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「………」
あたしは、公園の入り口に立って、そのまま動けずにいた。
ベンチには、あたしを待ってくれているヒトがいる。
隼人さん……。
走って…あの胸に飛び込みたい。
でも、どういうわけか足が動かない。
何がそうさせているのか、あたしにもわからない。
あたしはただ、真っ赤になった目で、隼人さんを見つめていた。
「……あ」
隼人さんがあたしに気づいた。
黙ったまま手で、こっちに来いと支持している。
「………」
未だ動けないあたし。
はぁ。と、小さな溜め息が聞こえた気がした。
ゆっくりこちらに歩いてくる隼人さん。
「……波瑠」
近くまで来てくれたと思ったら、あたしの2m先で止まった。
そして…
「おいで」
隼人さんにそう言われた瞬間、プツンと何かが音を立てて切れた気がした。
と同時に、大量に溢れててくる涙。
隼人さんの胸に飛び込んで、大声で泣き叫ぶ。
隼人さんはただ、「よしよし」と言いながら、優しく頭を撫でてくれた。
その手が、とても心地よかった。




