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ゴブリン村の正体

 カナコ達の誘拐事件があってから3カ月がすぎ、これと言った事件も起こらず平穏な日々が続いている。

 事業は、どの部門も順調に進んでいる。大学事業を除けば全て利益がでている。大学事業は、最初から直ぐに黒字化させるつもりは無いから、計画通りである。

 計画?今までに計画と呼べる物はあっただろうか。領主様に適当な事を言ったのが災いして、会社を作ることになり、運よく拾ったニナや、押し付けられたゼノン達を社員にした。

また運よく拾ったロランに運送業を立ち上げさせた。全てが、利益を生んでいる。

そして、何故か、妻を3人娶ることになった。初心とは随分かけ離れた状況になっているが、可愛い女の子とイチャイチャしたいと言う目標は、達成まで目前に来ていると思う。全て計画通りだと言いたいが、本当は全く違う。

 これは、所謂(いわゆる)「行き当たりばったり」と言う物だ。多少は努力したが、大方は口先と運だけで生き残ってきたのだ。これが計画通りと言うのなら、端から見れば俺は預言者だな。次からは綿密な計画を立てて事業を運営していこうと思う。

でも無理だとも思う。

 また解らない事もある。周りの者が、俺や妹のヒロミの事を鬼人と呼んでいる。最近ではカナコやミサコも俺をゴブリンでなく鬼人と言う。ミサコは俺の出身地であるゴブリン村の住人は全て鬼人だと考えているらしい。

 それで、ゴブリン村の村長に手紙を送って聞いてみる事にした。

 以前、村長からの情報の御蔭でヒロミを助ける事ができたお礼もあって、ラーベ市特産の魚の干物も一緒に送っておいた。

 直ぐに返事が来た。干物が足らないと書いてある。それだけだった。

 俺は魚の干物と干し肉、酒を大量に買い付け村長に送った。


 一月も過ぎたころ、ゴブリン村から10匹のゴブリンのガキがやって来た。

 そのうちの一人が村長からの手紙を持っていた。


リン太元気そうだな。それに随分羽振りが良さそうじゃないか。羨ましい。わしの所は相変わらず貧乏のお手本を継続中だ。

問い合わせの件だが、この村の名前はゴブリン村だが、住人は全員、鬼人で合っている。お前が考えた通り栄養失調による発育不良だ。

そう言うことで、そっちに送った10匹のガキの面倒をみてやってくれ。飯さえ食わせれば鬼人に育つだろう。


追伸  酒と干物、美味かった。また送ってくれ。

                                 」


何がそう言う事だ。確かに我社は人手が足らない。10人の増員は助かる。

 しかし、直ぐに使えそうな奴は、一人もいないじゃないか。10人が10人全て痩せ細ったゴブリン。なりは袖なしのチョッキに腰にぼろ布を巻いているだけ、その上臭い。

小汚いガキとはこういう者たちを言う。言葉の見本だ。

彼らは、俺の前に横一列に並んでいる。昔ゴブリン村で見た紙芝居、新兵を教育する軍隊によく似ている。確かその紙芝居では、新兵たちを前にした鬼軍曹のセリフが、こうだった。

