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悪代官と越後屋

 ここアラジはゴーラから馬車で1日北上した地方にあり、宿場町から発展した地方都市である。今俺たちが来ている所は、先日ゴーラ様によって壊滅された犯罪組織が本拠地としていた建物である。

 悪党の住処にしてはシャレた建物だ。余程羽振りが良かったのだろう。

 その石造りの建物の所有権は現在ゴーラ様にある。この物件の元所有者である犯罪組織は皆殺しにされ、財産は没収したと聞いている。

 俺たちが今ここに来ているのは、この物件を調査、査定し、売り払うか、または所有しゴーラ&リン㈱の支社として、どう使用するかを決めるためだ。

 今売り払うのは、とても厳しいと思う。この町の一等地とは言え、つい先日、ここは惨殺事件があったばかりだ。誰が好き好んで恨み呪いの深そうな物件を買うだろうか。

「当分は俺たちが使うしかないか」

 俺が一人呟く。不良物件を扱うのは、これで2度目だ。まるで事故物件専門不動産屋だ。これだけ需要があるのなら、これも一つの事業として成り立つのじゃね。

「でも社長、ここでは真面(まとも)な商売はできませんよ。客が寄り付きません」

 里美が一般的な意見を言う。

 となると、風俗? 奴隷商? だめだ。ここは一等地だ、周りの商家からゴーラ様に苦情が来る。何で犯罪組織の拠点が一等地にあったのだ。もう少し裏通りあたりに有るべきだろう。そもそも皆殺しにしなくても・・・技術者の家族を守るためには必要か。それに領主様の牢獄には収容するキャパもない。

 売れないし、使えない。使えないから売れない。

 俺は脳内でぶつぶつ文句を言う。

「もう簡単に競売にかけて終わりにしようか」

「まともな応札者がいればいいですね」

 だよね。いないから悩んでいる。

「しょうがない。取敢えずゴーラ&リン㈱のアラジ支社として開業しよう」

 何の商売をするかは、これから決める支店長に丸投げでいいよね。

「美里、ここの初代支店長やってみないか?」

「いやです。私にこの不良物件丸投げするつもりでしょう」

 ばれたか、鋭い奴だ。でも彼女ならできそうだと思うが。

「例の薬剤工場はアラジの郊外にあるだろ。そこの管理はお前達にやってもらうから、ここに拠点を置くのは便利だと思うぞ」

 里美はうつむいて何か考えている。

「解りました。支店長をやります。それで担当役員はどの奥様ですか」

 えっ!どの奥様って、俺まだ誰ともそう言う関係になっていないのに、それにどうすれば関係を発展させる事ができるのかも解らない。後にも前にも進められない。「どうすればいいのだ。誰か教えてくれ」前にも後にも進めない俺の心を誰か救ってくれ。暫し自分の世界に入っていた俺は、里美の不審そうな目を見て我に返る。

「ああ、副社長の事か。まだ決めていない。面白そうだから当分は俺が担当しようと思っている」

「分かりました。よろしくお願いします」

 里美は何故か嬉しそうだ。

「そうと決まれば、この町のリサーチ始めよう。綿密に調べる必要がある」

 里美はテキパキと仁太達に指示を出していく。本当に里美は優秀な隊長なのだ。


 日が変わり朝食の後、簡単なミーティングを開く。

「昨日の今日なので詳しい報告は出来ませんが、この町には壊滅された組織とは別に犯罪組織と言うか、暴力団のような団体があります。名前は結城組と言うそうです」

 里美はすらすら報告する。

 壊滅した組織は本家結城組と言って、結城組から分離した組織であり、結城組の組長の弟が姉に逆らい組を割って作ったのが本家結城組だ。

 分家のくせに本家を名乗るあたり、相当の跳ね返りだったようだ。結局はゴーラ様に殺されてしまったのだから、つまるところ愚か者だったと思う。

「それで結城組の組長は、今どんな様子だ。弟を殺されたのだから我々に敵意を持っているのだろうな」

 曲がりなりにも弟を殺されているのだから面子がどうのこうのと面倒なことになりそうだ。ゴーラ様が放置しているのだから、薬物には関わっていなかったのだろうが、ついでに始末してくれていれば良かったのに。

「そうかも知れませんが、今のところ鳴りを潜めているようです。伏太と玉太に見張らせています」

「良い判断だ。警戒は必要だ。面倒なことになるかもしれないが、近いうちに先方から挨拶に来るだろう」

「どうしてそう思うのですか」

「結城組の組長は今生きている。これはゴーラ様に殺されなかった理由があるからだ。俺ならついでに殺している。そいつは任侠なんだろう。悪い奴だが有益なところもあるのだろう。そして俺たちの親方はゴーラ様だ。今そいつは俺たちの事を必死で調べていると思うよ」

「なるほど、それで社長はどう対応されるのですか。まさか、悪代官と越後屋の関係をお考えでしょうか」

「そんな事は考えていないが、里美、俺の趣味を良く把握しているな」

「はい、ゴブリン村での紙芝居は全て暗記しています。初めて社長にお会いした時、私と同じ匂い、いえ同じ感性を感じました」

「・・・話は少しそれたが俺の方針は、使えるものは、有難く使うだ」

「承知しました。我々にとっていい関係を築けるよう対応します」

 できればお互いにとっていい関係を築きたいが相手しだいだから、まっ良いか。


 3日後、結城組組長本人が部下を二人だけ連れて挨拶に来た。

「お初にお目にかかります。私は結城組のコウと言います。以後お見知りおき下さい」

「私はゴーラ&リンのリン太だ。それで何をしに来たんだ。挨拶にも目的があるだろう」

「リン太様、まずはこちらをお納め下さい」

 コウ組長の部下と思われる男が風呂敷包みを差し出す。

 おお、越後屋の土産か。

 里美の顔から期待があふれている。どうせ山吹色の饅頭を想像しているのだろう。顔が悪代官になっている。

「何だこれは」

「はい、アラジ名産の饅頭でございます」

 風呂敷を解き箱の蓋をあけると、美味しそうな饅頭が並んでいた。山吹色ではない、普通の饅頭だ。美里は少しがっかりしている。

「俺の事をよく調べているな」

「はい、リン太様はこう言うシチュレーションがお好きだと聞きました。実は私も好きですので」

 誰に聞いたのか、カナコあたりだろう。しかし3日間で良く調べたものだ。

「コウ組長に敵意がないのは良く解った。我々とこの町の発展のために協力しようじゃないか。この町は薬物中毒者が多いようだから、その改善が急務だな」

「申し訳ありません。身内がやらかした事です。全面的に協力します」


 結城組の連中は帰って行った。挨拶だけだった。里美とも趣味が合いそうだ。エンターテイメントは世界を繋ぐ架け橋だ。

 美里はもらった饅頭を半分に割ったりして中身を調べている。期待している物は入っていない。がっかりしながらも、口に放り込む。

「美味しい。社長これとっても美味しですよ」

「良かったな。お茶を入れて、みんなだで食べよう」

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