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15.

「いぶきぃ?」


 立ち上がり、連れて行かれそうになっているとき、背後から俺の名を呼ぶ声がした。

 浜辺だ。


 青年ほピクッとした。


「えっ?誰だよ、ソイツ。てか、いぶき・・・」


 と、俺に浜辺が近づいてきた。

 真っ青な俺の顔を見て何かを察したようだった。


「・・・ねえ、お兄さん。申し訳ないんすけど、俺たち『学校』のイベントで来ててー、で、これから予定がいっぱいなんで、いぶき、返してくれません?」


 浜辺がぶち込んだー!

 このときだけ浜辺がかっこよく見えた。

 このときだけでごめん。


「・・・えっとね、僕は伊吹君の親戚なんだよ。ちょっとだけ、話したいことがあってね。」


 あうっ。

 青年が嘘を言う。これはやばいぞ。


「そーなんすね。じゃ、嘘っすね。」

「・・・は?何で?」


 青年が手の力を弱め、浜辺を睨みつける。

 浜辺は大きく息を吸った。


「ここにぃーー!!不審者がいますぅーー!!誰がぁぁー!!助けてぇーー!!」

「ああ!?」


 浜辺持ち前の声の通りの良さでお客さん達の注目が集まる。

 何事かと、警備員の人たちもやってきた。


「ッチ!!くっそ。」


 それだけ言い残して青年は走って逃亡した。

 警備員の人たちは青年を追いかけていった。


 俺は気が抜けて膝から崩れ落ちた。


「おい、だいじょうぶか、いぶき。」


 浜辺が俺の背中をさすりながらつぶやいてくる。

 緊張がとけて、ふわあーっとなる。そして同時に、不安だった気持ちがどっと押し寄せて鳥肌が立つ。


「君たち、何があったんだい?」


 警備員の内の1人の白髪交じりのおじさんが優しく問い掛けてくる。

 俺は震えながら、会った事を話そうとした・・・・


 んがっ!?


 胸が、熱いっ!!

 物理的に、やけどを負うような、熱いっ!?

 というか、痛いッ!?

 え?何!?

 

 と、思い胸元に目をやる。

 あの、赤い石がゴウゴウと輝いている。

 

 ハアァァアア!?

 

 俺を助けるモノじゃねえのかよっ!?

 何で、今になって焼けそうな、痛みをっ、て、くっそ痛いっ!!


「えっとぉ・・大丈夫かい?」


 今さっきとは違う鳥肌を立て、汗をだらだらとかいている俺におじさんが戸惑ったように声をかける。

 話そうと思って口を開くとどっとまた、やけどしそうな痛みを放ってくる。


 あー、どうすりゃいいんだよっ!?

 やけくそになったとき、頭の中にある考えが浮かんだ。


《誤魔化せ》


 ・・・・は?

 今、誤魔化しても良い事なんて一つも無いぞ。

 それが分かっていても、何故かこの痛みを解くには誤魔化すしかない、と思う。

 なぜだか分からないけど、俺の頭には生き残るためには誤魔化すしかないという考えしか浮かばない。


 あーあー、せっかく浜辺が助けてくれたのに・・・

 そう、躊躇するほど胸元の痛みが増してくる。


「・・俺のっ・・伯父の・・弟でっ・・ちょっと、変なヤツなんです・・・」

「?・・・つまり、不審者じゃなくて、少し変な伯父さんってことで合ってる?」

「はいっ・・・」


 浜辺が目をパチパチさせる。

 ごめん・・・

 

 おじさんは困ったように頭をかくと、トランシーバー(?)で俺が話した内容を他の警備員の人達に伝えたようだった。

 そして、おじさん含む警備員の人達はあの不審な青年を追うのをやめ、自分の仕事へ戻っていった。


 そうして、赤い石の光がやっと治まった。


「・・・なんか、ごめんなぁ、いぶき。俺の勘違いで・・・」


 浜辺がとっても申し訳なさそうに誤ってくる。

 ああ、ごめん、俺を助けてくれたのにお前がおかしいみたいになってしまって。

 そう思い、本当のことを話そうとしても、また赤い石がゴウゴウと輝く。

 イテェ。


 むしり取ってやりたくなるが、むしり取ろうとすると痛くなる。

 今、この石に手を出すと暴力的な反応で返ってくる。


 浜辺にとっても、とっても、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「いや、ありがとう。結構マズかったんだ。あの人すっごい変態だから。」

「!?・・・そ、そっか・・・」

「ホント、命の恩人だよっ・・・・ッ」


 いたたたたた・・・・

 これ以上は話せない。だけど、何とか、お礼は言えた・・・・


 浜辺はホッとしたのか、さっきよりは表情が和らいでいる。

   

 そこに、班のメンバーが集まってきた。


「何なに!? 何があったの? スゴい騒動だったけど!?」


 戸井崎さんが心配・・・よりも、興味津々で聞いてくる。

 まるで、ご近所のゴタゴタ話が大好きなおばさんのようだ。


「えっと、俺の親族の変態が来て・・・・」

「変態っ!? 何されたのっ!?」


 すっごい圧をかけて聞いてくる。

 俺の親族の変態設定だと、どうやら赤い石は光らないらしい。

 よく分からないが、その設定で誤魔化し始めた。


「えっと、ちょっと拉致されそうになって・・・」

「えーっ!?なんでー!?」

「そのー・・・何でだろ?」

「ショタコンじゃん!!絶対!!」


 しょたこんって何だ?

 そう聞こうとしたとき、直宮さんが間に入ってきた。


「そんな!?山田君はショタ顔なんかじゃありません!!大人びています!!」


 ・・・しょたがおって何?

 訳が分からず、話をする側から聞く側へと逆転。


「あー言われてみればそうかも。じゃあ、ただの変態かー。」

「そうですっ!!山田君、あの人親族でも被害届出した方が良いと思います!!」


 うん、そうするよ。

 そう言おうとしたとき、ガッと赤い石が光り出す。

 イチイチ痛いんだよっ!!


「うー・・よくあることだから、考えておくよ・・・」

「そうですか・・・心配です。先生に報告に行きましょう。」


 そうだね。

 同意しようとしたとき、またまたガガッと赤い石が(以下略)

 

「・・・だ、だいじょうぶ・・・俺の、家族の恥だから・・・あまり、広めたくないんだ・・・」

「「「は?」」」


 班員3人の声が重なる。


「いやいや、流石に先生には言ったほうがいいでしょ?」

 

 東雲があたりまえーなことを言ってくる。

 はい、その通りでございます。しかし、赤い石が(以下略)


 だから、俺が変人になってでも誤魔化さなければならないのだ。

 頭をフル回転させる・・・


「家に帰ってから家族会議をするよ。それまでは誰にも言わないでくれないか?あまり広まると俺まで変な目で見られるからな。」


 どーだっ!!

 赤い石は治まってくれている。

 どんだけ隠蔽させようとしてくんだよ、クソ石。


「・・・そか。あまり他人の家庭にずかずか土足で入るわけにもいかないしね。分かった。黙っておくよ。」


 東雲が折れてくれた。 

 班の残りの3人も納得はしていないが、言わないことを了承してくれた。


 そのかわり、家族でちゃんと話し合うことを条件に。

 (家族で話し合おうと心で決めたとき、赤い石が(略)のため、多分話し合えない)


 そして、俺たちの班は次の目的場所へと向かうことになった。

 赤い石が俺を助けてくれたのは、さっきまでの大きな緊張と不安を和らげてくれたことぐらいだった。

 

 クソ石がッ!!

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