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12時になってやっと終わり、制服に着替えて更衣室から戻ると、隼人さんがまだ席に座って待っていた。
ドアの所から隼人さん!と呼ぼうとしたら
「波瑠」
声を掛けられた。
……え?
「りょ…う…?」
そこには、亮が立っていた。
「波瑠、あのさ…。
良かったら文化祭…一緒に回らない?」
亮を見ると、動機がする。
ドキドキっていう、楽しい感じではなくて、ドクンッドクンッという、怖い感じ。
あたしはゆっくり呼吸を整え、口を開く。
「…っ、だめ…。
一緒に回る…ヒトがいるからっ…」
「…高原さん?」
あたしは、ブンブンと首を振る。
「じゃあ誰?彼氏なんだからいいじゃん」
「彼氏じゃないっ…!」
しれっとそんなことを言う亮を、あたしは必死に睨んだ。
「波瑠」
亮が一歩踏み出す。
いやっ…!来ないで……!!
そう思って身構えた瞬間、あたしの目の前を何かが防いだ。
「……あんた誰?」
亮の声でバッと見上げると、あたしの前にいたのは隼人さんだった。
「隼人…さん…?」
隼人さんは、あたしを背にして亮と向かい合っている。
その表情は…見えない。




