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領主様からの招へい

 俺はヒロミに、ここ一週間の出来事を話した。

「だからダイコク屋から逃げる必要はなくなった。一安心だな。でもこの事を誰にも話すなよ。領主様が動いた御蔭で素早く解決したが、関係のない者まで死んだ可能性がある。逆恨みされないよう黙っておくことだ」

「うん分かった。それよりこの事で延期にしていた焼き肉食べに行こうよ」

 とても血生臭く、ショッキングな事件だったが、終わってしまえば、そんな事件も俺たち兄妹の食欲の障害には成り得ない。

「流石、俺の妹。大事な事を忘れてしまうところだった。でも先に北門の隊長にお礼を言わないといけない」

「そうだね。今から行く?」

 特に警戒する必要もないだろうから、ブラブラ歩いて行く事にした。

「そうしよう。何かお土産がいるよな。何が良いと思う」

「物は受け取らないかもよ。それよりシズさんの話をして上げれば良いじゃない。隊長シズさんの事好きだよね。シズさんにこの事報告した時、隊長の活躍を喜んでいたじゃないの?」

「良く解るな。その通りだよ。彼らは友達以上恋人未満の微妙な関係だ。これは良い土産話になる」

「兄貴、これからはシズさんのお尻を見て鼻の下伸ばしてはだめよ。恩人の恋人なのだから」

「伸ばしてねーよ」

「なら良いんだけど。ミサコさんにも嫌われないように」

「何でミサコの名前がでてくるんだ。ハム太が何か喋ったな」

「この手の話は直ぐに広まるものよ。そろそろ北門だよ」

 俺たちは詰所に入って行く。いつもと違い少し緊張した雰囲気が漂っていた。

 二三日前に一つの大店が根絶やしにされた事件があったので当たり前か。いくら離れた町の事件とはいえ、いくらかの影響がある事を考え警戒しているのだろう。

 そんな雰囲気の中俺たちだけがボケっとしていると、奥から隊長があらわれ俺たちを中に入れてくれた。

「隊長、今日は妹をつれてお礼に参りました。本当にありがとうございました」

「あれは俺の仕事だから、お礼を言われるような事ではない」

「そんな事はありません。この事を上司のシズさんに報告をしたら、隊長の活躍をとても喜んでいました。シズさんは隊長の事好きなのですね」

「本当か?・・・リン太は見どころのある奴だと思っていたよ。でもあんまり盛らないでくれよ。後から俺がしんどくなる」

「盛ってなんかいません。シズさんには有りのまま報告しただけです」

「それならいい。実は俺からも君たちに伝えなければならない事がある」

 何だろう。隊長が俺に伝える事なんて、今回の事件の参考人として、裁判か何かで証言させられるとか?面倒な予感しかしない。

「領主様が君たちに会いたいそうだ。城に出頭させろとの仰せだ。今からでも連れて行ってやろうか」

「えっ、今からですか。領主様に呼ばれるような重要な事を、上司に報告もしないで行動しては叱られます」

「君の上司はシズさんだったね。それなら俺が後で伝えておくよ。それに俺も嫌な事はさっさと済ませておきたいし」

「・・・嫌な事なんですね。」

「嘘だよ。でも領主様が呼んでいるのは本当だ。それにそんなに気構える事もないぞ。今回の件でリン太に興味を持たれたようだし、行けば御馳走しれくれるのは確実だろう。」

「「直ぐに行きます」」

 俺たちは隊長と護送用の馬車に乗せられてお城に入った。囚人が処刑場に運ばれて行くような気持ちになってくる。

城門を抜けると城壁の外からは見えなかった恐ろしげな城が目の前に聳え立つかと思いきや、どちらかと言えば可愛らしいお屋敷がそこにはあった。玄関前に馬車が止まり執事と思われる犬の獣人が出迎えてくれた。

応接室に案内され暫し待っていると、軽い足音が近づいてくる。その音がドアの前で止まると、間髪を入れず生きよい良くドアが開けられた。そこには少女が立っていた。

俺たちと年頃が変わらない青い目をした、色白の可愛らしい御嬢さんだ。隣にいた隊長を見ると片膝をついている。この子が領主様だ。俺達も隊長に習って片膝をつこうとすると、少女が言い放つ。

