿です。コットン百パーです。その辺が微妙です。魔王なのにその辺倹約です。普段着だから別にいいのですが、いいのですがね!?』
「んだよ……!?」
『別にいいのですがね、魔王様! だったら、ねぇ!?』
「別にいいだろ!?」
『ええ、ええ、いいんですよ。……いいんですよ!?』
「もうお前黙れ! で、盗賊はなんだ?」
「だってー」しょぼーん
「どした?」
「……魔王、お願いがあるの。報酬ははずむわよ?」
「内容を言え。俺も仕事がだな……」
「言ったら、やれと言うしかないわよ?」
「それが人に頼みごとする態度か!」
「だってぇーーーー」くたぁ
「ほんとどうした?」
「疲れた。僕もう疲れたよ、パトラs((ry」
「いやそれ言っちゃあかーん!!」
「どこまで言っていいかも分かんないよねぇー。伏字はオケ?」
「いや知らんし! でもなんとなくダメー!!」
「わぁったよぅ。これでネタの幅が広がんないわぁ~」くてーん
「……チョコ食うか?」
「いらなーい」
「…………」よしよし
「くぅ~ん」
「お前は犬か!?」
「そないなこと言わんと~、今傷心じゃけぇ、もっと慰めてくれてもよかやなーい」
「なんだよ……」
「お願い、聞いてくれる?」上目使い、おねだりポーズ
「ものによる」
「一緒に薬草探し、して?」
「ハ?」
「勇者がいないのー。寂しいのー。レベル上げってさー。バドの」
「ほーお?」
「だから、本筋のレベル上げを頑張ってもらいたくてさ、そしたらもっとかまってくれるかもやし? んでそのために、薬を作ってあげたいわけ」
「それで?」
「飲んだら、死んでもすぐ復活する薬があるわけよ。まあ、ゲーム的な感じであって、ガチで死ぬわけじゃないからできる技なんだけどね? その薬ね? そうとう希少価値が高いわけよ。それをとるのもタイヘーン。だからへるぷみー」
「……ま、いいか」
「え、やってくれるん? マジ!?」がばっ
「ああ、まあ、勇者のためだしな。いつまでもレベル一は困るし」
「あ、昨日頑張ってレベル三になったらしいよ?」
「マジかよ……ま、俺様もレベル上がったしな。お前もだろ?」
「そーね」
「どっちにしても俺らには到底及ばないってことだ」
『魔王、レベル三十五。盗賊、レベル三十二。……勇者ドンマイ☆』
「……」
「……」
『……』
「勇者がいねぇとな……」
「ツッコミがね……」
『はりあいもありませんね……』
「「『はぁ……』」」
『はい、というわけで、ローテンションで進めていきたいと思います』
「勇者いないと元気でなーい」
「勇者いないとテンポでなーい」
『勇者いないとすべる~』
「「『はぁ…………』」」
「……え? っ!! なにこれなにこれ!?」
「うるさい」
「いやいやいや!! いくいくいく!! いっちゃう! これイッチャウよぉぅ!?」
「いかねえよ!! 暴れるな……」
「いや、だって、これぇ……っ!! ひゃんっ!?」
「暴れるなっつってんだろうがよ!!」
「だって、だって、だって……、だってこれ死亡フラグ一択じゃなぁい!!」
『魔王、盗賊、現在崖っぷち……ってか、崖です。はい。崖の真ん中くらいかな? 半分くらい落ちてます』
『なぜこうなったのか、詳しいことは省きまして、略図いきます。薬草探し→発見→なんだかんだで崖から落ちる→魔王が何とか持ちこたえる。な感じです。魔王が片手で絶壁に生えた、弱弱しい木をつかみ、片手で盗賊の腰を抱いてを支えております。かっこいいです。魔王がヒーローです。……あれ? おかしいなぁ……。魔王、魔王ですよね? ま、今更なんですが』
「ま、マオちゃん、これ、もしかして……大ピンチ?」
「もしかしなくとも大ピンチだな」
「冷静に言わないでよぉ……」
「お前、高いとこ苦手か? いつになく弱気じゃないか」
「あぅ、魔王がやさしい……もしかして、もう死んでるのか……」
「それはもしかしないな。てか、ホントに大丈夫か?」
「スカート、足すーすーする……」
「……ノーパン?」
「ちげぇし! いつもはズボンはいてんの! でも、今日はいっかーって!」
「なんでだよ! いつもよりもよっぽど薬草採取の方がアクティブだろーが!」
