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社員は、ほぼ犯罪者

 元男爵邸だった無駄に広い屋敷に帰ってき。カナコの両親たちは屋敷を見上げ驚いている。

 俺たちは、夕食途中だったため改めて食事をしながら話をすることにした。

 怪我をした官吏たちの慰謝料等をリン太が支払った事や、カナコ達の嘆願により、カナコの両親にミサコの兄、それに実行犯のオークの傭兵達の刑の執行が猶予された事と、それに伴う注意点、例えば許可なく外国への旅行の禁止、再度犯罪を犯すと、それが軽微な犯罪でも刑罰の執行猶予が中止され、即刑が執行される事などを説明した。

 それから俺とニナ、カナコ、ミサコの結婚はまだ完全には成立されておらず、今後正式に段階を経て結婚式を行う事などを話した。

 また、あくまでこの屋敷は社員寮であり、当然個人のプライバシーは守られている事も付け加え説明しておいた。

 食後のお茶はそれぞれの部屋に両親や兄を連れて行き住んでいる部屋を見せるようだ。

「カナコ、いい男を見つけたね。絶対に逃がすのじゃないよ。なんなら既成事実を作ってしまいな。世間的には結婚している事になっているのだから」

 部屋に入った途端、カナコの母、ネコ屋の社長は目を猫が獲物を狙うような目をして言い放つ。

「やめてよ、お母さん。釈放されたばかりなのに、もう元に戻っている。それにリン太はビビりゴブリンだから私の事好きなのに手も握ってこないのよ」

「カナコ、リン太さんはどこから見ても鬼人だ。なぜゴブリンと言うのだね?」

「えっ、最初からゴブリンだよ。ここ最近成長して逞しくなっただけよ」

「それは鬼人の子供の成長期だよ」

「リン太本人が言ってるのよ。俺はゴブリンだと」

「それはリン太さんが間違えている。間違いなくリン太さんは鬼人だ」


 ミサコは兄を自分の部屋に案内した。

「凄い部屋じゃないか。スイートルームという部屋だな。お前、あいつに大切にされているのだな。それにあいつゴブリンでなく、鬼人じゃないか」

「そうなの?初めて会った時は間違いなくゴブリンだった。今は逞しくなってゴブリンらしくないけど。ゴブリンは成長すると鬼人になるのかな」

「アホ、そんな訳あるか。リン太は元から鬼人だろう」

「あっ、それ知ってる。小さいときお母さんが読んでくれた醜いアヒルの子だね。ゴブリン子供の中で一人だけ鬼人のリン太が混じっていたのね。でもリン太の妹ヒロミも今は成長してゴブリンらしくないよ。」

