第4話「衝突」
レースも折り返し。
54号車 アンドリュー 6位
20号車 松下 8位
2台共順調に周回を重ねていた。
『1台挟んで前にアンドリューがいる。注意してくれ。あいつは何をするかわからない。』
「大丈夫。抜けばいいだけの話だよ」
アンドリューはルーキーが何故か嫌いらしい。
そのため、ルーキーを落とすためにどんな手段もとってくるらしい。
7位のマシンのイン側に飛び込み、一気に順位を上げる。
アンドリューが目の前になる。
『一応こっちからもアンドリューにはお前が後ろにいることを伝えている。でも、本当に気をつけてくれ。』
「大丈夫、大丈夫、抜けばいいだけの話だよ。」
徐々にアンドリューとの車間距離が狭くなる。
「ここだ…!」
マシンをイン側に動かしたときだった。
「…!?」
アンドリューがあろうことか、幅寄せしてきたのだ。
これにより、自分はコースオフする。
「何やってんの!危ないよ!アンドリュー!」
『あ〜。ついに起きちゃったかぁ…マシンの方は大丈夫か?』
「壊れた箇所はないと思う、変な挙動はない。」
『もうこの順位を守る方向で行こう。今の順位は12位。』
「…了解。」
ポイント圏内を走行していたのにも関わらず、アンドリューのあの謎の幅寄せで一気に3つ順位を失った。
「本当にアンドリュー、ルーキー嫌いなんだな…」
彼の後ろ姿を見ながら思う。
そこから、順位も上げられず、12位、ノーポイントでフィニッシュとなった。
『お疲れ様。ポジション12、ポジション12。パルクフェルメ(車両保管場所)で会おう。』
「ほんとに、アンドリューの幅寄せなかったらポイント取れたよなぁ…」
『…そのことについては私からアンドリューには言っておく。彼にもレースがあるってな。』
「お願いします。」
パルクフェルメでマシンを降りる。
「おつかれ〜。いきなりポイント圏内も走ってすごかったじゃん。」
「あ、駿、お疲れさま。ほんとにあの幅寄せなければ1ポイントは取れたよ…」
「あ〜、チームメイトだっけ?」
「そう、アンドリュー。」
「噂だと相当新人嫌いらしいけど本当?」
「本当だよ。顔合わせの時もずっとスマホいじってて話聞いてなかったみたいだし。」
「ま、気分変えてこ。ヒロくん、俺が奢るから。」
「まじ!?」大輝の目が輝く。
「そういうところ、面白いな。」
2人は少々の晩酌の後、オーストラリアを発った。
次の舞台は2人の母国、日本は鈴鹿サーキット。
2人にとって多くの思い出があるサーキット。
ここでも2人は結果を残すことを決めていた。