第1話「顔合わせ」
イギリス郊外、Storm F1teamのファクトリー。
今、ここでは、今年から参戦を開始する新人と、F1でチャンピオンタイトルを獲得したベテランが顔合わせを行っていた。
「松下大輝です!お願いします!」
「私はこのチームの代表兼監督のストーム・ウィリアムズだ、今年からよろしく頼むぞ。」
その隣で黙り込んだままスマホをいじる人がいた。
「ほら、マックス、新人に挨拶しなさい。」
「あ?いいだろ別に。どうせ今年でチーム移籍するんだろうし。」
「そんなことはいいから。ほら。」
「…代表がうるせぇからな。俺はアンドリュー・マックス。くれぐれも俺の邪魔はするなよ。」
「よ、よろしくお願いします…」
なんか、関わりにくいな…この人。
「なぁ、代表、挨拶したから近くのカフェ行ってきていいか?」
「…いいよ。行ってらっしゃい。」
アンドリューは部屋を出ていった。
「なんか、少し関わりにくそうな気がします。」
「あいつは新人が嫌いだからな。」
「何かあったんですか、彼に。」
「まぁ、話すと長くなるよ。」
「さて、じゃあ、君のマシンと対面しようか。」
「待ってました!ずっと楽しみにしていたんです!」
「そう言ってくれるとこっちも嬉しいよ。じゃあ、ファクトリーの方に行こうか。」
そうして、真っ白な長い廊下を歩く。
途中、窓があり、中を見ると、何か設計を進めている部屋、メカニックたちがピットワークの練習をしている部屋など色々な部屋が見えた。
そうしていると、廊下の一番端の部屋に着く。
「さぁ、この先にマシンがいるよ。」
ストームがカードをかざすと、ピピッという音ともにガチャと何かが開く音がした。
ドアを開けると広い空間が広がっていた。
「うわぁ…」
そこにはBAY1からBAY5まで区画分けされたスペースがあった。
そのうちBAY1にはアンドリューが乗る54号車が整備を受けていた。
「F1マシンって、こんなにバラバラになるんだ。」
「あぁ、ギアボックス、パワーユニットは毎戦戦った後、チェックするからね。」
そう言って進むと、BAY4の前で歩みを止める。
「さぁ、これが君が今年から乗る20号車、もといST-02だ!」
「おぉ!かっけぇ!」
松下は子どものように飛び跳ねる。
「さぁ、乗ってみな。」
早速マシンに乗り込んでみる。
「おぉ…これが憧れてきたF1マシン…ついに俺もこの舞台まで来れたんだな…」
「フフッ。気に入ったかい?」
「もちろん!もう、このクルマで走れる日が待ち切れないよ!」
この時、松下はまだ知らなかった。
これから始まる試練を。