「ロングだしいーかーなーておもてん!!」
「ダメだから! フツーだめだから!!」
「えぇー?」
「えぇーじゃない!!」
「……ぶー」
「ブーイングすな!!」
「ちぇっ」
「舌打ちもダメ!」
「……まったくもってまったくもって!!」
「一回黙ろうか?」
「きゃーこわーい」
『無駄な口論で体力消費。全く建設的ではありませんね』
「……」
「お前が悪い」
「マオちゃんがわるぅい!」
「あ?」
「ごめんなさい……」
「お前が見境なく走って行ったのが悪いんだろ? この辺は崖があるから気をつけろって言ったよな?」
「はい。おっしゃる通りで……」
「見通しも悪いからちゃんと前見とけって言ったよな? ついでにここらは地面が緩い特殊地域だからどんだけ注意してても危ないことがあるって言ったよな? お前は大丈夫だって、盗賊さんクオリティー舐めんなよって言ったよな?」
「ええ。全くその通りです……」
『この森は魔王領。特殊地域です。名前は特にありませんが、移動する森、と呼ばれることが多いです。数分前までは目の前に大木があったはずなのに、次の瞬間には崖なんてこともざらです。正方形の森区域、それを賽の目状にピース化し、それがランダムに入れ替わるらしいです。周期も場所もランダム。地図も作れないので迷いの森とも言われます。おかげで人はほとんど立ち入らず、貴重なものの宝庫ですっ』
「どうしよう……」
「いつまでもつかわかんねぇぞ」
「頑張って魔王……」
「俺もそうだが、この木がな……」
よわよわヒョロ木。
「が、頑張って、木!!」
「木に応援してもなぁ……」
「君が僕らの命綱!」
「いや、そうなんだけどな? 実際そうなんだけどな?」
「頼むよー」
「よしわかった。お前俺の話聞いてないな? 話がかみ合ってないぞ?」
「あ、ばりた?」
「なにが、あ、ばりた? だ!! てめぇ反省ってもんをしてねぇな!?」
「わー! ごめんって! なんだよ! ただの軽いジョークじゃないか!!」
「時と場合を考えやがれ!!」
「そんな怒んないでってばぁ!! もうもう!!」
「うるせぇって!!」
みしっ
「「……」」
ちらっ
みしみしみし……
「……」
「……し、静かにするわ」
「そうしてもらおうか?」
『絶体絶命大ピンチ☆』
「「何☆つけとんじゃぁ!!」」
『また危なくなりますから大目に見てくーださーい』
「こいつ、俺らが手ぇ出せねぇからって……」いらぁ
「後で覚えてろよ?」にこっ
『魔王様はマジで殴って終わりそうですが、盗賊さんはねちねち陰湿にいじめてきそうで怖いですね……』
「え、そーお?」にこにこ
「……」
魔王引き気味
『あ、マジで寒気が……」
「うそうそ。悪いね」けらけら
「おま……」
「でも、これからどうする?」
「……そうだ! 電話しろよ! 誰かに!」
「誰かって誰よ……?」
『てか、魔王でしょう? なんかこの状況をなんとかできるような魔法使えないんですか?』
「俺、戦闘特化型だからな……しかも得意は炎系……」
『いざというときに使えませんねっ』
「あんだと!?」
「あ、魔王!! 僕携帯持ってない!!」
「なんでだよ!?」
「電池きれてて放置してきちゃった!!」
「バカ!!」
「あーーーーーー」
「俺の使え。ポケットに入ってっから」
「あいあいさー。えっと、」
「暗証番号は、」
「ぽちぽちぽちっとな」
「……俺まだ言ってねぇんだが?」
「えへっ」
「なんで知ってる?」
「盗賊さんだよ? 暗証番号とかは、ね。じゃないと金庫破りとか簡単にできないじゃん?」
「……」
「じゃなくて、誰に電話する?」
「勇者とか?」
「……なんでここに来たと思ってんの? 勇者はバドのせいで地方出張中だよ」
「そうだったな……じゃあ、魔王城にかけてみろ」
「魔王城って?」
「使用人たちは、大体の奴が個人電話持ってねぇから、魔王城に黒電話設置してある」
「黒電!? レトロー!!」
「だろ? なんかモブBの趣味らしい……」
「あの人おじいちゃんかよ……」
「……まあ、ともかく」
「おけ」
ぷるるるるるぷるるるるる……
「はい。こちら魔王城ですが」
「ん? その声、モーブ君?」
