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「キョロキョロしてもいいものはないよ」
「わっ」
急に視界が暗くなったと思ったら、ドンッと押されてそのままソファに倒れてしまった。
…あっ。
目の上にあるの、タオルだ。
しかも冷たい。
「気持ちいい…」
「目、結構腫れてたからね。
そうしてたほうがいいよ」
隼人さんの言葉と共に、自分が眠りに落ちていくのを感じた。
寝たくない…。
でも、隼人さんといるとすごく安心する。
自分でもびっくりするくらい落ち着いている。
もうちょっと…。
もうちょっと、この心地よさに甘えてもいいかな…。
そこで、あたしの意識は完全に途切れた。
夢の中で、隼人さんの声が聞こえた気がした。
『大丈夫。
俺がついてるから。
大丈夫…』
そして、ぎゅっと抱きしめられる感覚がした。
あったかくて、優しくて、本当に隼人さんかと思った。
そんなわけないと思いながらも、ええい夢ならやっちゃえ!と、あたしもぎゅっと抱きしめ返した。
あたしを抱きしめていたその力が、ちょっとだけ強くなったのを確認してから、あたしはまた意識を手放した。




