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17.

 家の扉を開けようとする。

 ガチャッ・・・・

 あ、まだ鍵がかかっている・・・・

 姉さんも帰ってきていないのだな。


 まあ、まだ六時ちょうどなので高校生の姉さんが帰ってきていないことに不思議に思う点はないだろう。

 

 そう思い、鍵をあける。

 家の中に入る。いつもなら鍵をしめずにみんなの帰りをまっているが、今日は鍵をしめた。

 流石にさっきの不審者事件があったから怖いのだ。


 赤い石の件があっても、やっぱり1人になると不安が出てくる。

 帰ってきたとき、誰かはいてほしいなって思っていた。


 ガチャ・・・・


 鍵の解錠音が聞こえた。

 誰か帰ってきた!? それにしては、かなりタイミングが良いな・・・・


 そう思って玄関に再び戻ると、そこには闇さんが立っていた。

 かなり急いで来たのだろう。普段より息をするペースが速い(竜人だから、息切れはしてないみたい)


「えっと、お久しぶりですね。闇さん。」


 と、言ってもそこまで経っていないのだが。

 まあ、闇さんにしては出会わなかったなーっと思う程度の期間である。


 闇さんは深刻そうな顔をして、ぽつりとつぶやく。


「今日、遠足があったのだろう・・・・・・?」


 ドキッとする。

 赤い石はまだ胸元についたままだ。

 言ってはいけない。なぜか、その思想に陥る。


 この赤い石、自我持ってんのかよってツッコみたくなるほど、今日のことを言わせてくれない。


「そ、そうですけど・・・・」


 闇さんはきっと知っている。今日の不審者のことを・・・・

 そして、咎められるのだろう、そう覚悟し、闇さんの次の言葉を待った。


「・・・・弁当。」

「・・・・へ?」

「弁当を作らないといけなかったんだろうっ!?」


 想定外の言葉に固まる。

 不審者のこと、知らないの・・・・?


 闇さんの過保護っぷりだったらどこからか情報を仕入れてきそうなモノだと思っていた。

 あの班員たちの口の固さにビックリする。


 そして、闇さんは興奮したようにまくしたてる。


「弁当の事を知っていたら、他のクラスメートにも自慢できるような逸品を作ってやったのに!? どうして言わなかった?? お前だけハブられたりしていないだろうな!?」

「ちょ、まずは落ち着いてください。もちろん、ハブられていないです。」


 おにぎりだけだったのは心配されて、東雲と浜辺がおかずを少しずつ分けてくれたけど。それは言わない。


「・・・・そうか? 嘘ついていたら分かるんだぞ、お前の心の中を読めばな!!」


 あー発動してる

 過保護モードが・・・・


 ご近所さんが聞いていたら中二病のイタい子が変な発言をしているように聞こえるのだろう。

 しかし、闇さんの心を読む、は本気に読めるのである。

 怖いよねーー。


 だけど、読むのにはかなりの体力を使うようで、あまり使いたがらない。

 それを出してきているということは、よっぽと頭に血が上っているのだろう。

 後先考えていない感じがする。


「嘘ついてないですよ。闇さん。俺は親交を深めてきました。」

「・・・・ガッ!?」


 変な威嚇ポーズを闇さんはとる。

 うん、ちょっとおかしくなってるね。


「そもそも!! なぜ遠足のことを俺たちに相談しなかったんだ!?」

「そもそも、なんで終わってから知ってるんですか」


 質問を質問で返す。地味にウザい手法である。

 だけど、最初から気になっていたことだからどうしても聞きたくなった。

 闇さんは痛いところを突かれたのか、しばらくフリーズする。

 

 三十秒ほど固まった後、口を開いた。


「・・・・その、あの・・・・えっと」

「はぁ?」


 口を開いたかと思ったら口ごもり始めた。

 普段のクールで冷静な闇さんとは思えないほど、口ごもってる。

 

 そんなに後ろめたいことなのだろうか?


「はっきり言ってください、気持ち悪い」

「・・・・今日、午後にやっとに”通信”が繋がったから、お前の様子をみた」

「通信って、スマホの?」


 と、聞くと後ろめたそうに闇さんは視線をそらす。

 俺が無言の圧をかけると、俺の胸元にある赤い石を指差した。


「それの、通信・・・・」

「・・・・は?」


 意味の分からない事を言われて俺までフリーズする。

 

 この石の、通信・・・・?


 メチャクチャ、嫌な予感がしてきた。


「その石、俺たち竜人の”視覚”と繋がっているんだ・・・・」

「・・・・で?」

「・・・・それで、たまに、様子を、見れるんです。」


 きっっっっっっっっもっ!!!!

 盗撮じゃねぇかよっ!? だから、最近あんまり現れなかったのか・・・・

 というか、過保護がキモいいいいいいい!!!


 まだ続きがあるのか、闇さんが口を開く。

 もうやめてくれ。生理的にあなたが無理になりそうです。


「その石は、1個について1人しか視覚と繋がることができなくて・・・・いつもなら、俺が定期的に見てたのだが・・・・」

「キモいよ。」

 

 思わず、口に出た。

 ビくっと、闇さんの肩が震える。だけど、続ける。


「それで、・・・・今日は朝から誰かがお前の様子を見てたみたいで・・・・場所が分からなくて・・・・」

「・・・・」

「で、やっと見れたと思ったらまさかのバスの中だったんだ・・・・それで、学校に問い合わせて・・・・」


 その先を闇さんは語らなかった。

 それより、俺は怒りに震えていた。

 中学生にもなり、思春期に入っているだけ合って勝手に見られているとなると、怒りもわいてくるモノだろう。

 

「・・・・・このこの石について、説明して下さい。それだけじゃないでしょ。」


 たまに冷たくなったり、赤く光って熱くなったり。絶対普通じゃない。


「・・・・その石は、視覚を共有している竜が術を発動したら、そこにも共有される。」

「つまり、俺の様子を見ながらヤバいと思った時に冷静にさせるために闇さんが竜人術を使って、ひやっとさせてたってことですか?」

「・・・・そういうことだ」


 ああー・・・っと、俺は顔面を手で覆い、その場にしゃがみ込む。

 全て、見られていた。

 俺のプライバシーとは? 俺の人権は?

  

 怒りを通り越してこの人に生理的な嫌悪感を感じる。

 いつも、定期的に見てたって・・・・・・


「この石を通して見てたのは、闇さんだけですかっ?」

「ああ。木葉には反対されていたから・・・・・・ヒミツに。」


 クソだ。

 反対されたら普通はやめようぜ?

 

 と、思ったところで一つの疑問が浮かぶ。


「・・・・・・今日、見ていなかったという事はだれが俺を見ていたんですか?」

「それが分からないんだよ。」


 闇さんが静かにつぶやく。

 ひやっと背中にいやな汗が流れる。

 今日の出来事がフラッシュバッグする。


「・・・・・何か、変わったことでもあったか?」

「・・・・・・いや、何もありませんよ。」

 

 闇さんに今日の出来事、石の反応を話すのは何だか嫌だったので嘘をついた。

 このくらいの嘘は良いだろう。今まで俺だって散々騙されていたのだから。


「だから、今日は帰って下さい。そしてもう二度と、俺の生活を覗かないで下さい」

「・・・・・・悪かったとは思っている」


 そうつぶやくと、闇さんはすねたように玄関から出て行った。

 悪かったとは思っている。


 きっと、これからも俺の様子を定期的に見るのだろう。

 なんだか気持ち悪くなって闇さんが帰ってからすぐに、赤い石は自分の汚い机の引き出しに押し込んだ。

 

 


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