9-10
「あれ?」
あれから、帰ってきたのは結局夕方だった。
隼人さんがあたしの母さんと話がしたいからって、一緒に帰ってきたわけだけど…。
「波瑠、どうした?」
「靴が…」
玄関に、見慣れない靴があった。
お父さんのじゃない、ということは……。
「お兄ちゃん…?」
ダッダッダッダッ…
「はーるーっ!!
おっかえりぃっ!!」
ギュムッ
「うわっ!
お兄ちゃん!」
大きな足音をさせながら抱きついてきたのは、言うまでもなくあたしのお兄ちゃん。
「く、苦しい…お兄ちゃん…」
あたしの兄は、恥ずかしいことにシスコン。
あたしの姿を見ると、抱きつかずにはいられないとか。
「お兄ちゃん…何で家にいるの…?」
お兄ちゃんは、大学に入ってから一人暮らしをしている。
つまり、この家にはめったに帰ってこないし、帰って来るときもお盆とかお正月だけのはず。
なのに何で家に?
「え?あぁ…、この間帰った時に忘れ物しちゃって…。
取りに来たついでに、波瑠の顔を見て帰ろうって思ってさ」
「へ、へぇ…」
あ…ヤバい…。
口から泡が出そっ…。
「おにーさん。
波瑠ちゃん死にそうですよー」
「誰がお兄さんだゴラァ!!って………」
止めに入ってくれた隼人さんを見て、お兄ちゃんは固まった。
あ、そっか。
お兄ちゃんは、隼人さん見るの久しぶりだもんね。
そりゃ驚いて…。
「何で隼人がこいつといるんだよ!」
……ん?




