9-3
あぁ、何であたしついてきちゃったんだろう。
自分で自分がわからない。
「………」
「………」
さっきから一言もしゃべらない。
連れ出したのはあなたなのに…と、隣で歩く隼人さんを睨んでみる。
「………」
「………」
「あの、隼人さっ…」
「悪いけど、言い訳聞いてくれる?」
この沈黙が辛くてあたしが話しかけようとすると、隼人さんがしゃべりだした。
同時に、ぎゅっと握られる右手。
まるで、「逃げるな」と言ってるみたいだった。
「波瑠が見た女の人は、俺の元カノだよ」
ツキン…
やっぱり、と思う反面、“元”という言葉に安心している自分もいる。
「俺がこの町から出て行って、違う所に住んでた時、中2から高1まで付き合ってた彼女」
「………」
「その子ね、割といいとこのお嬢さまで、何で俺を選んだのかわからないけど、向こうから告白してきたんだ。
当時の俺は、ヒトに対してあまり興味を持ってなかったから、それでもよければって付き合ってた」
「………」
「でも高1の終わりぐらいにね、彼女からある事を言われて…」
『隼人くん…どうしよう…。
親が…、この人と結婚しなさいって、男の人を連れてきたの…』
「いいとこのお嬢さまだったから、政略結婚っていうのがあったんだろうね。
でも…」




