0.
俺、山田伊吹は、竜人の母親と人間の父親から生まれた。
竜人とは、簡単に言うと魔法がつかえる、竜の血をひく人間の形をした生き物のこと。
実際、俺の知る中の竜人は全員耳が四角く、小さな角、小さな牙があるくらいで、他の特徴は特にない。
強いて言うならば、竜人の多くは人間から言う「美男美女」な顔つきをしている。(自慢じゃねーぞ)
そして、高い身体能力と回復能力をもっている。
しかし、竜人は何らかの理由で「人間」と偽って人間の世界で生きているらしい。
もちろん、竜人の特徴は「人化術」という、人間に化ける術で消しているらしい。
ここら辺の情報は母から聞いたこと。
俺の母は暗付見 木葉っていう名前で人間界で生きている竜人。
名前の通り、木々を司る術が使える竜人なんだそうだ。
母は、若草色をしたボブヘアーに深い緑色の丸い目をしていて、外見からまるで森のような包み込む優しさを感じる。
暗付見っていう中二じみた名字は、人間界に来たときに母さんの兄である闇伯父さんが考えたらしい。丁度、中二ぐらいの年齢の時にこっちにきたから、こんな名字になったらしい。
そして、父、山田太郎。ルビを振らなくても分かるくらい簡単な名前だ。
見た目も普通の黒髪に黒目。マンガで言う「モブキャラ」のような見た目。想像にお任せする。
父は母が竜人であることは知らないらしい。
俺はそんなモブ父に感謝している。暗付見なんて中二病全開の名字になることを逃れれたからだ。
これは、俺の人生における、最大の活躍だ。
2人とも警察官として働いていて、そこで出会い結婚に至ったらしい。
警察署内で恋愛できるんだなーと、思ったが、そこはあまり触れないでいる。
触れないでくれっていう雰囲気を二人から感じるからだ。
そして、結婚一年目で姉である樹里を産んだ。
樹里は竜人の血は薄いらしくて、竜術は使えないらしい。
だけど、母の子なだけあって、美女である(シスコンじゃねーぞ!!)
目は黄土色をしていて、髪色は優しいひまわりのような黄色。一見外国人のように見える。
父の血が濃いとは思えない。
その3年後、俺、伊吹が生誕した。
俺は竜人の血が濃いらしくて、竜術はある程度つかえるし、(今の所、風の竜人の力が出てるよ)身体能力も高い。自分で言うのも何だが、顔もいい。
見た目は母とも父とも似つかない。
くるっとしたくせ毛があちらこちらにある茶色の髪。その髪はまるで柴犬のよう、と姉さんに言われた。
うるせぇ。
そして、目は黒に近い赤色。
牙も角もなく、耳も人間に近い形をしている。竜人の血が濃いはずだが、体の特徴(目の色)以外には余り出なくてほっとした。
そんな俺たち兄弟は、ぜんぜん違う見た目だから、周りからは托卵だとか、外国人とヤッたんだとかで陰口たたかれたけど、それを母さんが知ってからピタリとその声がやんだ。
何をしたのかは教えてもらえない。
竜人の力を引いていることを気がついたのは俺が4才くらいのとき。
母さんと家で遊んでいるときにいきなり俺が風の術を発動して浮いたことによって判明した。
その時に母が竜人のこと、俺がその血を引いていること、そして、その力を見せてはいけないことを教えてくれた。
自分で竜人の力をコントロールするのは難しくて、見せてはいけないと言われても、無意識のうちに発動してしまうことは多々あった。
だけど、年齢を重ねる内にコントロールがうまくなっていき、今では普通の《人間》として生きていくことができるようになった。
そんな、普通の《人間》 として生きている、俺の中学校生活が今日から始まる。