海鮮丼が食べたい
「ロラン、会社には慣れたかい」
荷馬車を手入れしているロランに声を掛ける。そう我が社に荷馬車が届いたのだ。
新車だ。カッコいい。今までレンタルだったが念願の愛車だ。貨物用車両だが、新車はいいね。馬も2頭立てだ。うっとりとしていると、ロランは手を休めて俺に向き合う。
「会社の事は大体理解した。社長は俺に何を期待している?」
ロランは堅いな。ボチボチやればいいのに。
「今は決まったものはないな。ロランがやりたいことはあるのかい。ラーベの町では漁師をしていただろ」
ラーベの町には少ししか居られなかったが海産物が豊富だった。そこで食べた海鮮丼は美味かった。
「一週間程度の見習いだけど楽しかった。仲間で網を引くのは凄く楽しい」
「ふーん。うちの会社は漁業そのものには手を出さないが、それに関連して海産物の買い付けや、運送業は今後やりたいと思っている。ラーベの海産物をゴーラでもっと食べたいからな」
海鮮丼をまた食べたい。
「社長、この荷馬車はそのためですか。何に使うのかなと思っていました」
俺と嫁たちの買い物用に買ったのだが、大は小を兼ねると思って大型の2頭立てにしたのは正解だった。
「その通りだ。これならラーベまで半日で行けるだろう」
「社長、その仕事、俺にやれせてくれ」
悪くない、平日は運送業に使って土日で家族の買い物に使う。
「ロラン、その仕事とは、どの様な事を考えている」
「たぶん、社長と同じです。ゴーラ市にはサヌキ屋を初めウズカなど、魚介類の料理を出す店はそれなりにありますが、その全てが干物、味噌漬けなど加工された物です。鮮魚がありません。そこでこの馬車を使って鮮魚を仕入れて卸すことを考えています」
やる気に満ちた顔をしている。お前も海鮮丼が食べたいのだな。
「その通りだ。ゴーラ市での卸先を探すのは副社長のだれかにやらせよう。ラーベでの買い付けは誰にやらせようか」
「それなら俺の嫁たち、いやラーベに残してきたメイドたちができると思います」
「ラーベに残してきたメイド達はお前の嫁なのか?みんな可愛い子だったな」
「すみません。その通りです。一人は俺の子を身ごもっています」
えーー。
「何、まじか。お前、ここに連れてこられるとき死ぬつもりだっただろ。今お前の嫁たちはどんな思いをしている。今から直ぐにラーベに行け。それからその彼女たちにも俺の会社で雇う。そのつもりで話してこい。直ぐ出発しろ」
何を言われたのか直ぐには解らなかった様だが、俺の目を見て理解したようだ。涙を隠すように俯く。
「社長、ありがとうございます。直ぐに出発します」
「おう。慌てるな、気を付けていけ。1週間ほど時間をやる、家族で仕事の段取り付けてこい」
「ありがとうございます。失礼します」
ロランはそのまま馬車に乗りラーベに向かった。慌てるなと言ったのに、余程嫁の事が心配だったのだろう。いい加減な野郎のくせに、今まで独りで耐えていたのだろう。カッコ付けやがって。帰ってきたら、嫁の口説き方教え貰おう。
この事業は副社長の一人カナコに担当させようかな。ロランはその補佐に付ける。
でもロランは見かけもカッコいいからカナコの事が少し心配・・・ これは焼餅だな。
やはり俺はカナコに心底惚れているのは間違いない。
ふと、カナコの顔を思い浮かべると、なぜか負けたような気がした。あいつ俺のこと本当に好きなのかな。
俺は事務所に入りカナコを探す。
「カナコ、居るか?」
「はーい」
彼女は給湯室からお茶とケーキを持って出てきた。
「カナコ、それは俺の分も有るのか?」
「全員の分があるよ。勿論、貴方のもね」
「そうだった。ミーティングの時間だ。」
最近になった始めた朝のミーティング、主要な職員を集めて現状と予定を確認する簡単な会議だ。
「え~。突然ですが皆さんに連絡する事があります。驚かないで聞いて下さい」
ロランに嫁がいたこと、運送業を始める事など、そして今、ロランがラーベに向かっている事を話した。
「リン太もしかして、あのメイドさんたちがロランの奥さん、今ごろ気が付いたの。そっちに驚いた。」
ニナが信じられないと言う様な顔をしている。
「全然気か付かなかった」
「は~、そうね。リン太はそうだね。ロランは許せないけど、メイドさんたちは可哀そうと悩んでいたのは私だけ。結局ロランもメイドさんたちも助けてあげるのはリン太だね。私もリン太に助けられた一人だから」
最初は海鮮丼が食べたいだけだったが、俺の奥さんたちと同じような3人の嫁さんだと思うと、彼女たちに悲しい思いをさせたくないと感じる。恥ずかしいから言わないけど。
「まあ、よく解らないが、この運送事業の担当はカナコにする。ミサコは手伝ってやれ」
「分かった。私とミサコでこの町の旅館、レストラン、食品店などへ海産物の売り込み営業すればいいんだね。でも値段が解らない」
カナコは理解が早い。
「値段は決めなくてもいい。魚の種類と必要量さえ分かれば、値段は卸すとき決めようと言っとけ。仕入れに諸経費と10%の利益を乗せるつもりだと」
「鮮魚だよ。買いたたかれるよ」
「そうだな、その時は売らない。そいつらには今後も売らない。そう言っとけ。原価で狢BANKの寮や、社宅、直営のレストランで使う」
「直営のレストランて、今、改装中のこの館のレストランの事?」
「ああ、それと商業区に一軒サヌキ屋の倍くらいの家があって、それを改装して海鮮専門のレストラン&ホテルにする。それを担当するのはミサコだ。カナコは手伝ってやれ」
「解った。私がレストラン、カナコが運送業を担当して、お互いに協力する」
これで主要職員全員の担当が決まったことになる。俺が大学、ニナは事務所運営と俺の秘書、ゼノンとプラトンは不動産業と造園業、ミサコがレストランと宿泊、カナコが海産物商と運送業で、そしてランスは、その全ての渉外補佐と役所担当である。




