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会社創設

 城から派遣された兵たちに少女を城まで運んでもらい、俺も仕方なく城について行った。今日二度目の登城だ。

 また領主の執務室に案内された。


「面倒を掛けてすまないな。彼らは規則に基づいて罰を与える。私が指揮する衛兵の中にも、ああいう連中は必ず発生する。まともな者を揃えても時間がたてば何割かはああなる。殺してもまた何割かは出てくるのだ。」

「それは私にもゴブリン村で経験があります。あそこは逆でしたけど。働き者が村から出ていくと不思議とそれまでサボっていた奴が何割か働き出す。不思議ですが社会生活をする生き物の習性でしょう」

「人間の習性ならば改善は無理だな。せめて士気を下げないよう工夫が必要だな」

「そのためにサボる奴を固定させないよう人間の移動が必要でしょう。それで逮捕された3人はどうなるのですか」

「気になるのか。3人とも命令違反、職務怠慢、お前に対する殺人未遂が罪状だ。先の2つは棒叩き10回、殺人未遂は両腕を切り落として追放が相場だな。事実上死刑と変わらない」

「殺人未遂の件ですが3人の内2人は共謀も殺意もなかったから該当しないと思います。残り一人は明確な殺意を持っていたから相場どうりで仕方ないですね」

「被害者から減刑の嘆願が有れば罰を軽くすることもできるぞ」

「その減刑は苦しまずに死ねるという事でしょ」

「よく知っているな。生かしておいても害にしかならない者は大体殺している」

 ここは関わらない方がいい。何をしようと逆恨みされるだけだ。

「その3人の罰については、私からの意見はありません。共存共栄できる将来を想像することができないので」

「そうか?だがリン太さえ良ければその3人を部下にやろうかと思っていたが、いらないのか」

 やはり、そう来たか。段々と彼女の性格が分かってきた。

「不良物件だけでなく、不良人材まで押し付けるツもりですか」

「そうだなお前なら不良物件同様、不良人材もどうにかしてくれそうだからな」

「・・・私は全く自信がありません。でも実験的で良ければやってみたいと思います」

「いいぞ。では執事に彼らの履歴書を用意させるから待ってろ」

「では彼らへの罰は私に任せてください」

「いいだろう。好きにしな。結果死んでもいいぞ。棒叩き10回の刑は死亡率50%だからな。いや奴らは人族だから90%ぐらいか」

「できるだけ死なないように使います」

「ところでどの様な実験なんだ」

「飴と鞭で、人は何所まで走れるかの実験です」

「やはり、ろくでもない実験だな」


 執事が用意した彼らの履歴書を持って留置場に行った。道すがら履歴書にざっと目を通す。想像した通りの経歴だった。ゼノン、ソクラテス、プラトンが彼らの名前だ。親がつけた名前だろうが、全然本人と名前のイメージが合ってないような気がする。

 俺は鉄格子超しに声をかける。

「ゼノン、ソクラテス、プラトン、お前たちの罪状と罰が決まった」

「何でお前が言うのだよ。どうせ棒叩き10回だろ、さっさとやってくれ」

「ソクラテス、お前の罰は棒叩き10回と両手の切断だ。ゼノンとプラトンは棒叩き10回だけだ。でも棒叩き10回でほぼ死ぬのだからみんな一緒だな。最後に何か言いたいことがあるか」

「なんで、棒叩きで死ぬんだよ。そんな事は聞いたことがない」

「それは人族の国の話だろ。この国はオークも居ればオーガも居る。そんな者たち用の棒叩きに脆弱な人族が耐えられるはずないだろう」

 3人の顔色が見る見るうちに青くなっていく。

「そんな・・・・助けてくれ、何でもする」

「俺がお前達を助ける義理も理由もないが、少しだけ可愛そうな気がする。それで領主様にお願いして刑の執行を少し延期してもらった。取り敢えず一か月。喜べ、ソクラテスお前もだ」

「俺たちは何をすればいい」

「領主様はお前たちを俺の部下にするそうだ。ゴブリンのガキが上司なんて嫌だろう。断ってもいいぜ」

「だれがお前の言う事を聞くかよ。お断りだ」

 ソクラテスは即答した。

 俺は衛兵にソクラテスの刑を執行するよう指示を出す。


 ソクラテスは刑場に連れて行かれ、刑は速やかに執行された。

 暫くすると、ぼろ屑になったソクラテスが再び牢屋の中に放り込まれた。背骨が叩き折られ当然死んでいる。棒叩き10回の結果だった。

「お前達はどうする。俺の部下になり、取り敢えず一か月執行を延期するか」

「私はリン太さんの部下になることに不満はありません。でも一か月後はどうなるのでしょうか」

「その時に評価して延期するか執行するか決める。逃亡を疑われるような行為はするなよ。疑われた時点で終わりだから。行動言動には慎重にな」

「承知しました」

「では最初の仕事だ。ソクラテスを弔ってやれ。」


 俺はゼノンに葬儀用の金を渡し、報告のため領主の所に戻る。

「申し訳ございません。早くも、一人殺してしまいました」

「それはいい。で何の用だ。その報告だけでないだろう」

「はい。私に部下を付けて下さったと言う事は、私に何かをさせるおつもりですね。私に何を期待しているのか教えてください」

「今のところ、決まった事はない。だがお前が以前提案した薬専門店、認定生産工場、闇工場、例の屋敷の再開発等々新規事業を立ち上げ運営していく者がいない。それをお前に丸投げしたいと考えている」

