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新 居

 頭取に呼ばれて狢BANKに来ている。

「リン太取締役この請求書は何だね」

 頭取から突き付けられた請求書を見ると、サヌキから屋の名が目に入った。

「それは私が宿泊しているサヌキ屋のものですね。私が取締役に任じられてから利用しています。まさか狢BANKの取締役が寮に寝泊りできませんし、頭取が家を買ってくれるのに自分で家を買う事もできないので、やむを得ず利用しています。多少の不便は我慢しています」

「・・・そうだな。不便をかけて申し訳ない。君の家は人事部長に探させているのだが遅れているようだ。今確認するので待ってくれ。君、人事部長を呼んでくれ」

 しばらく待っていると、スーツを素敵に着こなした中年の獣人がドアをノックして入ってきた。

「呼ばれて参りました。フィリップです」

「人事部長、リン太取締役の新居はどうなっている」

「はい、この前の定例会で報告したとおり、取り潰しになった男爵家の他に、少しお城から離れますがダイコク屋の別邸が売りに出されています。私は男爵家が適当だと考えています。頭取の決済待ちです」

「・・・だそうだ。リン太取締役どちらか決めてもらえないだろうか」

「そうですね。物件を見て決めたいと思います。その取り潰しになった男爵家はダイコク屋関係で取り潰しになったのですか」

「その通りです。リン太取締役」

 人事部長はためらいなく答えた。

「頭取、その物件どちらを選んでも外聞が悪くないですか」

「リン太取締役、今更だと思うぞ。この物件、君が買えば世間はある意味、納得するだろう」

「頭取、買うのはあなたですよ」

「金は出す。なんならリホーム代も出す。直接リン太取締役が買ってくれ」

「分かりました。リホームについても現物を見てから考えます。人事部長、今から案内してくれませんか」

「人事部長、案内したまえ」

「承知しました。ご案内します」


 俺たちは馬車に揺られて2件の物件を見て回った。

「どうだろうリン太取締役、どちらか気に入ってもらえたかな」

 今まですっかり俺の家の事を忘れていた上に、いわくつきの物件を勧める頭取に、俺は少し意地悪してやろうと思い、頭取を半眼で見る。

「1つが貴族街でもう1つが商業街ですね。どちらもいい物件です。リホームも必要ない状態です。それもどちらも格安ですね」

 目先の利く頭取はすぐに俺の気持ちに気が付く。

「・・・これは私からの提案だが、リン太取締役さえ良ければ2件とも購入してはどうか」

「よろしいのですか。ではお言葉に甘えます」

 俺は当然のように答えた。頭取は安堵のため息を漏らす。


 購入した貴族街にある家は特に大きくもなく小さくもない。この地区の標準的な屋敷といえる。

 しかし、元男爵家である。俺独りで住むには広すぎるし、手入れもできない。これと同じくらいの家が商業地区にもう1軒ある。欲張り過ぎた。もうサヌキ屋には帰れないメイドを雇うにしても金も時間もかかる。いっそ社宅にしてしまおうかな。部屋の数も無駄に多いからシェアハウスがいいかも。

 思いついたら直ぐに行動する。ミサコの家は知らないので、カナコの部屋を訪ねた。

「おーい カナコいるか。リン太だ、ちょっと相談がある」

 ガチャリとドアのロックが外れる音と同時にドアが少し開く。隙間からカナコが顔を見せる。随分眠たそうな顔をしている。休日だから昼寝でもしていたのかもしれない。

「相談って何よ。お金ならないわよ。食べ物なら少し分けてあげる」

「ちげーよ。曲がりなりにも俺は一つの会社の社長してんだ。食い物恵んでもらいに来るか」

「なら何の相談なの」

「少し長くなりそうだから出かけないか。それにミサコにも関係があるから3人一緒に話がしたい」

「いいよ。ミサコんちの近くにスイーツのいい店があるんだ。そこで話を聞いてあげる。勿論リン太のおごりよ」

 途中ミサコの家によって3人で店に入った。

「で、何の相談よ」

「実は俺、貴族街に1軒家を持ったのだけど、広すぎて使いきれないから社宅にしようと考えている。2人に入居してもらいたい。2人はうちの会社に入社するだろ」

「私は直ぐにでも引越しできるよ。実は今の部屋、ネコ屋の社宅なの退職したら住めなくなるから私にとって凄く良い話よ」

「私は両親に相談してから決める。でもリン太もそこに住むのでしょ。私が入居しなければカナコと2人きりなんてダメよ」

「私はリン太と2人きりでもいいわよ」

「ダメダメ絶対ダメ。私も絶対入る」

「じゃ決まりだね。引越しは手伝うよ」

「リン太は今から何するの。暇ならその新居や会社の見学できないかな」

「いいよ。俺今から貉BANK寮から新居に自分の物を運ぼうと思っていたから案内するよ」


 俺達3人は貉BANKの寮に行き、とても少ない俺の荷物を運び出すことにした。寮にいたヒロミにも声を掛けたらついて来た。荷物より人の方が多くなった。女子はペチャクチャと喋り、ぞろぞろと歩いた。 そして到着した元男爵家の屋敷を見て3人の女たちは「「お~」」と声をあげる。

 俺はその声に満足しながら中を案内する。

「兄貴、私もここに部屋がほしい。土日、寮にいても食事もでないし暇だから、週末はここで暮らしたい。ねえいいでしょう」

「勿論いいさ。はなっからそのつもりさ、でも男を連れ込むなよ」

「そんな事、するわけ無いじゃない。ここは兄貴のハーレムだよね」

「・・・チガイマス」


 俺たちは新居を後にして会社がある旧伯爵家の屋敷に向かった。

 到着した時の女たちの反応は「「おおお~」」であった。元男爵家の屋敷と比べたら敷地面積だけでも10倍以上ある。庭園の美しさは比べる事もできない。

次に別館の一室を間借りしている仮事務所に案内すると反応は「あ~」でありテンションが急降下したのが良く解る。

「ゴブリンが社長をしている会社だもの、こんなものよ」

 ヒロミがつぶやく。

「そうよ、私たち程度が副社長する会社だもの」

 カナコがつぶやき、ミサコがうなずく。

「これから俺たちが大きくしていく。頑張ろうぜ」

「「うん」」

 最後にケチがついたが新居と会社見学は終わった。


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