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あたしの家の隣には、とっても優しいお兄ちゃんが
住んでいた。
「はる!そうた!海行こうぜ、海!」
小学1年生の夏、隣の家のお兄ちゃんに誘われる。
あたしの名前は松浦波瑠。
2つ上のお兄ちゃんは爽太。
そして、隣のお兄ちゃんは、お兄ちゃんと同い年の神崎隼人。
「海?今から行くのか?」
「そう」
「お前…、さっきあれだけ走ってまだ歩けるのか…」
「ぜんぜんへいきだね」
「はる…まだ歩けるか?」
お兄ちゃんの言葉に、あたしは首を振る。
「はる…もうあるけない…」
男の子のお兄ちゃんたちとは違って、あたしはもう
くたくただった。
「…ほら、はるがむりだって。
どうすんだ?はやと」
「………」
隼人お兄ちゃんはしばらく考えて、そして思いついたように手をポンと叩いた。