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14.

 気を取り直して、早速〇〇ランドのアトラクションをまわっていくこととなった。

 どこに行きたいのかは前日に決めていた。

 まずは、からくり迷路屋敷からだ。


「いやー、中学生になっても、こういうとこは興奮するねー。」


 と、東雲が声をかける。

 浜辺は目をキラキラさせながら辺りをジロジロ見ている。


「そうだよなぁ!!うわぁーーっ!平日だから背徳感すげぇぇー!!」

「声のボリュームは落としたほうが良いと思うが。」

「すげぇぇー!!」


 コイツ、聞いてない。

 

 と、呆れつつも自分もやっぱり興奮する。

 からくり迷路屋敷の案内をホームページから何回見たことか。 


 初めての体験はやっぱり、ワクワクする。

 ただし、竜人の力を出さないようにしなければ。


 よろしく頼むぞ、と思いながら胸元の赤い石のネックレスに目をやる。

 まかせとけ、とでもいうようにキラッと一瞬だけ光った。


           ☆


 からくり迷路屋敷につき、待ち時間5分ほどで入れた。

 まず最初に一枚のスタンプ用紙を渡され、この屋敷内にあるスタンプを3つみつけてこれに押すように言われた。


 屋敷は二コースあり、知力を試すコースと運動能力を試すコースの2つがある。

 そこで、男子対女子でどちらが早く終わるか勝負することになった。


 もちろん、俺たちは運動コースだ。

 内心、竜人の力が出ないかとても不安である。


 なので、参加している風を装って、二人に任せよう、と思った。


 のだが、屋敷に入ると俺もやりたくなってきた。

 運動能力コースでは、縄が張めぐされていて、その間を通り抜けたり、回転する壁を回して道を作ったりと、まあまあ知力も必要だな、と、感じるコースだった。


「や、やぺぇぇー!ぜんっぜん、道わっかんねぇー!!」

「落ち着け。」

「そうそう。落ち着いて、道を探していくんだよ。」


 三人で道を分かれて、つながる道を見つけたら声を出し、そちらに向かう。

 そうしているうちに1つ目のスタンプを見つけた。


 ポンッと押したとき、終わってもいないのに大きな達成感に包まれた。

 

「よっし、このまま2つ目いくぞぉー!!」


 と、浜辺は張り切っている。

 しかし、3つ集め終えるまでに、十分かかり、結局女子に負けてしまったのだ。

 だけど、とても楽しくて俺はかなり満足した。

 浜辺は悔しそうだが。


 その後、観覧車というものに乗ったり(低いので、酔わなかった)、メリーゴーランドに乗ったりした(ギリセーフ)。


 ここまでは順調だ。

 しかし、ジェットコースターはダメだろう。

 ここに来るまでは乗れると思っていたが、バスでのトラウマがよみがえり、乗るのを躊躇する。


「いぶきぃ、やめとけよぉー。ぜってぇ、酔うぞ。」

「だよな・・・残念だけど、下で待ってる。」

「おう!」


と、いうことで十五分待ちの列に四人は並び、いつの間にか姿は行列へと埋もれていった。


 俺は一人ぽつんと近くのベンチに腰掛けてぼーっとジェットコースターを見ていた。

 あー、酔わなかったらいいのになー。

 何で空飛ぶときは酔わないのに、バスでは酔うんだろー?


 と、思いこんな悩み誰にも言えねえ、と苦笑していた。

 そのとき、俺の隣に欧米風の青年が腰掛けてきた。

 

 まさか、隣くるぅ?と思ったが、顔には出さないようにした。

 しかし、こちらをジーッと見てきたかと思うと、


「ねぇ、君って『暗付見 真火斗』って知ってる?」


 と、話しかけてきた!?

 ん?ていうか、真火斗って、真火斗さんのことだよな?何で俺が親族関係だと知ってる?


 と、プチパニックになったが、最近テレビで取り上げられたからその話をしたいだけかもしれない、と思い直し親族関係ということは伏せて話そうと思った。


「あー、最近テレビで取り上げられてますよね。」

「そうそう、刀鍛冶ってカッコイイよね。君ぐらいだったら憧れるんじゃない?」

「あんまり見ない職業ですもんね。」


 あっぶねぇ・・・

 親族関係か?っていう質問じゃなかった・・・


 冷静になることが大切だな。

 そう思いながらしばらくその青年と談笑していた。


 どうやら彼は真火斗さんのファンっぽい。

 テレビをしっかり見ている様子だった。


「でさ、オレ、真火斗さんに会ってみたいって思ったんだよ。」

「そうなんですね。」

「そー。で、一回真火斗さんの働く沖縄の工房まで足を運んだんだよ。」


 ・・・ん?

 風向きが不穏な方向に。


「だけど、出会えなくてさー。」

「はあ、」

「・・・」


 青年がジーッとこちらを見てくる。

 え?やばくないか?


「ねえ、君、真火斗さんがどこに住んでるのか知ってるでしょ?」

「え?」


 ファンじゃなくストーカーかいっ!!

 というか、俺に聞いてくるあたり、そこそこやばい気がする。


 ここで親族関係だってバレることもやばいと思う。

 青年の目が優しさから狂気に満ちた目へと変化しているし。


「知らないですよ。というか、何で俺?」

「・・・え?知ってるでしょ、山田伊吹君。」


 はぁぁぁあーーーーー!!!

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


 いきなりのフルネームは心臓に悪い。

 ど、どうする?どう乗り越える?


「えっと、俺の名前、伊吹じゃないっすよ。」

「・・・はっ。いい加減にしてくれないか?こちらは本気なんだよ。」


 と、肩に手を回してくる。

 手はゴツくて、背筋がヒッとした。

 

 青年が耳に囁いてくる。


「真火斗さんとすこーし、お話したいんだよ。オレは。」


 ここを覗け、と目で合図してくる青年。

 胸元には黒く光るものが・・・


 ピストル・・・?


 えっ・・・ 終わった。


「ちょーっと、裏に来てもらってもいいかな?」


 優しくまとわりついてくる声はもう、恐ろしくてしょうがなかった。

 イヤーな汗が流れていく。


 ただのストーカーなのか?

 ここまで来ると、やばいぞ。


 というか、ここをどうやって乗り切る?

 裏って、何されるんだ俺は?


 と、パニックに陥ってしまった。


 青年は、ほら立て、と言わんばかりに睨みつけてる。

 肩に回した手に力が入る。

 もうだめだ。


 そう思い、俺は言われるがままにベンチを立った。

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