第三話『伝染する噂』 (1)
皆さんこんにちは、シャドーです。貴方もお好きですね。まぁ、それでこそ私の仕事になるというものですが。
さて、今回のお話は"うわさ"です。とても興味おりでしょう?人というのはうわさ好きと聞いていますよ。
もちろん、ただのうわさではありません。今回のテーマは"伝染するうわさ"です。うわさの内容はそう、どこにでもありそうな嘘のような話。
さあ、今回の登場人物を紹介しておきましょう。今回の登場人物は五人。男二人に女三人の高校二年生のグループです。
話を持ってきたのは、高橋 明、あーちと皆に呼ばれるトラブルメーカーです。茶色に染めた髪を肩より少し伸ばしたセミロングを持ち、耳にピアスを光らせているのが特徴です。
他の四人はそうですね、話をしながらご紹介していきましょうか。
それでは皆さん。どうぞパンドラの箱をお開け下さい。
「だーかーらー、今度は本当面白い話なんだってば!」
放課後、大きな声で騒ぐのは高橋 明ことあーち。それを呆れ眼で見るのは工藤 両也。彼は短く切りそろえた黒髪に、鋭い眼球を持つ。グループ内ではクール、あーちの歯止め役となっている。
「あーち、それで何度目だよ?お前の話ってさ、毎度根も葉もないくだらないうわさばかりじゃないか。」
「いいじゃない。面白そうだし話してみれば。」
両也の言葉に割って入ったのは仕切りや富田 かずみ(とみた かずみ)。彼女は黒茶の髪を一つに結び、眼鏡かけ、まさにキリっとした雰囲気をかもし出している。ただし、彼女は面白いことには目がなかった。だから、あーちの話にも興味深々というように食いついたのだ。
両也は彼女の言葉に肩を竦めた。かずみがそう言ってしまえば、あーちはもちろんのこと他の二人でさえ反論するわけがなかったから。
一人は大人しい性格の女の子木崎 学。長い黒髪を一つの三つ編みで収め、おっとりとしたたれ目でみんなの様子を見ていた。
もう一人は、一人カードをいじりながら耳をヘッドホンで覆い、音楽を聴いている。長めに髪を伸ばし、多少クリっとした猫のような目を持つ彼は織田 完児。気が乗らないことはとことんしないが、気に入れば熱中するタイプだ。
「じゃあ、話すね!カン、話するから聞いてよね!」
なお、織田完児はカンと呼ばれている。あーちがカンに対して大きな声を更に大きくし、自分の意思を伝えた。カンはしぶしぶというようにヘッドホンを外した。
あーちはカンの行動に満足そうに笑むと、人差し指を前に突き出し話し出した。
「いい?これから話す話は、聞いたら最後。聞いた人にも"ソレ"が起こっちゃう話なの。」
「デマだな。」
「なんっで、両ちゃんはそう決め付けるの!?」
両こと両也の横槍に、あーちは頬を膨らませた。水を差されたのがそうとう嫌だったらしい。しかし、両は冷静に言葉を返した。
「だってさ、あーちは誰かから聞いたんだろ?その話。なら、お前がまず何か起こるんじゃねぇの?」
両の言葉に、なぜかあーちは胸を張り、威張るような体制をとった。あーちの行動に、全員が不思議そうに彼女を見た。
「ふふ、実はね既に起こってるんだな~。これが!」
あーちは自信満々に言った。その台詞に反応を示したのは両ではなくかずみとカン。
「本当!?ね、何が起こったの!?」
「話せよ、面白そうじゃん?」
それに気をよくしたのだろう、あーちはにっこりと笑いながら語り始めた。
これから話す内容は、覚悟して聞かなければならない。それは貴方の身に起こってしまうことなのだから。
この話を聞いた後、貴方は夢を見る。それはこういう話。
舞台は自分の寝ている部屋。貴方は、探さなければならないという衝動に駆られている。しかし、何を探せばいいのかはよくわからない。だけど、見つけないといけない。その感情だけが先行してしまう。だから、貴方は自分の部屋のありとあらゆる場所を探そうとする。
その夢はたぶん途中で途切れ目が覚めるだろう。決して探し物を見つけていなくても。
目が覚めた後に起こることがある。貴方から一番遠い窓、もしくはドアの近くに濡れた小さな子供の足跡がついているだろう。それが何を示すのかはわからない。
ただ、その夢と足跡は寝るたびに見、出るという。
「っていう噂。」
「ということは、あーち、その夢みたの!?」
あーちが内容を話し終えると、それまで黙って真剣に聞いていたかずみが楽しそうに声を上げる。
「うん!今朝見てきたよ。足跡はなかったんだけどねぇ。」
「なーんだ。面白くないでやんの。夢だけかよ。もっとこっわーいの期待してたのによ。」
だが、あーちの返答にカンは興味をそそられなかったらしく、肩を竦めて非難した。そしてまたヘッドホンをして音楽を聞き始めてしまう。
「夢っていうのは、記憶の整理とかするらしいし。気になることが夢に出てくるということもよくあるって聞くぜ?そのせいじゃないの?足跡はなかったんだし、あーちの思い込みなんじゃねぇ?」
「そんなことないよっ!今夜は両ちゃんが見るはめになるんだからね!」
さらに両が追い討ちをかけるように冷静な言葉をぶつけたが、あーちは自信満々に言葉を切り替えしたのである。両は呆れたように息を吐きながら首を横に振った。そして、それから自分は口を出すことをやめると宣言した。何を言っても無駄だと思ったのだろう。
「そう。でも、夢より足跡のが気になるわねぇ。」
「何か条件満たさないといけないのかしら?」
かずみが首をひねっていると、今まで大人しくしていた学が口を開いた。彼女は、両とはまた違った冷静さを持っており、客観的に見ることが多い。だからだろう、自分の見解をぽつりと呟いた。
「そうかもっ。今度調べてみるよ!」
あーちは楽しそうにそういった。それにつられてか、こういう話が好きなのか、かずみも目を輝かせていた。
「ふふ、今夜が楽しみね。明日になったら報告し合いましょう。」
かずみがそういうと、この話はこれで終わった。
けれど結局その日は、噂話でお開きになった。みな自分のうちへと足を運んだのだった。