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XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第2期
12/14

熱と影

廃棄施設の深部は、暗く湿った空気が重く淀んでいた。

コンクリートの壁はひび割れ、ところどころから古い配管が剥き出しになり、

滴る水音だけが静かに響く。


エコーはゼロ・グラビティの残骸機で先頭を進み、

レオンとカイが左右からフォローする形を取っていた。

スタビライザー保管庫まではあと200メートル。

だが、敵の罠が待ち構えていた。


突然、床からEMPパルスが炸裂した。

青白い閃光が広がり、3機の機体が一瞬硬直する。


「くそっ……!」


カイのストーム・ランナーが膝をつき、スラスターが不規則に噴射を始める。

レオンのXRX-03もネメシアの出力が乱れ、ヴォイド・リーパーのプラズマ刃が一瞬消えかかる。


エコーは即座に判断した。

「EMPトラップだ。

俺の機体は重力制御が独立してるから影響が少ない。

レオン、カイをカバーしろ。

俺がサーバーを探して無力化する」


レオンが低く唸る。

「一人で大丈夫か?」


エコーは短く答えた。

「大丈夫だ。

お前たちは……信じてる」


カイが負傷した脚を押さえながら叫ぶ。

「エコーさん……! 無理しないでくださいよ!」


エコーは機体を浮上させ、暗闇の通路を急加速で駆け抜けた。

背後で、レオンはカイを援護しながら、

敵の無人監視ドローンを次々と撃ち落とす。


エコーはサーバールームに到着した。

古いコンソールが並び、赤い警告灯が点滅している。

指先で素早くキーボードを叩き、ハッキングを開始。


(……ブラッド・クロウでは、こんな時、味方を置いて逃げた)


過去の記憶がフラッシュバックする。

崩壊した戦場。

味方の機体が炎上し、通信で「助けてくれ」と叫ぶ声。

エコーは冷静に「生存率が低い」と判断し、撤退を選択した。

その日以来、仲間は彼を「冷たい影」と呼んだ。


コンソールにアクセス完了。

EMPトラップの制御コードを入力し、無力化。


施設全体のトラップが停止し、照明が回復する。


エコーは息を吐き、通信を開いた。

「トラップ無力化。

レオン、カイ、進んでくれ」


レオンの声が返ってきた。

「よくやった、エコー。

今、合流する」


だが、その瞬間――

サーバールームの奥から、重い足音が響いた。


スカベンジャー連合の残党機体。

中量級の実弾特化機が、ガトリングを回しながら現れる。


「スタビライザーは渡さねえ!

お前ら、悪夢ごっこはここまでだ!」


エコーはゼロ・グラビティを旋回させ、ジェネシスをチャージ。

だが、残弾はあと1発。

ここで使えば、スタビライザー確保後の帰還が危うくなる。


(……ここで、俺は)


過去の自分が囁く。

「撤退しろ。生存率を優先しろ」


だが、今のエコーは違う。


彼は通信で叫んだ。

「レオン! カイ!

俺が引きつける!

お前らはスタビライザーを取ってくれ!」


レオンが即答する。

「無茶だ!」


カイの声が震える。

「エコーさん……!」


エコーは機体を敵の正面に突っ込ませた。

ジェネシスを撃たず、ブースター全開で敵の注意を引きつける。

ガトリングの弾幕が機体をかすめ、装甲が火花を散らす。


(……これが、無茶か)


ブラッド・クロウでは決してしなかったこと。

だが今は、仲間を信じられる自分がいた。


レオンとカイが倉庫へ突入する音が聞こえる。

エコーは敵のガトリングをギリギリでかわし、

機体を急旋回させて背後に回り込む。


「終わりだ」


ジェネシスを撃たず、代わりに翼状ブースターで敵の脚部を蹴り飛ばす。

敵機がバランスを崩した瞬間、レオンのヴォイド・リーパーが横から斬りかかり、

機体を両断した。


戦闘終了。


カイがスタビライザーを抱えて駆け寄ってきた。

「エコーさん……! 無事っすか!?」


エコーは機体を着地させ、ハッチを開けた。

顔に血が流れているが、笑っていた。

「無事だ。

……お前たちのおかげだ」


レオンが近づき、エコーの肩を叩いた。

「よくやった。

お前はもう、影だけじゃない」


エコーは静かに頷いた。

「そうだな。

これからは……仲間として、無茶もするよ」


3人はスタビライザーを抱え、施設を後にした。

灰色の空の下、

エコーの胸に、初めての温かさが広がっていた。

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