「そんな大事業を餓鬼の私と不良人材ができる訳ないじゃないですか。それに一人死んでしまって私含め3人ですよ」

「それならお前が連れてきた少女、あれも付けよう。彼女は例の屋敷のメイド長の娘だ。母が帰宅しないので心配して探していたらしい。母親がどうしているかは解らない。調査させるつもりではいる」

 領主なんかと関わりになるとロクなことはない。でも関わってしまったから断れない。当初の目的である可愛い彼女を持つ事を目の前に、厄介事ばかりが増えていく。

「解りました。でも女の子一人増えたところで何も変わりません。内部に事業をできる者がいないのでしたら外部に組織を作りましょう。ゴーラ様はお金を出してください。そのお金でゴーラ何とか(株)を作ります。その会社の利益の一部は配当という形で出資者のゴーラ様にお渡しします。残りの利益はこの会社の発展に使います。如何でしょう」

「引き受けてくれるのか。よし金ならだす。でも大丈夫か小鬼のガキが会社設立なんて、だれも信用しれくれないだろう」

「ご心配ごもっともです。ですから出資者のゴーラ様側から執行役員をだれか派遣してください。ゴーラ様の右腕とされているような方が適当だと思います。その者が対外的な顔役をすれがいいと思います」

「それなら財務の次長、ランスにやらせよう。セバス、ランスを呼んで来い」

執事は一礼したのち退室した。彼の名はセバスと言うらしい。初めて知った。

「ゴーラ様、ランスと言う方はどのような人ですか」

「ランスは私と同じで吸血鬼だ。生真面目で魔力も強い。いい男だからリン太の彼女、ミサコ取られちゃうかも。でも、ランスにはそっちの欲望は全くないから恨むなよ」

 領主様の中では、ミサコがランスに惚れる事は決まっているようだ。吸血鬼と言う種族は、食欲はあり、性欲がなく、人に嫌がらせをする趣味があるようだ。

 ドアをノックする音がありセバスの声がする。

「ランス様をお連れしました」

「入れ」

 見た目30才ぐらいの細身の男性が入ってきた。いい男である。これは本当にミサコを取られるかもしれない。

「失礼します。呼ばれて参りました」

「ランスお前に命令する。このリン太が作る会社の執行役員として働け」

「承知しました。今の仕事は誰に引き継げばよろしいですか」

「お前が兼務しろ」

「・・・・承知しました」

ブラックだ。お城勤めはブラックだ。

「話は決まったな。リン太、まだ他にあるのか。無ければ帰っていいぞ」

「ありません。この後はランスさんと打ち合わせをしたいので失礼します」


 俺とランスは応接室に移動して打ち合わせをすることになった。

「ランスさんすみません。余計な仕事を増やしてしまいました」

「仕方ないさ。領主様の命令には逆らえない。それにこうなる事は財務の方でも検討していた事だ。リン太さんが領主様に最初に呼ばれた後この事について検討しろと命令があった。検討した結果、外に会社を作って事業化するのがコスト面でも適切だろうと思っていた。ただ面倒くさいからやりたくなかった」

「なんだ。なら話は早いな」

 俺は財務で検討された資料から説明を受けた。

 俺の気持ちは「超ラッキー」である。細かいところまで検討されている。俺の出まかせの言葉が、ここまで真剣に検討されているのを見ると、驚き以上に気の毒な気持ちになる。

 そして、俺いらないじゃねえ、ランス達が全部やればいいと思う。俺は社長になって美味いものを毎日食べたいが、面倒くさい事はやりたくない。

 ミサコにかっこいいところ見せたいけど、ランスを見ていると解る。仕事ができる男=勝組ではない。ランスはすり減っている。そんな事を考える。

「リン太さん、まさか丸投げして逃げようと考えていませんか。私は逃がしませんよ。社名はゴーラ&リン㈱で法務に提出しておきます。あなたが社長ですよ。代表取締役ですよ」

 ちっ、勘のいい奴だ

「・・・解っています。がんばるつもりです。よろしくお願いします」

 取敢えず、ランスたちが作成した計画のとおり実行することにした。新規事業に対する城勤務の公務員たちのすり減った気持ちが、良く反映されている計画書だ。

 自分たちは何もしたくない。利益もいらない。影響力さえ確保できればいい。

 でも、これでは業務委託だ。繁栄も成長もしない。委託された業務以上の仕事をしても、支払われる報酬は変わらないからだ。

 まあいいけど。来週からゆるりと始めますか。




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