伯爵家 御取り潰しの訳
「ニナの母親の件だが、行先を突き止めた。私の孫の孫の孫の・・まあ私の血族の一人ロランというアホが全てを放棄して逃げた。その時に彼女を含め数人のメイドを連れて行っている。彼は吸血鬼ではないので情熱的なところがあるのかもしれないな」
「そのロランは、もしかして今私共が開発中の元ブレーメン伯爵家の方ですか」
「その通りだ。ロランは伯爵家の一人息子だ」
「ブレーメン伯爵家の取り潰しの理由について聞いてもよろしいですか」
「領地に反乱があった。そして鎮圧に失敗。この混乱に乗じて隣国メシヤ国は同胞民族の保護を理由に侵略してきた。今は私の私兵を投入して硬直状態だが、もう直ぐ解決する見通しだ」
ゴーラ様は紅茶をすすりながら、ため息をつく。
「ブレーメン伯爵家は、もう何代も前に吸血鬼の血が途絶えており、イヌ族が当主を務めていた。伯爵はこの不始末の責任を取り隠居。そして一人息子のロランが当主になる予定だったが、そんな事は真平ごめんだと言って逃げた。それが理由でブレーメン伯爵家は取り潰し」
「ろくな奴ではありませんね」
「私の孫の孫の孫の・・私の血族だ」
「失礼しました」
「冗談だ。全く、ろくな奴ではない」
俺は安堵の息を吐き、話を続ける。
「何が原因で、反乱が起きたのですか」
「全て、隣国メシヤ国の謀だ。スパイを使って領内で反乱を扇動した。メシヤ国は人族の国だ。対してプレーメン伯爵領は多民族だから人族もいる。そいつらを利用しての計画的な侵略だ」
「それでは何故、魔王国軍が出兵されずにゴーラ様の私兵で対処しているのですか」
「ゴーラ地方は、私の直轄領とブレーメン伯爵領等を含め、完全自治が魔王から認められている。爵位こそ魔王から貰っているが、ブレーメン伯爵は私の子飼いの貴族だ。だから私が面倒をみる」
「先ほど、もう直ぐ解決する見込みと言うのはどうしてですか」
「それは、メシヤ国の国王と王太子が、そろって病死した。脳卒中とか心筋梗塞らしい。日頃の不摂生が原因だろう」
100%ゴーラ様による暗殺だな。
多分メシヤ国は何年もかけてこの計画を実行したのだろう。決起して後少しで成功と思ったところで王と王太子の突然死、誰も理解できないであろう。
「それで戦後処理はどう成されるおつもりですか」
「メシヤ国の一部割譲だな。か、賠償金。それと敵の指揮官を捕虜にしているのだが、どうやらその者は王位継承権第1位の王弟だそうだ。期待できると思わないか、この交渉どこまで割譲させることができるか。ところで話は戻るがニナの母親はお前が迎えに行った方がいいだろう。なんせ義理の母なのだから」
突然の話題変更に戸惑い言葉が出ない。
俺は城からの帰り道とぼとぼと歩いて会社に向かう。すっかり暗くなった中、会社に近づくと事務室の窓から明かりがもれている。
「ただいま」
小さな声で中に入ると、ニナがカナコとミサコ相手に講義中であった。先輩副社長が新人副社長を教育しているところだった。
「あれ社長遅かったですね。何かあったのですか」
心配顔のニナが話しかける。ミサコもカナコも心配そうだ。俺の顔は大分疲れていたのだろう。
「良い知らせと悪い知らせがある。良い知らせは、ニナの母親の居所が分かった。無事らしい」
ニナの表情が明るくなり、ホッと安堵の息が漏れる。
「それでどこに居るのですか」
「港町のラーベ市だ。明日馬車を借りて二人で迎えに行こう」
「ありがとうございます。どうしてそんな所に」
「ロイドとかいう奴に他のメイドと一緒に連れて行かれたらしい」
「ロイド様にですか」
「ああ、そいつに様はいらないから。伯爵の仕事をやりたくなくてメイドを連れて逃げたらしい。それでブレーメン伯爵家は御取り潰し」
「なるほど納得しました。では悪い知らせとは何ですか」
「これは、ここにいる全員に関係する。領主様が俺たちの結婚について祝福すると仰せになられた」
「それの何処が悪い知らせなのよ」
ミサコが不思議そうに聞く。他の二人も同様だ。
「いや、なに、俺が君たちの同意も得ず、強引に進めてしまったようなものだから、ゴーラ様の祝福で無かった事にはできなくなった。怒っていないかなと」
あきれた顔をしてカナコが言う。
「そんな事、気にしていたの?これで私たちは公に認められた夫婦ね。踏ん切りがついたわ」
「「うん、うん」」
ニナが言う
「気になるなら後でもいいから、ちゃんとプロポーズしてよね」
「「そうだ。ちゃんとしろ」」
「でもエッチは、まだ駄目よ。恋は少しずつ育てなければいけないのよ」
「「うん、うん」」
「よく解らないが、まあいいや。帰って飯にしよう」
帰宅しても昨日までと何ら変わらなかった。
飯が終わると、それぞれがそれぞれの部屋に入りガチャリと鍵を掛ける。
俺、本当は嫌われているのかも。




