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「寂しいだろうけど、隼人くんとはバイバイなのよ」
あの約束の日から一週間後。
学校から帰ると、お母さんからそう言われた。
「ばい…ばい…?」
「そう、バイバイ。
隼人くんは遠くに引っ越すの」
「ひっこし…?」
「もう…会えなくなるのよ」
会えない。
その言葉を、すぐには理解できなかった。
「母さんどうして!?
オレ、何も聞いてないよ!」
一緒に話を聞いていたお兄ちゃんが、驚きのあまり叫んだ。
「……急に決まったらしくてね。
あたしもさっき聞いたわ」
詳しくは知らないの。と、お母さんは言った。
「オレ、はやとのところ行ってくる!」
「爽太」
部屋を飛び出しそうになったお兄ちゃんを、お母さんは優しく止めた。
「隼人くんは、もういないの」
「なんで…!?
だって、あいつちゃんと学校に……!」
「お兄ちゃん…?」
急に黙り込んだお兄ちゃん。
そしてすぐに、口を開いた。
「あいつ…学校とちゅうで帰った……」
その顔はみるみる歪んでいって、そのまま自分の部屋に駆け込んでいった。