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「え?」
沙柚が何て言ったのかわからず、聞き返そうとした瞬間、沙柚は立ち上がって走っていった。
そして4mくらい進んだ所で振り返って、
「じゃ、あたしは愛する竜二のとこに行くから!
波瑠も楽しんでね〜!」
と言って手を振り、どこかへ行ってしまった。
「…あれ…?」
さっきの話…、結局何だったんだろ…?
「また今度聞けばいっか。
隼人さんまだかな〜…」
「お待たせ、波瑠」
「きゃあ!?」
いつの間にか隣にいた隼人さんに驚き、声が裏返る。
「そんなに叫ばなくたって…。
はい、ジュース」
落ち込んでいるように見えるけど、絶対タイミングを見計らってた。
策士だ策士。
「…ありがとう」
隼人さんが買ってきてくれたのは、ファンタのグレープ。
あたしが一番好きなジュース。
「…波瑠、音楽始まったよ?」
ダンスの曲が始まっても一向に動こうとしないあたしに、隼人さんがわざわざ声をかけてくれる。
「うん、いいの。
もうちょっとこのままがいい」




