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『──おにいちゃん!』
あたしは、誰かの名前を呼びながら走っていく。
その声は、とても楽しそう。
『はる』
優しく微笑み迎えてくれた少年は、どことなく誰かに似ていて、胸の辺りがキュッとなった。
あたしとその少年がいるのは、どこかの家。
そこの、庭みたいな場所。
『──おにいちゃん。
このハナはなんていうハナ?』
あたしは、近くにあった花を指差して言った。
『これ?
これはね、パンジーっていうんだよ』
『ぱんじー?』
『はる、パンジー好き?』
『うん!
かわいくてすき!』
『そう。
じゃあ、はい』
そう言って少年は、パンジーを一房取った。
『はるにあげる』
『いいの!?
ありがとう!
はやとおにいちゃん!』
……!!
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目をしっかり開くと、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいるのが見えた。
はやと…おにいちゃん…?
「………っ」
それが、自分の記憶だということに気づくのに、そう時間はかからなかった。