「多分、本当はゴブリン村の全員が鬼人で、体が小さいのは食べ物が少ないから栄養失調による発育不良じゃないかな」

ミサコは兄を心配そうに見る。

「逮捕されるとき頭殴られた?賢くなっている。兄貴じゃないみたい」

「俺はこれくらいの常識と推理力は持っている。お前の基準で人を見るな」

「じゃ何で鬼人しかいないのに鬼人村でなくてゴブリン村なのよ」

「ゴブリンは小さな鬼のことだろ。鬼人の小さな村が小さな鬼人の村になって小鬼の村と呼ばれるようになったとか。知らんけど」

「なるほど。でもどうでもいいかも、私はリン太がゴブリンでも鬼人でもかまわない」

「お前変わったな。ゴブリンはゴキブリと同じくらい嫌いだったじゃないか」

「今でもゴブリンはゴキブリと同じよ。リン太が特別なだけ」

「ふーん。お前がベタ惚れなのが良く解ったよ。何んかどうでも良くなった。それでリン太はお前の事どう思っているか知っているのか?」

「ふふふ、リン太は私の事、一目惚れの上、ベタ惚れ間違いなし」

「それにしては、カナコもそうだし、ニナという子もリン太の嫁だと聞いているが」

「ぐっ。だってしょうがないでしょ。カナコは親友でニナもいい子だし、彼女らがリン太のこと好きになるのも解かる。リン太が彼女らを大切に思う気持ちも知っている」

「前途多難だな。ボチボチ頑張りな。俺そろそろ帰る」


 カナコの両親とミサコの兄は何やら話しながら帰って行った。


 翌朝、会社に襲撃犯のオーク達が出向いて来た。

「リン太さん、この度は申し訳ありませんでした。その上助けて下さりありがとうございました」

 オーク達は玄関で土下座をしている。

「主犯を許して、従犯を許さないわけにはいかないからな。謝罪は受けっとった。帰っていいよ」

 オーク達は動かない。土下座のままだ。

「玄関で土下座を続けられると迷惑だ。帰ってくれ」

「リン太社長、お願いがあります。俺達をそばに置いてくれ。ネコ屋の社長からお嬢さん達を護衛するように命令された。邪魔はしない。護衛以外にも何でもするからお願いします」

「だから玄関で土下座しているのが邪魔だと言っているだろ。ネコ屋の社長には俺から言っておく。だから帰れ」

 オーク達はすごすごと玄関から出て行ったが、帰らずに屋敷の隅で正座している。邪魔にはならないが、俺がやらしているみたいで世間体が悪い。嫌がらせか。

「カナコついて来てくれ。ネコ屋に行く」

「うん。彼らどうするの。此処で使ってやれない?」

「従業員は不足しているから、ここで働いてもらうのは問題ないのだけど。彼らの雇い主はネコ屋だろ。社長の俺の命令よりネコ屋の社長の命令を優先されるのが困る」

「そうね。彼らは子供の頃から私の母に可愛がられて育ったから、ネコ屋の社長の命令は絶対だろうね」

「やっぱり、そうか。お前の母親は結構強引な感じだから断ったらどうなるのだろう」

「心配いらないよ。お母さんから彼らにリン太社長に絶対服従、これからは母の命令よりリン太社長の命令を優先させるよう言ってもらえればいいよ」

「それは彼らの心に負担が大きいから、俺にでなく、お前に絶対服従としたほうがいい。そしてお前から彼らに俺に従えと命令してくれ」

「何か面倒くさいけど分った」


 ネコ屋に着くと早速社長室に案内された。

「お母さん、おはようございます」

「おはようございます、リン太さん。お母さんと呼んでくれて嬉しいわ。今朝うちのオーク達を行かせたのだけど気に入ってくれたかしら」

「その事で少しお話があります」

 カナコの母ネコ屋の社長に、ここに来る道すがらカナコと話した内容を伝え、お願いした。

「そうだったわね。彼らは私の言葉を最優先させるから問題だわ。リン太さんあなたの提案を受け入れるわ。でも彼らの給料はこちらで払わせてくださいね。そうしないと今度の事で、彼らは私から捨てられたと思うかもしれないから」

「分かりました。よろしくお願いします。お母さん」

「まあ!リン太さんて、お上手。カナコ、早く孫の顔が見たいわ」


 会社に帰ってきたらオーク達はまだ正座している。どんな命令を受けて来ているのやら。

「お前たちは、此処で働いてもらう事にした。一度ネコ屋に帰り社長に報告して来い。社長から説明があるだろう」

「「はい、承知しました。よろしくお願いします」」

 やっと帰ってくれた。なぜか、最近こう言うパターンが増えて来たと思う。ゴーラ様が罰して俺が救い、俺の手下になる。

 この会社の社員は半数以上が元犯罪かその関係者である。指定暴力団又は更生施設と呼ばれても納得しそうだ。出資者が領主様だから、どちらかと言うと後者になる。

だが、何よりこの組織のトップは鬼のような男ではなく。種族的には本物の鬼である俺なのだ。知らない者が聞いたら、鬼が社長をしている会社なんて、そっち系だと思うだろう。

段々と、ミサコが好きな任侠の世界に近づいている。このままでは会社のイメージが悪すぎる。

 でもやっている事は、不動産、運送業、土地開発の元請等、どれを取っても「何とか組」の名前が良く似合う。

 まっいいか!ミサコが喜んでいるから。俺は嫁さん第一主義なのだ。


 ネコ屋から帰ってきたオーク達についてはカナコに丸投げした。

 オーク達はカナコの事を「お嬢」と呼んで懐いている。カナコは「副社長」と呼べと言っているが直りそうもない。ミサコについては「姉御」と呼ばれている。カナコがそう呼ばせているらしい。勿論ミサコは上機嫌だ。


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