11.
昨日の陸上部仮入部後、くったくたになって帰ってきてからベッドに倒れ込んだ。
流石の竜人の血を引くモノでも、やっぱり慣れないことはつかれる。
川田先輩にも疲れたし・・・・
そちらの気疲れのほうが大きい気がする・・・・
そして、次の日。フル回復。
心の重さもフル回復。
竜人の血を引いていてよかったと思える瞬間だった。
そして今日、仮入部最終日だ。
俺は昨日と同じ陸上部に行って本入部を決めようと思っていたのだが、浜辺から
「昨日はいぶきに付き合っただろぉ、だから今日は俺に付き合ってくれよぃ!!」
と、いうことでバスケ部に連れて行かれた。
バスケ部は人気があるようで、たくさん一年生が仮入部に参加していた。
その中でも、高身長(170㎝)の俺はめちゃくちゃ勧誘された。
いや、バスケットゴール破壊するので入っても迷惑かけるだけなんですよ。
なんなら、力むとドリブルするだけで、余裕で床がへこむ。ひどけりゃ穴ができる。
しかも、こんなかったいボール使っていたら人を殺しかねない。
ということで、笑って流した。
練習試合をすることになったけれど、俺は人を殺しそうで不安だったので、体調不良を装って見学した。
浜辺は心底残念がっていたけれど、試合が始まるとイキイキとしていた。
浜辺が楽しそうで、よかった。
☆
入部届提出日。職員室へ入部届を持ちながら浜辺と向かった。
『陸上競技部』と俺は書き込んだ。
浜辺はバスケットボール部に入部するそうだ。
「ああー、いぶきが入ってくれたら楽しかったのになぁ・・・」
「俺なら人を殺しかねない。」
「・・・。うん、一緒にならなくてよかったわ。」
「切り替えはえーよ。」
そんな雑談をしながら廊下を歩いていた。
入部届を出しても、本入部はゴールデンウィーク明けから。
そこから総体(総合体育大会)に向けて練習していくらしい。
THE中学校生活っていうかんじがしてきた。
だけど、忘れてはいけない。
俺に流れる竜人の血がバレないようにしないといけないことだ。
あんまり目立ちすぎるといけない。
改めて気を引き締めた。
前みたいな暴風を出してはいけない・・・・
「で、もうすぐ一年生のバス遠足だなー。」
「・・・・は?」
「はっ?って、いぶきぃ、一年同士の仲を深めるために遠足があるって先生が言ってたろ?」
「え、聞いてない。」
「・・・プリントに書いてあったぞ。」
プリントだと?・・・・書いてあったな。
すっかり忘れていた。
部活のほうに気を入れすぎていた・・・
「・・・いつだっけ?」
「えっと、来週だなぁ。忘れもんすんなよぉ、俺が言わなかったら、いぶき、遠足に行けなかったぞぉー。」
「感謝する。」
持ち物を確認しておかなければ・・・
それと、プリントも引っ張り出してこないと・・・・
と、考えているとあの陸上の川田先輩とすれ違った。
すれ違いたくなかった。
「あっ!!伊吹君じゃん~ きのう来てくれなかったか、ぼく、さみしかったんだよぉ~」
「・・・・すみません。」
うざい。
出会いたくなかった。まさか、職員室までの道で出会ってしまうとは。
よくよく考えると、俺が入部するとこの先輩と絡むことになるのか・・・
人を殺すかも知れない部活に入部するか、俺が我慢するか・・・
天秤にかける。
我慢するしかねぇな・・・・
と、思っているとうざ先輩が俺の入部届を覗いてくる。
「あっ!!入ってくれるんだぁ!! ぼく、うれしぃなぁ~」
「・・・ヨロシクオネガイシマス。」
にたぁーっと、あざとく笑ってくる川田先輩。
俺の全細胞がコイツと関わるな、と言っているのかと思うほど拒絶反応が大きい。
「いぶきぃ、行こうぜ。」
「あ、そうだな。じゃ、これで。」
「うん。ばいばーい!!」
大きく手を振ってくる川田先輩。
浜辺、ナイスアシスト!! と思いながらも、一切振り返ることなく職員室へと向かった。