薬物犯罪者
月日が経つのは早いもので学校に通い始めてから3カ月が過ぎようとしている。仁太達は読み書きができるようになった。人語も話せる。身体も一回り大きくなった。既にゴブリンには見えない。
里美については薬学の基礎は習得したらしい。彼女も魅力的な女の子に成長した。もう誰も彼女たちを小汚いガキとは言わないだろう。
「飯さえ食わせれば立派な鬼人に成長するだろう」
ゴブリン村の村長の言葉が思い出される。
しかし、此奴ら成長早すぎないか。良い物、食わせ過ぎたかも。
まあ何だ、これで我が社も人的に充実したのは間違いないようだ。やっと次のステップに移行できる。以前から領主様にお願いしていた薬物関係の犯罪者を貰い受けに行ける。
俺は里美達を引き連れ登城した。登城が初めてである里美達は、幾分緊張した表情で城内の奥へ進む。すると城壁の外側からでは想像もできない、可愛いデザインのお屋敷が見えてくる。何度見ても領主様の お屋敷には見えない。
「社長、ゴーラ様のお屋敷は、とても素敵ですね」
美里が唖然とした表情で言う。
「そうだな。お屋敷もそうだがゴーラ様御本人もとても可愛らしい少女だ。だが中身は両方とも、そうではない。屋敷の地下には数百人の罪人達を収監している監獄が広がり、その者達を対照した研究施設が併設されている。ゴーラ様も見掛けとは違う立派な為政者だ。認識を間違えるなよ」
「解りました」
俺達は気を引き締め屋敷に入る。
「ゴーラ様、ようやく薬剤製造事業に着手できそうです。薬物関係の犯罪者を受け取りに来ました」
「それなら50人程捕まえておいた。好きなだけ持っていけ。いや全部持っていけ」
「そんなに沢山捕まえたのですか」
まるで漁師が魚を取るようだ。定置網でも使ったのかな。
「お前が殺さずに利用しようと言ったからだろ。犯罪者の家族も含めて地下の牢屋に詰め込んでいる早く引き取ってくれ。看守長から苦情が来ている」
「一度に全部は無理です。数回に分けて受け取ります」
「そうか。だが、早めに持って行け」
ゴーラ様から受け取った囚人達のリストによると、簡単な薬物関係の実力試験を実施しており最低限使えそうな者だけ残してあるようだ。問題はその家族も収監されている事だ。
地下に降りて行った俺は、想像した通りの風景を見た。鉄格子が無ければここは難民キャンプだ。子供は駆け回り、赤子に乳をやっている女性もいる。
俺は溜息をつきながらも彼らに大声で話しかける。
「お前達、俺の話を聞け」
ぞろぞろ集まってきた囚人達を前に俺は説明を始める。
「違法薬物を生産販売した者は死罪、その家族は国外追放であり、それが今のお前達である。それが先般、一部法律が改正されている。薬学の高い知識があり、その技術を国のために一生使う者は死罪を免除され、家族も同様に免除される。そうでない者は今まで通りだ。何か質問のある者はいるか」
一人の男が手を上げている。俺は指名する。
「そこの男」
「国のために一生技術を使うと言うのは、この地下牢で薬を作り続けると言う事ですか」
「違う。お前達のもと居た場所で働いてもらう。家族も一緒だ。しかし監視はつく。違反すれば即、死罪と国外追放、もしくは皆殺しだ。悪い条件ではないだろう」
「それでは、無罪と同じじゃないか。本当なのか」
「本当だ。旅行の制限、売上20%の上納等が付くが、これは一般的な事だろう。他に質問のある者はいないな。それでは希望する者は手を上げろ」
一斉に手を上げる。
しかし、何処にでもひねくれ者はいるものである。手を上げていない者が3人いた。なぜ死を選ぶのか理解できない。どうも気になる。それでも俺はその3人を明日死罪にするよう看守に指示した。
「最後に忠告しておく、この供述調書によるとお前達意外に共犯者はいないようだが、これが嘘であった場合、一番惨い事になる。子供から処刑される。一人ずつ最後の一人まで」
「罪のない子供を処刑するのは酷い。間違っている」
また同じ男が抗議してくる。どうやら男は、この集団のリーダーらしい。
「俺も酷いと思う。でも間違ってはいない。今のお前達が万が一共犯者を隠しているとしたら、それはその者から脅されているからだ。家族を皆殺しにするぐらいは言われているだろう。そうするとお前達は釈放されたら、またその者に脅され違法薬物を生産するだろ。それはチャンスをくれたゴーラ様を裏切り、2度も騙すことになる。子供に罪は無いが、そのような親を持った報いだ」
「そんな・・」
なるほど、先の3人はこうなると考えて、自分は死罪を選び家族を国外に逃がそうとしているのだろう。凄い覚悟だ。
「俺達はどうすればいいのだ」
「洗いざらい吐けばいいだけだ。女子供はゴーラ様に守ってもらえば良いじゃないか」
「領主様が犯罪者の家族を守って下さるのですか」
「お前が言ったじゃないか、子供には罪がないとか。罪のない者は庇護すべき国民だ。ゴーラ様の得意とする事だ。それにそう時間はかからないだろう。お前達が洗いざらい吐けば、お前達を脅していた者または組織は直ぐに皆殺しだ。お前達の様に薬物に関する知識も技術も持っていないのだから」
あれから1週間で彼らを脅していた組織は、その家族を含めて皆殺しになった。城に連行されることもなく、その場で暗殺された。お上のやる事は非情なのだ。俺としては仕事の障害が無くなったので良かったと思う。親の罪に巻き込まれて死んでいった者たちの冥福を祈るばかりだ。
50人の囚人たちは全員、以前彼らが活動の拠点としていた場所で合法薬剤を生産することになった。




