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「ふぅん。
君が亮くんね…」
隼人さんから発せられた言葉は、あたしが今までに一度も聞いたことがないくらい低かった。
隼人さん…?
「あんたは誰だって聞いてんだよ」
亮も亮で、口調がいつもよりキツい。
「んー…。
この子の保護者かな?」
はい?保護者?
「なにわけわかんないこと言って…!」
「俺のことは置いといて。
君さ、ちゃんと波瑠のこと見てる?」
「…見てるよ。
だからこうして…」
「いや、見てないね。
じゃなきゃ、気づかないはずないし」
「…何のこと言ってんだよ」
「まだわかんない?
思い返してみろって。
波瑠の目、怯えてただろ」
「……!!」
あたしは、隼人さんの背中に隠れているから、声だけしか聞こえない。
2人は、どんな顔をしてるの…?
「俺は…、俺は彼氏だ…!だから…!」
「本当の彼女を見もしないで、何が彼氏だ、あぁ?
てめーの想いばっか押し付けてんじゃねぇよ、ガキ。
……行くよ、波瑠」
「わぁ!?」
隼人さんにぐわんっと手を引っ張られ、亮がいる場所の反対方向の道を歩き出す。
一瞬、亮のことが気にはなったが、振り返らずにそのまま歩いた。
…ごめんね、亮…。




