青と翠の休憩所~盗賊の話~
青と翠と時計の間
盗賊、ガラスの机で執筆中。
『ダメですね。全くダメダメです』
「そんなに?」
『ええ。全然だめですよ。前回の話、あなたの頭の中じゃきれいにまとまっているのかもしれませんが、読者の方には意味不明すぎて絡まってごちゃごちゃだと思いますよ?』
「うーん、そうかぁ。んじゃ、今回は整理の回といたしますっ」
『それがいいですね』
「では、初めに、えーと?」
『あなたがモブAとスナイパーを誘拐したんですよね』
「誘拐なんて人聞きの悪い! ちゃんと合意の上でだって!」
『モブAはまあそうかもしれませんが、スナイパーは流されるままでしたよ!?』
「あいつはいーの! 元からあーゆーキャラジャン!?」
『ま、それもそうですか』
「天ちゃんもあいつの扱いが雑になってきてるねっ! でもね、そうなんだよ!!」
『さ、そして砂漠へ。っと』
「依頼を受けて、ニャンニャン記の時の異常気象を調べたの。そしたらあの辺の奴らが怪しいって結論」
『具体的には何をどうしたらそうなったんです?』
「えー? そんなこと言われても……魔法の残滓を調べる、的な?」
『?』
「異常気象の原因を調べて、魔法が関わってることを発見して、それが自然的なものか、人為的なものかを判別。それが人為的なものだと確定し、次は故意か暴発かを調べる」
『なるほど。めんどそうですねっ』
「分かってないね?」
『てへっ☆』
「腹立つなぁ……。ま、それで結果。あそこの奴らってこと。動機は不明。手段も不明。でも、故意なのは確か。だいたい、結構大規模なものだし、あの世界全部を覆うなんて、暴発って線はかなり薄。しかも一人じゃできない。組織だってるって感じかな」
『ふーん』
「雑! 説明頼んだくせに雑!!」
『てへっ☆』
「かわいくないし、二回もやられると殺意が!!」
『わ、すみませんって! ナイフ抜かないで!! えーっと! それで、そこの組織に圧力かけるためのモブAでしたね!?』
「そうそう。魔王領代表がモーブ君ってことで。あたしは勇者パーティーとして」
『それで事件発生ですか……』
「ナニ? 人間なんてどうでも言い的な発言のこと? 反省も後悔もしてないけど?」
『うわぁ』
「だってさ、もともと人間が悪いってのさ! 特にトアル国王!! なんなのさあいつ! あたしはあいつのパシリじゃないのよ!? なのに面倒事ばっか押し付けて! それを当たり前だと思ってるのさ!!」
『それは……』
「妃とか娘さんとか、王弟とかはちゃんとまあまあいいやつなのにさ!! ダメダメだよ、あいつは!! 腐れ貴族どもの傀儡! あそこまで馬鹿だといっそあっぱれだよ!! 勇者が人間で、人間側にいなかったらさっさと殺してるってのさ!! 他の人間まとめてね!! 町民とかはいい人ばっかだから見逃すけれどもさ!?」
『そういうことを外で言ってはいけませんよ? ここはあなたの空間で、私とあなたしか入れませんけれど、外で言ったら勇者の評価にもつながるんですからね?』
「分かってるさそのくらい! あたしが勇者の不利益になるようなこと言うはずがないじゃないのさ!!」
『それならいいんですけどね』
「そうさ! ……あたしを縛れるのは勇者だけなんだから、勇者だけがあたしを……あははっ」
『ヤンデレ発言やめましょうね!? 元からキャラ濃いんですから、これ以上キャラづしなくてよろしい!!』
「えー」
『えーじゃない!』
「ちぇっ」
『舌打ちしない!!』
「はいはい。んで、オアシスの泉にダイブ! 妖精の都へ!」
『いきなり話し戻しましたね!?』
「えっと、泉の都のお偉方に会いに行った、と」
『えらく直球勝負だったそうで』
「そうそう。それでなんか反応してくれたら楽だし、そうじゃなくても、嗅ぎまわられたら平静でいられなくなるでしょ? てかなってほしい。そしたらそこ捕まえるから……」
『希望論……』
「でもさー、本当に動いてくれるとは思わなかったよ……。さすがに手がはやかった」
『それでスナイパー襲っちゃったんですか? 呪いの暴走で?』
「そうそう! くらくらってきてたところにあんなほわーんで、グアンッときたわけですよ!!」
