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1.

姿見の前でネクタイをしめ、制服を整える。

今日から俺は中学生になる。


今日の為に竜人の力を隠すための訓練をひそかに行ってきた。

少し気を緩めると暴風を起こしてしまうことがあった。それを押さえるために頑張った。


母は五人兄弟で、その中でも一番上の兄である闇伯父さん(伯父さんっていうと怒るので、俺は闇さんって呼んでいる)に訓練してもらった。

闇さんの見た目は絶対に整えていないであろうボサボサした漆黒の髪、目はするどく、目を合わせるだけで睨まれているように感じる黒い目。身長は180㎝ほどあり、すらーっとした体型。竜人の血を引く者の特徴である「美男」をしっかりと証明してる。

闇さんは「THE JAPANESE PEOPLE」という見た目をしているから羨ましい。


口数少なくて冷静な人で、初対面のときは怖い人だな、と思っていたけど、実はシスコンブラコンで心配性、過保護な人だな、ってことに気がついた。


闇さんは俺のために仕事の時間を割いて、毎晩公園で力の押さえ方を教えてくれた。

でも、まだ幼い俺には思わず力が出てしまうことがあるだろうっていうことで、力を押さえる能力のあるネックレスをくれた。

赤く光る小さな石に穴を開け、細い紐を通しただけの、簡単なものだから、少し不安だが、俺は入学式に目立たないように付けていくことにした。


シャツの下に赤い石を忍ばせる。

ヒヤッとした冷たい感触にビクッとなった。


そのとき、俺の部屋の戸をノックする音がした。


「入るよ。」

「どうぞ。」


その声の主は母さんだった。


「あ、兄さんからもらったそれ、付けていくんだね。」

「あー、うん。一応。付けてないと闇さんうるさいでしょう?」

「あはあ、兄さん過保護なとこあるもんね。だけど、バレないようにしなさいよ。そんなアクセサリーは校則では禁止されているでしょう。」

「分かってるよ。紐が細いから目立たなくて助かった。」


そんな会話をしている内に時間は刻々と迫ってくる。


「あ、もうこんな時間。じゃ、行ってくるね」

「うん、気を付けてね。母さん仕事でいけないから、ごめんね」

「大丈夫、見て貰うほどのものでもないでしょ」


母は警察官だから、今日の朝、俺を見送ってくれるだけで無理してくれているのは伝わってきている。

なのに、入学式にも来い、なんてことは言えるはずもない。


俺は扉をあけ、学校へと向かった。


入学式と行っても、普通に登校するようだ。

姉は三つ上なので、今日から高校生。姉は生徒代表挨拶をするとかなんとかで俺よりも先に家をでた。


太陽が輝く。春の暖かな風が吹き付ける。


絶対にバレないようにしていかなければならない。

俺は、制服の上から胸にある石をギュッと握った。


きっと、闇さんのことだから、何らかの力があるのだと信じて。


                      ☆


中学校の校門をくぐり、人が集まっている所へ向かう。どうやらクラス割が掲示されているようだった。

一年一組から三組まである。

俺はどうやら三組らしい。


掲示してあるクラス割りの紙は生徒用玄関にでかでかとはってあり、すぐに自分の名前を見つけることができた。

他にも見たことのある名前はちらほら載っているのだが、顔は思い出せない。

なぜなら、この中学校は私立で、同小の奴らは別の中学校にほとんどが行っているからだ。


そのうえ、俺の交友関係は薄くて狭い。

竜人であることを隠そうとするためには集中力が必要で、いつもしかめっ面をしていたし、話すことも滅多になかったから、俺に近づく人は居なかった・・・・・


「おおおおおおおおおおおおおおおおういいいいい!!!いぶきぃぃっぃぃいいいいいいい!!」


一人を除いて。


「いぶきぃぃぃっ!!!見たかァ!?俺ら、同じクラスだぜェ!? うっっわ!!マジで奇跡。いや、運命だわ。俺とお前、やっぱり運命の糸でつながってんだな!!」

「うるさい。目立つ。」


コイツは、俺と同じ小学校の奴で浜辺俊和(はまべとしかず)。うるさくて、目立っていて、成績も中の下くらいだった。

浜辺は俺が中学受験するっていうこと入試三ヶ月前に知ると、猛勉強を始め、見事受かってみせた強者だ。


それから、コイツはいつも「運命運命」とうるさい。

そこまで仲が良いわけでもないのに、俺にやたらと依存してくる理由はよく分からなかった。


一方的に話しかけてくるだけだったし。


そんな奴と離れたくて受けたはずの中学校にもころりと入ってこられて俺は苛立っていたのに、さっそく目立ちやがった。そのせいで、俺まで周りから冷たい視線を浴びることになっている。


「なぁっ!いぶき、一年よろしくなっ!!」

「・・・・」

「なんか言えよぉーー! あ、もしかして、俺と一緒のクラスで嬉しくて声が出ないとか!?うれしいな!!」

「そんな事は一ミリも思っていない。」

「もー、恥ずかしがんなって!!」


と、肩を組んでくる。

うざい、うるさい。


そう思いながら俺たちは三階にある一年三組へと向かった。




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