「お前たちは、クズだ。だが返事のできる奴は、良いクズだ。分ったか!」

「「・・・・」」

 つい声に出して言ってしまったが、乗りの悪い奴らだ。軍隊物の紙芝居を見たことがないのか。少し恥ずかしくなってきた。

「・・・良いクズには飯を食わしてやる」

「「はい」」

 ・・・適応能力はあるようだ。

「よし。だが飯を食うには体を綺麗しなければならない。今から川に行って体と服を洗ってこい」

「「はい」」

 誰かの号令で、「右向け右」をすると、縦一列に並んで、街はずれの川へ行進していった。

 その間にニナに彼ら用の古着を買ってくるようにお願いするとともに、1階のレストランに彼ら用の食事を注文した。

 程なくして、彼らが帰ってきた。近づいても匂わない位にはなっていた。

「よし。飯を食おう」

 頼んでいた料理が並ぶテーブルに着くと直ぐに食事が始まった。そして直ぐに終わった。本当にあっと言う間だった。

「「御馳走様でした」」

「落ち着いたところで、お前達から聞きたいことがある。村長から何を言われてここまで来たのだ」

「はい。村長からはこの町に来ればリン太さんの所で働かせてくれる。そしてお腹いっぱい飯が食べれると聞いて来ました」

「その他には?」

「それだけです。・・・嘘だったのですか?」

「頑張って働けば、腹いっぱいの飯は保証しよう」

「「おー」」

「しかし、嘘を言ったり、盗みをしたら死んでもらう。分かったか」

「「・・・」」

「返事がないな。ゴブリン村に帰るか?」

「嘘を付いただけで死刑は酷くありませんか」

「ここゴーラの刑罰の最小が棒叩きの刑だ。トロールやオーガ用の棒叩きだからお前達がそれを受けると1回の棒叩きで背骨を叩き折られ死亡する。酷いだろうが、それが現実だ。鞭打ちも同じで1回で胴体が二つに別れる」

 彼らはこそこそと話し合い始めた。

 やがて一番小さいガキが代表して俺に向かい合う。

「承知しました。ここで働きたいです。よろしくお願いします」

「ああ分った。これから俺のことは社長と呼べ。そろそろお前たちの服が届くころだ。3階の応接室に行って服を着替えて来い」


応接室からニナが事務室に入ってきて俺に小声で告げる。

「今着替えている子達、5人は女の子だったわ。私てっきり男の子だけだと思ったので男の子用の服しか買っていないのよ。今から買い足してくるね」

「本当か!俺も野郎とばかり思っていた。悪いな頼む」

 応接室で着替え終わったガキどもが事務室に入ってきた。改めてじっくりと見ると確かに女の子が5人いた。これは一人一人面接する必要がある。一括りで考えていたが間違いだった。

「これから一人ずつ面接する。・・お前からだ、残りは応接室で待機」

 リーダーらしい一番小さい奴を俺の前に座らせて、残りを退室させた。

「お前は女か、名前はあるのか?」

「女です。名前はありません」

「俺が名前を付けてやろう。里美でどうだ」

「・・・・ありがとうございます」

多分気に入ってないのだろうな。俺もそうだったから解る。

「・・・自己アピールする事とか希望する事があるのか?」

「私は読み書きができます。11才です。それから希望ですが、私たちの住む所はあるのでしょうか、例えば寮とか。できれば男の子と女の子は別の部屋にしてほしいです」

「お前達は今日突然来たからな用意はしていない。だが見ての通り部屋は余っている。男と女にそれぞれに1つ別の部屋を寮として使うといい。ベッドは近日中に、モーフは直ぐに用意させよう」

「ありがとうございます。それと社長が最初に仰っていた、良いクズの話、私、紙芝居で見ました。とっさには思い出せなかったけど、あの場面はそっくりでしたね」

「そうだろ。俺もつい口に出してしまった。ちょっと恥ずかしい思いをした。君は見どころがある。頑張ってくれ。それでは次の人を呼んでくれ。順番はまかせる」

 次々と面接を実施し、それぞれに名前を付けていった。

女の子は里美に引き続き、儀子、礼子、智子、信子にした。以前見た紙芝居の剣士たちから引用した。

男の子は仁太、孝太、悌太、伏太、玉太と名付けた。理由は女の子と同じである。

里美なら直ぐにこの名付けの理由に気付くだろう。気に入ってくれればいいと思う。

俺の名前よりましだし、少なくとも俺はカッコいいと思う。


一人一人話し終えて感じたことは、彼らは見た目より賢いと言う事だ。これなら夜間学校に通わせると直ぐに戦力として使えそうだ。

しかし、こいつら確実に俺より強く、そして賢くなるだろうな。近い将来、こいつらに俺の物を全て奪われるかもしれないな。

う~ん。俺がこんな気持ちになるなんて考えもしなかった。

俺は善良なキャラじゃないから、どちらかと言えば小狡い子悪党キャラだから、こんな心配をするのだろう。

そうならないよう、俺自身が努力しなければならない。何かまた、ハードルが上がったような気がする。

取り敢えず、こいつらを鍛え上げて、第2の目的である、闇製薬の摘発と製薬工場支部の設立に着手しなければならない。


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