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「あ。やっと顔上げた」
驚いてよく見てみると、そこにはいかにも好青年って感じの、優しそうな男の人がいた。
かっこいい……。
じゃなくて!
「なんっ…で、あたしの…名前を…」
初めて会ったはずなのに、なんで名前を知っているの…。
……?
あれ…?
初めて…?
あたしは、奇妙な感覚に襲われた。
どうして…?
初めて会った気がしない……。
「あたし…あなたとどこかで会ったことありますか…?」
なぜ名前を知っていたのか、なんてことよりも、そっちの方が気になってしまった。
「会ったことがあるも何も…。
幼なじみの顔忘れたの?」
幼な…じみ…?
……
………。
……ダメだ。
ピンとこない。
「わかんないです…」
「……うわ、ショックー。
俺、顔見て一発でわかったのに。
まぁ仕方ないか…。
ほら、隣に住んでた隼人お兄さま。
覚えてるだろ?」
はやと…お兄ちゃん…。
ズキッ
痛っ…。
…頭痛が…する。
「え、なに?
ホントに忘れちゃったわけ?」
「…ごめんなさい……。
あたし、小学1年の時より前の記憶がなくて…」
「………え…」