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事業は順調、私生活もボチボチ?

 黒豚組事件があってから半月ほど過ぎたころ、貉BANKの営業部長が新たに土建屋の社長をつれて来店した。驚いたことに営業部長は事務長だったバンに交代していた。前任の部長は黒豚組事件の内容を知ると体調を崩し、今は入院療養中だそうだ。

 そして、もう一つ驚いたことは、紹介された土建屋がトン太郎組であり、ブン太がその組長に付き添って来た。

「リン太社長、こちらがトン太郎組のトン太郎組長です」

「私がゴーラ&リンのリン太です。よろしくお願いします」

 俺は握手を求めて右手を差し出す。

「こちらこそよろしくお願いします」

 彼は両手で俺の右手を包み込むように握手してきた。少し震えている。

 黒豚組の事を聞かされているようだ。

「どうぞこちらにおかけ下さい。ブン太もどうぞ」

「兄貴、御無沙汰しています。失礼します」

 ブン太の嬉しそうな様子を見て、トン太郎組長も少し落ち着いたようだ。

「本当にうちのブン太は、リン太社長と知り合いだったのですね」

「はい。ブン太とは学友であり同じ釜の飯を食った仲間です。世の中狭いですね」

「そうですね。社長とは良い縁があったようです」

 俺がブン太たちを焼き殺そうとした事は知らないようだ。黙っていよう。

「それでは早速ですがここの再開発について、このランスから説明させます。ご不明な点があれば遠慮なく質問してください」

 俺はランスの説明を聞きながらトン太郎組長を観察する。土建屋特有の押しの強さと仕事に対する誠実さを感じる。後ろを振り返るとゼノンたちもランスと組長のやりとりを真剣に見ている。これは良い感じだ。

 ランスの説明が終わり、お茶で一息入れた後、組長は俺に向かい合う。

「この旧伯爵家跡地の再開発、全力で取り組みますのでお手伝いさせてください」

「解りました。よろしくお願いします」

 再び握手をした。彼の手は熱く、震えていなかった。


 これで建築関係の元請が決まった。庭園の分譲についても少しずつ進んでいる。造園部門も立ち上げこれも少しずつ仕事が入っている。進んでいないのは大学事業だな。

 以前ゼノンが大学事業は荷が重いと言っていたのを思い出す。俺はできる者に丸投げすればいいと言ったのも覚えている。

 しかし、大学経営経験者なんてこの町にいないだろう。そもそも大学卒業生でさえいるのだろうか。俺の丸投げ作戦の唯一の根拠が領主様だ。多種多様の薬を製薬販売しているは領主様だ。領主様は薬学に精通している。著名な大学の薬学部に関係しているはず。

 思い付いたら直ぐに行動する。


 俺は久しぶりに登城した。

「リン太、久しぶりだな。最近はハーレムを作ったそうだな。調子はどうだ」

「ご無沙汰しております。あれはハーレムではありません。社宅です。それに私は未経験です」

「未経験を恥じることは無いぞ。私は千年生きているが千年近く未経験だ」

 性欲のない吸血鬼と同じにしないでほしい。それから少し言い回しが気になるが、今は触れない。

「ゴーラ様、ご相談が有ります」

「何だ、珍しいな。私から相談することはあったが、お前からの相談とは」

「この前報告した大学の事なのですが、行き詰っています。大学に関する経験者がいないため、具体的に何から始めていいのか。ゴーラ様なら高度な薬学の知識をお持ちなので、大学との関係がおありかと思い来ました」

「ああ残念ながら私は、独学だ。さっき言ったように私は千年生きているからな、この程度の知識は自然に覚える」

「そうなのですか」

「そう落胆するな。リン太が言うようにこの町には大学がない。実はこの国には大学と呼べるものはない。何が言いたいかと言うと、だれも大学なるものを知らないのだ」

「なるほど、そういう事ですね。誰も知らないのなら適当に箱を作って、その箱に何々大学と名前を付けて、少し人より知識のある者を放り込み研究させて、恰好がついたら生徒という名の助手をぶち込めばいいのですね」

「理解が早いな。薬学と魔法学につては何人か紹介してやる。また週明けにでも来い」

「ありがとうございます。また来ます」


 俺は直ぐに事務所に帰った。ランスたちに城での事を伝えるためだ。

「あれ、ランスたちは?」

 事務所にはニナだけが後片付けをしていた。

「ランス様は城に戻られました。ゼノンさんたちは分譲の営業に出かけています。多分直帰すると思います」

 明るく、てきぱきと報告するニナの顔を見て、無駄に広い我が家の事を思い出した。

「ニナは今、どこに住んでいるの?まだお城でお世話になっているのかい」

「いいえ、今は以前母と住んでいたアパートから通っています」

「実はこの貴族街に最近家を購入していて、それを社宅にするのだけど、引っ越してこないかい」

「それは、・・・遠回しなプロポーズですか」

「えーと、違います。すでに入社予定のカンナとミサコという女性が入居予定だ」

「もしかして、ハーレムに加われということですか」

「・・・」

「ごめんなさい。冗談です。今のアパートここから離れているので是非社宅に入居させてください」

「いや、いいんだ。さっき領主様から同じことを言われたので少し驚いただけだ。君の入居を歓迎するよ」

「ありがとうございます。それでは今日は仕事も終わりましたし、今からその社宅を見に行ってもいいですか」

「いいよ。じゃ一緒に帰ろう」

 ニナは何故か楽しそうだ。少しずつ遠慮がなくなっているような気がする。

「リン太社長、夕食はどうするのですか」

「そうだな。何か買って帰ろうかな」

「それでしたら私が作って差し上げます」

「ほんと? なら買い出しに行こう」

 ニナは喜んで俺の腕を取り引っ張っていく。俺も不思議と嬉しくなりついて行く。

 いくつかの店を回って、買い物で両手いっぱいになった俺たちは、ようやく家に辿り着いた。

「お~」

 ニナの第一声はカナコたちと同じだ。中に入りキッチンのテーブルに食材を置く。

「社長、凄いお屋敷ですね」

「ニナ、ここではリン太でいいよ」

 どうせカナコもミサコも俺をリン太と呼ぶからな

 ニナは顔を赤くしてつぶやく。

「リン太・・さん」

 その時奥のドアが開き

「あっ!兄貴の浮気現場発見」

「きゃ」

 ニナは俺の背中に隠れる。

「ヒロミか、今日は金曜日だったな。紹介するよ、ニナ、これ俺の妹のヒロミ、週末はこの家にいる。ヒロミ、こちらニナさん、会社の同僚だ」

「ニナさん、驚かしてごめんなさい。私ヒロミですよろしくお願いします」

「ヒロミさん、こちらこそよろしくお願いします。ニナと呼んでね」

「私の事もヒロミと呼んでください。お義姉さま」

 ニナは真っ赤になる。俺もつられて赤くなりそうだ。

「ヒロミ!からかうのはよせ。ニナ、ごめんな」


 すぐに仲良くなったニナとヒロミは、二人して台所に立っている。俺はそんな二人をリビングの椅子に腰かけて眺めている。

 早くご飯できないかな。




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