3/84
1-2
「はる、おんぶしてやる」
「は!?」
「へ?」
隼人お兄ちゃんの提案に、あたしもお兄ちゃんもびっくりする。
「ほら、はる」
隼人お兄ちゃんは、あたしに背を向けてそう言う。
「……」
あたしは少し迷って、隼人お兄ちゃんの方に足を進める。
「ちょっと待て!」
遠慮がちにその背に乗ろうとすると、お兄ちゃんからストップがかかる。
「おんぶだったらオレだってできるさ!
オレがする!」
お兄ちゃんがそう言ったのを、隼人お兄ちゃんは「はっ」と鼻で笑った。
「お前の力じゃむり。
海まで行けないだろ?」
「……ちっ」
隼人お兄ちゃんは勝ち誇ったような顔をしていた。
その顔の意味に、小さいあたしが気づくわけもなかった。
そして、しばらく歩いていると、隼人お兄ちゃんが小さい声で話しかけてきた。
「なぁ、はる。
次は2人で海行こうな」
「つぎ…?」
「そう、次。
オレたちは、これからもずっといっしょなんだから」
「ずっと…いっしょ…」
嬉しかった。
隼人お兄ちゃんと、ずっと一緒にいられるんだって。
「約束な」
「…うん。
やくそく…!」
この時は、信じて疑わなかった。




