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あっと言う間の桃太郎

作者: 花丸鉛筆

 桃太郎、サル、キジ、イヌの一行は、鬼ヶ島にいるという凶悪な鬼たちを倒すべく、旅をしています。今は舟を漕いで鬼ヶ島に向かっている最中です。


「もーもたろさん、もーもたろさん、おこしーにつけたー、きびだんごー」

「ひとつー、わたしにくださーいなー」


 舟を漕ぐ桃太郎が歌うと、キジも歌います。


「もうすぐ鬼ヶ島なんて早いなあ!」


 イヌは尻尾を振りながら楽しそうです。


「そうでもねえよ」


 サルは横になりながら袋に入っているキビ団子を頬張っています。


 舟の上では特別なことは何もなく、遠かった島影が少しずつ大きくなっていきました。

 浜辺に辿り着くと、鬼たちが大勢待ち構えていました。正面から堂々とやってきたのですから、こうなるのは至極当然です。


「やってきました鬼ヶ島!今回実況を務めさせていただきますのは、わたくしキジ!解説はサルさんです!」

「どうも」


 突然、キジとサルが実況と解説を始めたので、イヌはびっくりしました。


「そんなことをしてないで戦おうよ!」

「その必要はないですよ。だって、もう片付いているじゃないですか」


 キジがそう言う頃には、周りを囲んでいた鬼は全員倒れていました。桃太郎が一人で片付けてしまったのです。


「えぇっ!?」

「その間抜けな反応は見飽きたぜ」


 サルは呆れた様子です。

 桃太郎は一人で先に行ってしまったらしく、姿が見当たりません。


「さっ、先へ進みましょう!」


 急ぐキジを先頭に三匹は進んでいきました。


「イヌさんは一週間前に鬼の金棒で殴られて以来、記憶が一日しか保てなくなっているんですよ」

「そうなの!?」

「その反応も見飽きたぜ」


 三匹が何度目かのやりとりをしていると、ボスらしき鬼を桃太郎が仕留めたところに居合わせました。


「決まったー!必殺一文字斬り!」

「終わったな」


 キジとサルは慣れた様子で眺めています。

 一方で、イヌは何あれという表情で見つめるしかありません。


「もう何回も言っているが、桃太郎さんは鬼を超えちまったんだよ。おれたちにできるのは桃太郎さんが成すことを実況しながら見届けることだけさ」

「実況いるの!?」

「まあ、実況する間もないんですけどね」

「そういう問題なの?」


 桃太郎は刀を露払いして鞘に納めると、三匹の方へ振り返りました。それはとても自然な所作で、先程まで鬼と戦っていたとは思えないぐらいです。


「さあ、帰ろう。実家に帰って鬼に勝ったことを報告したら、おれより強いやつを探しに行くよ!」


 桃太郎は言うが早いか、もうズンズン歩き出しています。


「はーい!」


 キジとサルは同時に返事をしながら付いていきます。


「鬼退治終わり!?ええっ、えーっ!?」


 記憶喪失状態のイヌだけは状況についていけないようです。

掌編その2です。

この桃太郎はこれから何になるんでしょうね。


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