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誘拐犯の目的

 俺達は、夕食を囲んで家族会議。議題は勿論カナコとミサコの誘拐事件についてだ。

 被害者であるカナコとミサコに状況を確認すると、大体思っていた通りだった。

 得意先の御用聞きの営業を終えて、店から出たところを5人のオークに腕を取られて馬車に連れ込まれた。馬車は普通の速度で街中を走り、例の倉庫の前で止まった。その移動中も倉庫でも、乱暴はされていない。思いに反して丁寧な扱いだったらしい。

 乗ってきた馬車は走り去り、残ったオーク達は尾行されていないか警戒していたようだ。

倉庫の中を通り抜け、裏口から出ると、別の馬車が待機していた。その馬車へ乗せられそうになった時、ゴーラ様の部下達が来て救い出された。

 当たり前だが、これは100%誘拐だ。何が目的かは解らないが、被害者から見ても第3者から見ても誘拐である。逮捕されたオークの一人は「これは救出だ」と叫んでいたが、カナコ達の同意のないこの行為は誘拐である。

 しかし、犯人達が本気で救出だと思っていたのなら、依頼主がいて、その者は誰かから彼女たちを救出そうとした事になる。

 誰かから?もしかして、俺から?ミサコの両親は俺たちが同居するのを認めている。カナコの家族はどうだろう。

「なあ、救出される事に心当たりはないか?」

 カナコとミサコはお互いに見詰め合って考えるが、直ぐに何かを思い出したようだ。

「あっ!ミサコの兄貴だ」

 ミサコも激しく頷く。

「ミサコのお兄さんは極度のシスコンなのよ。彼ならやりかねない」

「ならカナコも一緒に誘拐されたのはどうしてだ」

「・・・」

少し間があってから、ミサコは何かを思い出したようだ。

「カナコ、口を縫われた、あの人、ネコ屋に雇われていた傭兵じゃない。会長や社長の護衛にいたじゃない」

 カナコも思い出したようだ。

「そうだ、あいつら内の会社に護衛で雇われた傭兵達だ」

「ならカナコの両親もこの件に絡んでいるのじゃない」

「・・・・」

「内容をまとめると、ミサコの兄と、カナコの両親がお前たちを、俺から救出するために、子飼いの傭兵を使ってこの事件を起こした。そう言う事なのか?カナコの両親はネコ屋の重役なのか」

「リン太知らないの。カナコはネコ屋の社長の末の娘だよ」

「えー、じゃ何で社長令嬢が職業訓練所のような学校に通っているのだよ。普通、家庭教師を雇うだろ」

「私は一人暮らしがしたかったの!それにミサコと一緒に学校行くのが楽しいもん」

「何がもんだ。これは相当やばいぞ」

「何がやばいのよ」

 自分の肉親が犯罪に関わっているのに呑気なものだ。

「この事件は誘拐事件として取り扱われている。そして主犯はミサコの兄とカナコの両親だと言う事だ。逮捕され処罰されるぞ」

「「えー」」

「直ぐに登城する。ゴーラ様は行動が早いから、彼らは既に逮捕されていると思う」


 登城した俺達は、領主様への面会を求めた。

「やはり来たか。ミサコの兄とカナコの両親は今取り調べ中だ。大体の罪は認めているから、今は量刑を思案中だ。だが、誘拐罪だからな、棒叩き50回以上は確実だ。何か嘆願でもあるのか」

「ゴーラ様、この件は私どもと彼らの行き違いが原因で起きたものです。どうか許してあげてください」

「「お願いします」」

「お前たちの気持ちは分かった。だが、無罪にすることはできない。親から子を奪う誘拐と同様、夫から妻を奪う誘拐も同じ罪だ。また多くの者がこの件に関わり官吏たちにも怪我人が出ている。」

「承知しております。怪我人に対しては私から治療費は勿論、慰謝料を支払います」

 しばらく考えていたゴーラ様は、仕方ないなという表情になる。

「分かった量刑は全員、棒叩き50回。執行についてはお前に任せる。これでいいな」

「「ありがとうございます」」


 俺達は、囚人となったカナコの親たちを受け取るため、地下牢に案内された。

 刑罰の内容については既に告知されているようだ。みんな悲痛な表情で力なく項垂れている。

 カナコは牢獄の格子ににじり寄り話しかける。

「お父さん、どうしてこんな事をしたの」

「馬鹿な事をしたと思っている。今更後悔しても遅いのも分かっている。ゴブリンがお前をだまして働かせていると聞いて動揺したのだよ。できれば生きている間にお前の大切な旦那さんに会いたい。」

「お父さん、お母さん、この人が私の夫、リン太よ」

俺は頭を下げて挨拶をした。

「お父さんお母さん御挨拶が大変遅くなり申し訳ありません。リン太です。」

「こちらこそ申し訳ない。でもリン太さんはゴブリンと聞いていましたが鬼人ですね。噂を信じた私どもは愚かでした。どうか娘をよろしくお願いします」

 

 ミサコは牢屋の隅で小さくなっている兄に声を掛ける。

「兄さん、何て馬鹿な事をしたの」

「ごめん。ミサコが不幸になると思って、守ってやるつもりで、でもミサコは不幸でも何でも無かった。俺はもうミサコを守ってやれない。リン太さんごめんな、俺から言えた義理ではないが、ミサコの事よろしく頼む」

冷たい石畳に頭を擦りつけてお願いするミサコの兄に近寄り声を掛ける。

「お兄さん、どうぞ顔を上げてください」

 しかし、ミサコの兄は顔を上げない。

「こんな所では話もしづらいので私の家に移動しましょう」

「・・・・」

 俺は衛兵に彼らを牢屋からだすように指示する。

「「えっ」」

 囚人を代表してカナコの父が聞いてくる。

「あのう、どういう事でしょう」

「取り敢えず移動しましょう」


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