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「波瑠」
ハッとして顔を上げると、いつの間にか海辺まできていた。
綺麗…。
隼人さんが、ギリギリあたしの顔が見えるくらいに振り向く。
そして、おんぶした状態のまま
「俺は、波瑠が好きだよ」
素敵な笑顔でそう言った。
「………え」
驚きすぎて反応が遅れた。
今……何て言った…?
「何度でも言ってあげるよ。
俺は波瑠が好き」
「う…うそ…」
「嘘じゃないよ」
嘘じゃない…?
隼人さんが……あたしを…?
「………」
「………」
「波瑠ちゃんお返事は?」
隼人さんが前を向いたのを見計らって、頑張って口を動かした。
「……き、です」
「ん?」
「好き…です…」
「聞こえない」
「隼人さんが…好きです…」
あたしの言葉を聞いた隼人さんは、クスッと笑った。
かと思えば、
「よくできました」
と言って、あたしを地面に下ろす。
「うわ、目ぇ赤」
嬉し涙でグチャグチャになったあたしの顔を見て、隼人さんは笑った。
「でも可愛い」
そして、優しいキスを一つ落としてくれた。