「立ちなさい。寛いで話そう」

 どうすればいいのか解らない俺はまた隊長を見る。隊長はソファに目線を配らせたので、少女がソファに腰を下ろしたのを待ってから俺達も腰を下ろした。

「この子がリン太だな。そしてそちらの御嬢さんがヒロミか」

「「はい」」

「リン太はゴブリンなのに炎の魔法が使えるのか?本当か?」

何故、領主が知っているのだ。隊長にも話していないのに。多分俺たちの事は調査済みらしい。

「ゴブリンも魔族の端くれです。体力があれば魔法を使えるのは珍しくありません」

「ではどうやって魔法を使うのか説明しろ」

「小さい火はピッと出して、大きな火は心を込めてゴーと出します」

「そんな説明ではミサコと言う女の子も納得しなかったと聞いている」

「何もかもご存じなのですね。領主様は吸血鬼と聞いています。血液を操る魔法を使われるとか。血を刃の様に飛ばす魔法は、どのようにされるのですか」

「小さい刃はピッと出し、大きな刃はズバッ出す。・・・お前と同じだな」

「ご理解下さいまして、ありがとうございます」

「ふむ、お前は罠を考え出す才能があると聞いた。だが例のポスターを見ると絵の才能はあまり無い様だな。ポスターに描かれている妹と実物の妹では大分違うな」

「はい、おっしゃる通り私には画才は無い様です。でもあのポスターはあれで良かったと思っています。敵を炙り出す事ができました」

「やはり、わざとなのだな。あの薬行商人から聞いた。曖昧な絵なので、つい門番に問い合わせてしまったと」

「たまたま思い付いただけです」

「しかし思い付いて、行動した。良いと思うぞ。リン太、貉BANKをやめて私のところで働け。中級公務員としての待遇を約束する」

「私の夢は可愛い彼女を見つけて田舎に引きこもりイチャイチャ・・・静かにのんびり暮らす事です。勤勉なお城勤めはできないと思います」

「でも考えてみろ。可愛い彼女ができて一緒に暮らしても子供ができれば、お前も妻と子供のために稼がなければならない。そうしないと妻は子供をつれてお前の所から出て行ってしまう。その点公務員は保証が厚いので妻になる人も安心できる。いつまでもイチャイチャできると思うぞ」

「・・・・私にどのような仕事をさせようと考えているのですか」

「お前の得意な事だ。人を罠にかけ騙して焼き殺す。または脅して集る。私にも敵が多くて少し減らしたいなと思っている。手伝ってほしい」

「大変な高評価ですが、そんな事をしていると、将来の妻子が安心して暮らしていけるか不安です」

「今の仕事も同じだろ。言葉巧みに人を騙して借金を背負わせ、何もかも奪い取るのだから。最後は内臓まで売り払うとか。これも同じで将来の妻子が安心して暮らせるか疑問だろ。まだこちらの方は公務員だからましではないか」

「少し誤解があるようです。貉BANKはそのような消費者金融ではありません。調査し健全に資金を回収できる者にしか融資していません。たぶん、知らんけど」

「そうだな。そうあってほしいものだ。今までの話は冗談だ。お前にやってもらいたいことは殺しではない。それをやる者は間に合っている。」

 少し間を置いて話し始める。

「我が領は、薬の生産販売により大きく成長している。これらの研究は私の眷属が努力した結果、それなりの成果があり、これからも見込める」

 青い目が俺たちを目を見つめる。理解しているか確認しているようだ。

「問題はこれらの模造品が出回っている事だ。効能のある物はまだましだが、色形が同じだけで全く効能がない物もある。これを放置していては我々の商品に対する信用に関わる。その都度摘発し、処分しているが埒が明かない」