『はい、わけわかりませーん。詳しくどうぞ』
「えっと、元からあの都との相性が悪かったんだよね」
『はい?』
「うーん、花粉症の人が、花畑に来ちゃった感じ?」
『わかるような、分からないような……』
「ま、そんな感じ? 僕も花粉症じゃないからよくわかんないけども……」
『じゃあ、他の例えなかったんですか!?』
「ないからのこれでしょ!! んで、元からそうだったんだけど、工作活動なのかな? 動き出してさ。何処から嗅ぎ付けたのか、僕が呪い持ちだって知ってたみたい。さらにスギ花粉ばらまかれた」
『え、スギ花粉?』
「アレルギー強めの花粉? みたいな」
『う、う~ん? 微妙な理解……』
「それでくらくらしてたんだよ。吸血衝動が結構きつかったわけ。いや、吸血衝動ってかさ、血が見たいんだよねぇ。飲むと一番収まりがはやいんだけど、全身に血浴びれば、それもそれでおけ」
『怖いですよ! ……なるほど。くらくらですか』
「ん。でね、スナイパーが買ってきたお土産の中に、さらにそんな吸血衝動を刺激するものがありましてね? それでぎりぎりまで堪えてたんですけれど」
『ほわーんとお土産ですか。最後のグアンッは?』
「スナイパーのあの無防備な感じ!! ソファーに寝転がって、ちょっと、ムフフな気分になっちゃったんですよ!!」
『うわっ、サイテー!!』
「仕方ないでしょう!? 僕だって男バージョンだったんですから!! おいしそうじゃないですか!!」
『それで私をぐるぐるポイしたとか、サイテー!! モブAさんが来てくれなかったら私死んでましたよ!! ってか、あなた元々女性でしょうが!!』
「えへっ。悪かった。反省はしている後悔も、している!!」
『ちょっと間が気になりますけど!? しかも女性ってとこスルー!?』
「何気あのノリが好きです! ごめんなさい!!」
『サイテーサイテー!! この女の敵!!』
「ま、そこをモーブ君がヒーロよろしく少し遅れてやってきて、ピンチを救ったわけですが!」
『ホントかっこよかったです!! ステキー!!』
「モブのくせにモブのくせに!!」
『ケダモノのあなたよりも断然いい方です!!』
「くそぅ! ……えっと、確かこの辺だよね? 前回まで?」
『ええ。そうじゃないですか? そこからの、魔王と勇者を呼び寄せよう、でしたものね』
「よし。じゃあ、今回はこの辺だね」
『はいはい。ああ、そういえば』
「ん?」
『何を書いているんですか?』
「うん? ああ、この話」
『この話?』
「魔国の日常。いつか、さ。いつかの未来。この話を読んでさ。ああ、俺らこんなバカなことやってたんだよなぁ! とか言って笑ってみたいじゃない?」
『……』
「いつかの未来。絶対僕らは僕、ら、じゃいられなくなる。離れて、忘れちゃうんだよ。きっとね」
『私は傍にいますよ。きっと』
「ううん。そんなこと言ってもきっと忘れちゃうんだよ。僕がね。君は消えていくだけだ。君は僕でもあって、僕は君でもある、んだから?」
『そんな寂しいこと言わないでください』
「ううん、ううん。当たり前のことなんだよ。悲しいけどね。だから僕は書くんだよ。忘れないように。この時だけは、僕、は、僕ら、なんだ」
『…………』
「遠い未来にさ、笑ってたいね。これ読んで、ああ、こんなことやってたんだよ。僕ら、こんなあほだったんだよってさ」
『忘れませんよ。きっとね。楽しいことはちゃんと覚えていてくださいな。嫌なことこそさっさと忘れましょうよ』
「それもそうだね。そうなんだけどね……」
『卑屈ですよ?』
「そうなんだけどさー……。いつか僕がいなくなっても、僕が一人になっても、こうして記録していれば、きっと僕は忘れられない、思い出してもらえるって、そう思うんだよ」
『大丈夫ですって! ある意味こんなインパクト大の、バカな、これでも普通の“日常”やってる人なんて忘れませんから!! これが本当に日常なんて、ありえないですもん!』
「……。さ、こんなところで終了だぁ!!」
『いきなりハイテンションにならないでください……ついていけません……』
「頑張ってぇ!! いくよ? せーのっ」
「『まったね~』」




