4-10
「隼人さん…!」
「…なに」
「な、なんでひざま…」
「あー、うるさいうるさい」
あたしの言葉を防いだ隼人さんは、あたしにヒョイッと何かを投げる。
それは、取り上げられたスポーツドリンク。
「いっぱい泣いただろ?やる」
…え。
くれるの…?
「ありが…とう…」
「いーえ」
少しだけ沈黙があって、今何時かな…?と考えた頃、隼人さんがよいしょっ、とベンチから腰を上げて、大きく背伸びをし、公園の出口に向かって歩きだした。
「遅いから送るよ」
そう言ってくれた隼人さんを、あたしはウキウキしながら追いかけた。
────…………
家に着くと、玄関から少し離れたところで待ってて、と言われた。
わけがわからず立っていると、隼人さんが我が家のチャイムを鳴らして、家からお母さんが出てきた。
2人の会話はギリギリ聞こえない。
でも雰囲気からして、楽しそうに話してるのがわかる。
…ん?
お母さんが、あたしと隼人さんを見ながらニヤニヤしている。
しかも時々、頬を赤らめている。
キモイ…。
キモイよ母さん…。
あたしが唖然としていると、話が終わったらしい隼人さんがこっちへ来た。
「なに話してたの?」
「ん?…内緒」
あれ…デジャヴ?
「それより、明日は夕方までに会えそうにないから、話があるなら夜に電話して。
それから、今日は早く寝ること。
わかった?」
「……はい」
どうやらあたしは、この人に逆らえないようです。