 ああ、ばったもんの問題か。高価な物ほど出回るからな。

「リン太、何かいい知恵はないか。悪知恵でもいいぞ」

 あんまり興味ないなと思いつつも考えるふりをする。

 領主はそんな俺を見てニヤリと笑う。

「ああそうだ。夕食を用意しているところだ。食っていくだろ」

 隣で大人しく話を聞いていたヒロミは目を輝かせる。

「もちろんです。領主様、お兄さんもっと真剣に考えて下さい」

 俺も夕食と聞いてスイッチが入った。

「いくつか思い付きました。一つは取扱い専門店を作るのはどうでしょう。ここの商品は限られた特定の店にしか卸さず、また販売もさせない。そうすればその店以外で売っている物は全て偽物と言う事になります」

「なるほど。良いかもしれないな。二つ目は食事の後にするか。二つ目は悪い知恵の方なんだろ」

「ご明察、流石領主様」


 別室に通されると凄い料理が並んでいた。期待以上だ。勧められるまま席に着き食べた。目を輝かせて食べた。ヒロミの瞳も星が三つほど輝いている。なるほど三ツ星レストランと言うのはこの事か。

 意外に思ったのは、吸血鬼である領主もパクパクと食欲旺盛であったことだ。

「領主様も私どもと同じような食事をされるのですね」

「当たり前だ。私の口を見てみろ、これが蚊や蝶の口と同じか。見てわかるだろ」

「失礼しました。それでは吸血鬼と我々では何が違うのですか」

「食生活においては大きく変わることはない。血液に関する魔法が得意なだけだ。それは自分の血であろうが他人の血であろうが変わらない」

「不老不死と聞いていますが違うのですか」

「不老不死だ。その理由も血液魔法によるものだ」

 良く解らないな。まあいいか。お腹も御馳走でいっぱいになった。

「領主様、二つ目のアイデアですが、領主様のお察しのとおり悪い知恵の方なので人の耳が無い所で話したいのですが」

 領主とその護衛一人、俺とヒロミの4人だけ密室に移動した。

「では二つ目について説明します。偽物の薬が出回るのを直接防ぐ方法ではありません。どうせ偽物が出回るのですから、我々で偽物を作るのです。色形味臭いは本物と全く同じに作り、その物には毒を入れておくのです。下痢をする程度の毒が適当でしょう。その偽物は取扱い専門店以外の闇市に流します」

「解った。偽物を買った客は下痢を起こし、それ以降取扱い専門店以外では買わなくなるのだな」

「そのとおりです。これは継続的に行わなければなりません。止めると直ぐに別の偽物が出回ると思います」

「リン太の腹の中は真っ黒だな。よくもまあこんな卑劣な事が思い付くものだ。それで三つ目もあるのか」

「はい。三つ目は割と普通のアイデアです。領主様は偽物がでると摘発して処分されていると聞いています。多分先日のダイコク屋の様に皆殺しだと思いますが、ある程度は殺さずに使った方が利益になると考えます。」

「それはあれか。生かさず殺さず使いつぶすの事か」

「いいえ違います。偽物を作る者たちは、ある程度の知識と技術を持っていると言う事です。これから事業を拡大していくためには人材が必要です。摘発し軽い罰を与えた後は、指定工場に認定してやり、本物の薬の作成方法を教えて生産させるのです。こちらはのれん代をもらう」

「なるほど一二三のアイデアを連動させると大きな利益になるな。それで知識も技術も持っていない者はどうするのだ」

「それは、今までどおり生かさず殺さず薬漬けの献体でしょうか」

「私がそのような事をしていたと思うのか。まあ当たっている」

「・・・」

 まさか先ほどの料理に変な物は入っていないか不安になる。

「リン太にヒロミ、今日は来てくれた事、感謝する。私たちの見かけの年齢は近いから良い友人になれるだろう。また遊びにきてくれ」

「はい。御馳走様でした」

 ヒロミは大変満足した様子だった。理由は御馳走もそうだが、一番はダイコク屋の末路かもしれない。

 ヒロミに関わった、哀れな男たちの末路に、人体実験の項目を追加しておこう。

 帰りは護送車でなく普通の馬車で送ってくれた。



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