3-2
「おっは。ハマキ」
「ハマキって呼ぶのやめろよ。
煙草吸ってるみたいじゃん」
「えー。だって癖になってるし」
「ったく…」
話しかけてきた男の子は、濱野和輝くん。
沙柚の幼なじみで、2年になって同じクラスになったから、3人でよく話すようになった。
濱野くんと沙柚はめちゃくちゃ仲がいいけど、付き合ってはいない。
沙柚には、立派な彼氏がいるから。
ちなみに沙柚は、ハマノカズキの最初と最後の文字をとって、『ハマキ』って呼んでる。
「あっ、そうだ松浦」
「なに?」
「今週の土曜空いてる?
よかったら…」
「はーるー、聞いて!沙柚ねぇ…」
「沙柚!てめー…!」
「あたしの波瑠に近づこうなんざ100年早いわ!」
あたしは、一応聞いてはいるものの、一切口を挟まない。
毎日恒例のやりとりだから。
「だいたい、波瑠には愛するダーリンがいるっつーの!」
ピクッ
いつも通り受け流そうと思ったのに、つい反応してしまった。
「……波瑠?」
勘のいい沙柚は、すぐ気づく。
「…ハマキ。
席戻んないとチャイム鳴るよ」
「お、おう」
濱野くんが席に着いたのを確認してから、沙柚は優しい声で囁いた。
「放課後ね」
そして沙柚も、自分の席に帰っていった。