「あ? 盗賊? なんでこっちに電話してんだ? ってか、魔王様と一緒のはずだろう?」
「んー、その魔王様と一緒に遭難しちゃって……」
「な!? 魔王様が!? 場所は!?」
「魔王様、が、じゃなくて、私も一緒ね?」
「どこだよ! 場所言えよ!!」
「聞いて? 私も絶体絶命よ?」
「魔王様が絶体絶命だと!? てめぇなにしやがった!?」
「聞いてよー(泣」
「何してんだ……」呆れ
がんどんがらがらーっ
「え? ナニナニ?」
「お電話代わりましたモブBです」
「あ、おじいちゃん」
「は?」
「いやいや、こっちの話。えっと、モーブ君はどうしたの?」
「飛び出していきました。魔王様をお助けする! とか何とか言いまして」
「なるほど。……場所知らないのにどうするつもりなんだろう?」
「さぁ?」
「ま、いいや。ねぇ、ビィちゃん」
「ビィちゃん?」
「うん。モブBのビィちゃん。いちいちモブBゆうのメンド」
「は、はぁ……」
「ぷくくっ。似合わねぇ……しかもちゃん付け……」
「魔王、笑ってないでよ。んで、ビィちゃん、俺ら魔王様と一緒に遭難しちまったの。ヘルプみっ、って、あ!?」
ばさっばさっばさ……
「え、何あれ何あれ!?」
「食人鳥!! ついでに光物好きな……」
「え、光り物って、僕の髪!? いやいや来ないで!!」
「何があったんです!?」
ばさばさばさ!!
キィィィィ!!
「あっ!!」
携帯、崖へ真っ逆さま
「のぉぉぉぉ!!」
「今それどころじゃねぇだろ!? 盗賊、捕まれ!」
盗賊、魔王にしがみつき、魔王の片手、自由。
「火炎球!」
キェィィィィ!!
「もういっちょ!!」
ばさばさっばさ……
「ふぅ。どっか行きやがれっての」
「まったくだ」
「……」
「ごめ、携帯……」
「仕方ねぇな……」
「後でなんか違うの作ってあげるから許して……」
「それはいい。今どうするかだ……」
「……枝が折れるまで、あと数十分と予測。助けが来る余地なし」
「モーブは当てにできねぇしな……」
「状況、きわめて絶望的……」
「……」
「……」
『き、希望を捨ててはいけませんっ』
「そう言われてもな……」
「はっ……」
『が、頑張りましょうよ!?』
「この状況見て言ってるの?」
「この状況で何やれってか?」
『お二人とも、目が死んでます! やる気もなんもあったもんじゃありませんよ!!』
「ははは……」
「ふふふ……」
『怖いですー。二人とも死んでますー(泣』
「はぁ……」
「ん? あ……」
「あんだよ?」
「もうそろそろ終わりにしないといけない時間だなーって」
『あら、もうそんな時間ですか?』
「こんな状況で何言ってやがる!!」
「……だって、ほら」
みしみしみしみし!!
「神様がもう終わりにしやがれ! って、怒っていらっしゃる証拠ですよ、これは」
「死ねってか? 死んで終わりにしろってか!?」
「はぁ……仕方ないな」
「何がだ、よっ!?」
ぼきっ
「うわっ!?」
「ひぁ!?」
「マジどうする気なんだよぉぉぉぉ!?」
「こうします!!」
バサッ!!
盗賊の背中に黒い羽。
がくんっ
「うおっ!? おま、なんだよその恰好!?」
「うえぇぇ、やりたくなかったのに……」
「獣人系だったのか?」
「違うよ。一応人間の端っこくらいにいるはず」
「なんだよそれ……」
「だから気持ち悪いって言われてやだったんよー」
「いや、かっこいいと思うけどな、」
「え? ほんと!?」
「だがな、なんでそんなのがあんだったら最初からださねぇんだよ!! おかげでビビっちまったじゃねぇかよ!!」
「あ、魔王ビビったの~!?」
「ち、ちげぇし! それは言葉のあや的な!」
「かわいいとこもあるのねー」
「あん?」
「ごめんごめん。そっかー、かっこいいんだ。これ。嬉しい!」
ばさばさばさ
「さ、帰ろう! 時間がないから空中で締めますよ~?」
「え、マジで!?」
「マジで!」
「えと、今回も微妙な感じで終わらせます! 失礼しました!!」
「ほんとオチもないしつまんなくてごめんなさい!! それでもまた読んでくれたらうれしーです!」
「「では、さよーならっ!!」」
『以上。盗賊さんの不幸を呼ぶお願いでしたっ。失礼します!!』




