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里美軍曹

 リン太が以前通っていた学校には、仁太達9人が通学している。カナコもミサコも今はいないが、オークの3人組はまだ在学している。

「おい、お前達。リン太兄貴の身内か」

 オーク3人組は新人たちを見つけて近寄ってくる。新人を見つけるとマウントを取りに来るのはオークの習性のようだ。

「はい、俺たちはゴーラ&リンの者です。もしかするとブン太さんですか、社長から聞いています。何かあればブン太さんを頼れと言われました。よろしくお願いします」

 隣で聞いていたガン蔵が横から口を出す。

「おう、まかせな。俺の事はガン蔵兄貴と呼べ」

ブン太が(あわ)てる。

「バカ、リン太兄貴に殺されるぞ」

「大丈夫です。ブン太さん達は社長の大切な仲間と聞いています。兄貴と呼ばせてください」

「本当か、嘘じゃないだろうな」

「本当です。嘘を付いたら社長に殺されます」

「それはそうだな。困ったことがあれば、何でも話してくれ力になる」

「ありがとうございます。兄貴」

 ブン太達は「兄貴」と呼ばれ(うれ)()である。特にガン蔵は初めての弟分に有頂天のようだ。

「ぶっひ。お前良い奴だな。今度飯奢ってやるよ」

 上機嫌で席に戻って行くオーク達を見て、仁太はカナコ副社長の言った通りだと思った。


 次の日、社長たちに学校での事を話するいと、みんな嬉しそうに笑っていた。

 近くで様子を見ていた里美だけが少し不満げな顔をしている。仲間外れにされた気持ちになっているのだろう。リン太は里美に声を掛けてやる。

「お前も学校に行きたいのか」

 里美は、人語は勿論、読み書きも完璧なので、学校には行っていない。

「いいえ、私にはその必要がありません」

「今年から、その学校に土木建設科と薬学科が新設されて、それぞれの基礎を教えている。興味があれば行っていいぞ」

「本当ですか。薬学に興味があります。行きます。行かせてください」

「分かった明日にでも手続きしておいてやる。明後日からでも行くがいい」

「やったー。ありがとうございます」

 飛び跳ねて喜ぶ里美を見て、子供だなと13才のリン太は思う。里美は大人びた雰囲気があるが11才だから当然子供だ。「リン太、お前も子供だろ」と言われそうだが、少しだけでも先輩だから、この気持ちは変ではないとしておく。決して下から追い上げてくる後輩たちを過小評価したいわけではない。


 里美以下10名は日中、雑用でこき使われた後、今は1階のレストランで賄い飯と言う名の残飯を大量に消費している。何日も食べさせていない子供のように食らっている。全てを食らいつくすと手分けして洗い物等、後片づけをし、学校に向け出発する。少し前までの俺の生活パターンと粗方同じだ。

 そして今日は里美の初登校日である。里美と仁太たちは別のクラスであるため、教室前の廊下で別れることになる。そこに現れたのがお決まりの3人組。

「仁太達、おはよう。そいつは新入りか」

 オークの習性に従い、またマウントを取りに来ている。懲りる事を知らない3人組である。

「あっ、ガン蔵兄貴、おはようございます。俺達のリーダーの里美です」

「ガン蔵?ああ社長の仲間のオークか。よろしく」

 里美はガン蔵に挨拶したが、態度はそっけない。

 そんな里美に対してガン蔵は違和感を抱いた。ううん・・何かリン太兄貴と同じ雰囲気がする。ガン蔵は少し気持ちが引けたが、気を取り直して強く出る。

「仁太、あいつ新米のくせに、態度がでかいな」

「すみません。ああ見えて彼女は強いし頭が切れます。それで自分より弱い奴には頭を下げないのです」

「何、俺があいつより弱いとでも言うのか」

「すみません。その通りです。でも気にしないでください。弱くても兄貴は、兄貴ですから」

「・・・もしかして、俺、お前らより弱かったりする?・・・君たち、リン太兄貴と同じように指からゴーと炎を出したりするの」

「まあ、似た様なものです」

「仁太君、これからは僕のこと兄貴でなく、ガン蔵君と呼んで欲しいな」

「・・そうですか。分かりました」

 一連のやり取りを見ていた里美は「ふん」と鼻を鳴らして薬学科の教室に入って行った。

「あ~あ、これで噂に聞く焼肉大王の奢りは無くなった」

 仁太はボヤキながら教室に入った。

 次の日、社長たちに、この事を話すと、カナコ副社長が腹を抱えて笑っていた。カナコ副社長は人の不幸が大好物なのだ。

 

 今日もいつもと変わらない。教室では1時限目が終わり、休憩時間である。仁太たちの教室に美里が入ってくる。

「仁太、他の者を集めろ」

 たまに里美は仁太達を集めて、訓示を垂れる。

 横一列に並んだ仁太達9人を前にして里美はいつものセリフを言う。

「お前達はクズだ。だが返事のできるクズはいいクズだ。分かったか」

「「はい」」

 最近里美はこのセリフが大好きだ。この町に来た時に社長が言ったセリフだ。軍隊物のお芝居を真似している。

 こんなお芝居に付き合わされているのは腹立たしいが、里美には逆らえない。小さい時から里美は俺達のリーダーだ。今も変わらない。頼もしいリーダーである。でも面倒臭いリーダーだ。早くこの有難い訓示終わらないかな。他の生徒達も珍しがって見ている。恥ずかしい。

「おい、仁太聞いているか」

「はい、聞いております。里美軍曹殿」

「ふむ。なかなか良いノリだ。仁太上等兵」

 おっ!昇格した。この前まで仁太2等兵だったのに、オベンチャラ一つで2階級特進だ。意外とこの遊び楽しいかも。

 周りの者たちは、この光景を見てクスクス笑っている。この遊びが学校中に流行るのに時間はかからなかった。

 里美たちの学園生活は緩やかな雰囲気の中、過ぎていく。

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